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「女性画家たちの大阪」@大阪中之島美術館

去年、大阪中之島美術館で開催された「大阪の日本画」展がとてもよかったので(詳細はこちら)、楽しみにしていた「女性画家たちの大阪」。

先日、後期に行ってきたのですが、前期も行きたかったーーーと思うくらい堪能しました。
出展数ももりだくさんで、見終わった後にはぐったり。
友人と帰りにケーキを食べたのは必須でした。ケーキまでが展覧会鑑賞です!

ということで感想です。


全体的な感想

まずは「女性」と絞り込んでいるだけでこんなに作品があるんだーという単純なびっくりです。女性どころか「大阪ゆかり」で絞っているのにこの作品数。
正直なところ、後半は「女性」というくくりがなければ出てこなかっただろうな…という作品があると言えばあったのですが、それでも大半は見ごたえたっぷりの作品ばかりでした。

そして今回の展覧会で誰よりも惹かれたのは島成園でした。
はるか昔、《爪弾》という作品を見て一目ぼれしたものの、他の作品を見る機会がなくそこまで注目をしていませんでした。
それが「大阪の日本画」展で、あざのある自画像を見て「なにこの人…」とぞくぞくし、本展覧会で多数の作品を見て一気に陥落。

私にとっての永遠のアイドルは上村松園なのですが、池田蕉園含めて三園と並び称されていても、松園と成園は180度違いました。
松園は崇高なる美を追求していたのに対し、成園は怨念と表裏一体の美を追求していたような気がします。もしかしたら美を追求していたというよりも、情念といった内面的なものを表現するのに重きを置いていたようにも思いました。

そしてもがき苦しむ自分を隠すことなく、自画像という日本画には珍しい画題で表現したのも魅了されたところの一つでした。
自分を使ってまで表現し続けるというのが、なんとなく大阪の人っぽい気もしました。京都の人である松園は思いもつかないことだったんじゃないかと。もちろんどちらがいいという話ではなくて、非常に興味深く感じました。

島成園にすっかりはまったため、もちろんのごとく図録を購入。
家で眺めながら前期も行けばよかったと後悔しております…

今回のBEST

島成園《西鶴のおまん》大正5年

(本展覧会は写真撮影が一部のみOKで、こちらは撮影不可だったので画像がないのですが…大阪中之島美術館のXで画像があったので、こちらから見れます)

女四人の会という、当時ではとても珍しい女性画家のみのグループ展にて出展されたもの。
すさまじいほどの色気で目が離せなく、忘れられなくなった作品でした。

井原西鶴の『好色五人女』からの一場面で、出家した同性愛者と結ばれんと、豪商の娘おまんが侍姿で誘惑しようと待っているというシーンらしい。
一気に『好色五人女』に興味がわいたのですが、この作品のせいで期待値が上がり過ぎている気がしています。

流し目、額に少しかかっている髪、わずかに歯が見える口が色気を全力で表現していて、更に一房の髪が情念を滴り落としているようにも見えます。
少し前傾姿勢なのが慎ましやかそうでいて、虎視眈々と狙っているようにも。
「怖い色気」という言葉がぴったりそうなこの作品に圧倒されたので、今回のBESTとなりました。

その他印象的だった作品

島成園《燈籠流し》大正5年
ゆったりとひたひたとした雰囲気が感じるような作品。
今回のBESTに挙げたのもそうだけれど、髪の房が特徴的で、しかも左右対称に房があるのではなく片方だけというのがクリティカルヒットしてしまい、髪の房を見る度になんだかときめきました。

この作品は髪の房だけではなく、各人の顔の表情も想いをはせるような静かな表情をしているのも素敵。
情念あふれる島成園の作品も好きだけれども、この少し憂いを含んだ優しい作品も好きでした。

村岡小丘《人形ごっこ》昭和4年
朝顔などの鉢に囲まれる形で、ござの上に置かれた人形たち。
”人形ごっこ”をしている子ども達の姿は見えないけれども、遊んでいる時におやつに誘われて、そのまま行っちゃったのかな?などと想像がかきたてられます。
明るい色調で楽しい雰囲気がただよう作品で、どこか懐かしさも感じました。

これが実験的作品で、結局は帝展には落選してしまう作品らしいけれども、明るくて可愛らしいのが実験的ということなのでしょうか…
花などの描きこみがすごいので、安直な可愛さでは終わっていない気はしましたが。”可愛い”を作品として昇華させるのは難しいことなのかとちょっと考えてしまいました。

山内直枝《百鬼夜行絵巻》大正14年
ここから写真撮影OKだったので写真と共に

実際はもっと長いのですが一部を抜粋。
シンプルに眺めているのが楽しい作品。
勢いのある筆致で、まあ楽しそうに妖怪が浮かれている。
絵巻を進めていくと最後は妖怪たちが逃げていて、何かと思ったら太陽が昇っているのでした。
これは絵巻ならではの表現だよな~と実際に手で広げながら見たらもっと楽しそうだなと想像させられました。

西口喜代子《淀殿》大正後期-昭和前期

大阪縁の展覧会となると必ずといっていいほど出てくる淀殿。
正直、髪型や眉毛のせいか、きれいだと思ったことがなく。
今回の作品は初めてと言っていいくらい、きれいな人だったなという感想を抱きました。といっても淀殿という確証はないみたいですが。

でも灰色っぽい薄い瞳、しもぶくれでもないすっきりとした頭や顔の形、しゃんと背筋を伸ばしつつも少しひねった体はしなやかではないけれども、それが逆に格式ある雰囲気を出していて、初美人淀殿(仮)となりました。

【おまけ】特別出品:桔梗撫子文単衣

大阪の粋を感じられる着物。
かっこいーーーーーー
この大胆な模様!!!
これがなんと普段着だったとのこと。
どんな帯と合わせて、普段着として着ていたのかが非常に気になる…
今ではなかなか見られない大胆柄。着こなしてさっそうと歩く姿はさぞかしかっこよかっただろうなと思わされる着物でした。

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