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三月花形歌舞伎@南座

先週の日曜日(3/17)、岐阜旅行の帰り道に京都で途中下車して三月花形歌舞伎を観てきたのでその記録です。
旅行帰りに歌舞伎なんて、遊びすぎじゃない!?と自分でも思わないことはないのですが、これにはちゃんと理由がありまして(ほぼ言い訳)。
今回の演目「忍夜恋曲者」を、今度日本舞踊でお稽古することになったのでその勉強でした(という名目)。


乍憚手引き口上

この日は壱太郎さんによる口上でした。
口上といえ、とてもくだけたもので、客席の通路から現れたの壱太郎さんは南座の紙袋を持って、さまざまなグッズの紹介。笑いを取っていました。
写真撮影タイムなどを設けてくれたものの、全然うまく撮れなかったので、あまりに申し訳なく、ここには上げないでおいておきます…
この写真撮影タイムで携帯を出させて、そのまま「電源オフでお願いいたします」という流れ。

こんなよく考えられた流れだったのに、途中で携帯の音鳴らしている人がいました…しかも結構長い。

それはさておき、そんな和やかな雰囲気で終わってからの河庄となりました。

心中天網島 河庄

妻子どもがいながらも、遊女小春と恋仲になり、でも小春は違う人に身請けされることになり心中するしかないと思っている、どうしようもない男、紙屋治兵衛を尾上右近さん、
その恋人である小春を壱太郎さん、
治兵衛の兄、孫右衛門を隼人さんが演じられるという配役。

壱太郎さんが先ほどとまるっきり違っており、なんなら顔の形まで変わってない!?ってくらい違っていて、一緒に観ていた母は壱太郎さんと気付かなかったくらい。

小春のもとに紙屋の奥さん、つまり治兵衛の妻おさんから手紙を受け取るところから話が始まります。
その手紙には治兵衛が心中しようとしている、死なせないで欲しいといったことが書かれていたのです。

そこへやってくるのが見知らぬ侍。
小春は、治兵衛に心中をせまられているが本当は死にたくないと侍に言います。
それを盗み聞いていた治兵衛は激怒。

実はその侍は治兵衛の兄、孫右衛門で、治兵衛の廓狂いを止めようとしてきていたのでした。
治兵衛は小春の心変わりを知りきっぱりと縁を切ると宣言。
兄を介して小春と交わしていた起請文を戻し、小春にも返してもらおうとするくらいの諦めっぷり。
孫右衛門はその過程で、小春が実はおさんから手紙をもらっており、それで愛想尽かしをしていたことに気づくのでした…

という、観ている人からすると終始「治兵衛、ええかげんにせい!」と思うしかない話。
今回は花形歌舞伎ということで、皆さんが同年代で固められ、そのためか何の違和感もなくすんなり楽しめた気がします。
特に隼人さんと右近さんの兄妹っぷりが妙にしっくりしていました。

ストーリーを聞くと暗い話っぽいけれども、その実、笑いが結構入ります。
孫右衛門が実際は商人なのに侍のフリをしているため、その慣れない感じが滑稽だし、未練たらたらの治兵衛をいさめる孫右衛門の掛け合いも兄弟げんかを見ているみたいで笑いを誘います。

こうしたコミカルな側で、ずっとうつむく小春。
散々なじられて思わず治兵衛に取りすがろうとした小春に、孫右衛門がおさんからの手紙を見せて「この手紙の主のぎりが立たぬであろう」みたいなことを言うのがものすごく切ない。
笑いが入るからこそ、瞬間瞬間の切なさにぐっときました。


壱太郎さん、やはりすごくお上手だなと思いました。
台詞回しが藤十郎さんによく似てたのも印象的で、いじらしさ全開でした。

右近さんはなんとなく江戸っ子風味が抜けていない気がしましたが、どうしようもないけれども憎めない治兵衛がよく出ていました。
完全、末っ子気質だよなーというのがにじみ出ていた気がします。

いい意味で一番期待が外れたのが隼人さんでした。
隼人さんファンが多そうなのでぶん殴られそうなんですが、正直、今までそんなに隼人さん、いい!とならなかったんです。かっこいいけどね。
でも今回は、ふがいない弟思う気持ち、小春の意図を知って小春を慮る気持ちがすごくよく出ていて、人情味あふれる孫右衛門だったなと思いました。
なんとなく大好きな仁左衛門さんの姿を彷彿させられもしました。
もう1組の「女殺油地獄」で仁左衛門さんに稽古つけてもらったとのことだったので、もしかしてこっちも…と思うくらい、細やかな人を想う気持ちが出ていた気がします。

どうでもいい話ですが、隼人さんも右近さんも帯の位置が高くて、やはりこの世代になると足が長くなってくるのかな…と思ってしまいました。。。
洋服だといいだろうけれど、着物だと帯はもう少し下にあってほしいと思ってしまいましたが、いつかは慣れていくのでしょうか。

忍夜恋曲者 将門

ある意味本命の演目!
舞踊劇と言ってもいいくらい、踊りだけれどもセリフもたっぷり、物語性もたっぷりです。

将門は反乱をおこして討たれた平将門のこと。
その娘、滝夜叉姫が傾城のフリをして光圀の前に現れるのですが、光圀に正体がばれて最後は戦う、というお話。
滝夜叉姫は妖術使いということで、妖術を使った戦いとなります。
最後は蝦蟇が出てくるのですが、これがめちゃくちゃ可愛い。なんだか妙に和む姿をしています。

それはさておき、滝夜叉姫の登場シーンからかっこいい。
すっぽんから現れるのですが、蝋燭の火に照らされながら登場。
真っ暗な中、妖しい雰囲気たっぷりの傾城。しかも普通の傾城と違って髪をきれいにまとめあげていないのが、妖艶な感じを後押しします。
蝋燭の火で、着物に縫われた金糸がちらちらするのも雰囲気ある…

ということでそんな印象をスケッチのように描いてみたのがこちら↓
あえて壱太郎さんに似せようとしていないので悪しからず…

光圀に会ってからは妖しさを少しひっこめて傾城になり切り、正体を見破られたらまた妖術使いへ、というその切り替えもかっこよかったです。

自分ができるかどうかはさておき(と言うと先生に、「できるか」じゃなくて「やる」のよ!と言われそうですが)、お稽古に入る前にしっかりとイメージをつけさせてもらった気がしました。

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