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「人を包み込むこの世界の美しさを愛したい」そんな風に想っているあなたへ。

拝啓 親愛なる写真家さんへ

写真家さん。あなたはいつも格好良くてスマートで前向きで。
悩んでいる姿や弱みををあまり人には見せないあなたの葛藤をそっと教えてくれてありがとう。
今でこそ有名になってきているあなただけど、ここまでくる道のりはワクワクやドキドキがたくさん詰まったまるでびっくり箱みたいな毎日だったね。もちろん楽しいものではあったけど、その箱の中には悩んで、藻掻いて、それでも逃げずに自分と向き合って前に進んできたあなたの日々もいっぱい詰まってる。

今日はそんなあなたにお手紙を書こうと思います。

「人を包み込むこの世界の美しさを愛したい」そんな風に想っているあなたの目にはこの世界は一体どんな風に映っているのかな?

なんだかこの手紙はあなた以外の人の物語にもきっと大切なものを思い出すきっかけになる気がするから。


数年前の写真家として独立したてのあなたはとにかく新しい仕事が決まる度にワクワクして楽しんでいたことを覚えていますか?
その時はまだ見たことのない世界に足を踏み入れた自分に期待をして「よし!やってやるぞ!」ってドキドキやワクワクした気持ちでいっぱいだった。
でも名前が知られ始め次第に有名になってくると周囲から求められてくる「自分らしさ。」
周りが期待している自分らしさって何なのか。
自分には何が撮れるのか、自分らしい写真って何か。
自分でも分からない周りから求められる「自分らしい写真」があなたを苦しめた。

「自分の中に何もないんじゃないかって不安だった。作品に力がある人は自分の伝えたいものがはっきりしていたり自分の見せたいものがはっきりしている。だから俺の好きな写真家の人が自分の写真を見てもつまらない写真って感じるんじゃないかって怖かった。でも自分はいわば「普通」に学生時代を過ごしてきて特に反抗期もなく友達もいて複雑な家庭環境でもない。でも何気ない日常って素晴らしい!って思う程、毎日を丁寧に生きているわけでもない。本当にこんな普通の自分にはエッジの効いてる写真とかセンスのある写真とか撮れないんじゃないかって、自分の撮りたいものがなんなのか分からない薄っぺらい写真なんじゃないかって不安だった。」
とあなたは言ってたけど、でもあなたはこんなことも話していたよ。
「俺は誰でもどんな人でもふと空を見上げた時にきれいだな、美しいなって思う気持ちを持っていると思ってる。だからその瞬間を撮りたい。この人の中にあるこの輝きを捉えたい。その人の美しさを引き出して、人ってこんなに綺麗なんだって、この世界はこんなに美しいんだって、日常で見逃された美しさを捉えたい」って。
きっとこの想いは、素直に生きてきたあなただからこそ見える世界の姿で、この世界はありのままで美しいものなのだと感じているのだと思う。
そんなあなたの撮る写真は、触れたくても触れられない、出会ったことあるようで出会ったことない、そばにありそうで、だけどない世界。なんの混じりけもない純粋な数学のような規則正しくこの世界のあるべきものが一番美しい形できちんとそこに収まっているようなそんな世界だった。

そんな写真を撮り続けていたあなたが少し変わるきっかけになったのは友人と出かけた先の露天風呂。
心地よい風が体を通り抜け、風の音が体の中に入ってくる。
木々が揺らめき、木漏れ日が差す。

色んな鎧を着ている自分から解放されて、何も考えていない時間。
そして言葉が消えた瞬間、「今を生きてる」って感じた。
ゆっくりと目を閉じる。生きてると感じると同時に自分も自然の一部だと感じた。
木々も自分も「今」を生きてる。

自然とひとつになれたような気がしたその瞬間がとにかく心地よかった。
それと同時にいつも自分は過去や未来を考えていて「今」を考えられていなかったことに気が付く。「今」を感じることが一番大切で、写真は「今」を切り取るものなんだ。「今」と共にある命の輝きを捉えるものなんだ。

今を感じながら撮る。変わりゆくものの一瞬の「今」に命を感じる。

そのことに気が付いたあなたの写真は驚くほど変わった。
純粋な混じりけのない数学のような美しい世界から、一気に熱や音や息吹を感じる世界に。
人の感情、体温、その一瞬の中にある輝きや揺らめき。
二度と同じ瞬間はない。
「いつかは終わりがくる」そう思った瞬間、何よりも「今を生きていること」を強く感じる。
「終わりを感じながら今を生きる」

みんな「今」を生きてる。「今」を共に生きている。


数年前、まだ写真家としてフリーになったばかりのあなたがどんどん増えていく仕事にまだ戸惑っていた時の言葉。
「切符がないのに特急列車に乗ってしまった感じだった。自分は何も持っていないのに周りの景色だけがすごい速さでどんどん進んでしまっていて焦っているし怖さも感じている。
…でもちゃんと探したら、俺、切符ちゃんと持っていたんだね。
だから今はその自分の中に見つけた切符を大事に持って、落ち着いて目の前のことを一つずつ積み上げていけばいい。
どんなに周りの景色が変わっても、きっと答えは自分の中にあるから。
そしたらきっと列車が目的地まで運んでくれるから」


ねぇ、写真家さん。
今、あなたは何色の切符を持っていますか?
その切符で連れて行ってくれる世界はどんな景色が見えるんだろう。
あなたの列車の行きつく先は、あなたの夢の目的地には一体何が待っているのかな?

またこっそり教えてね。

たくさんの「愛」と踏み出す「勇気」を持った写真家さんへ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでも前向きで幸せな気持ちになれるお手伝いができたら嬉しいです。いただいたサポートは「夢の叶えあいっこ」の運営に使わせていただきます(*^_^*)