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二月大歌舞伎@歌舞伎座

東京に行く予定があったので、ここぞとばかりに昨日、歌舞伎座の「二月大歌舞伎」を観てきました。
久しぶりの歌舞伎!
歌舞伎座指定の人のみと限定的ではありましたが、大向こうもあって、元の歌舞伎に戻りつつある気がして嬉しかったです。

今回は、奮発して第二部と第三部を観てきたので、その感想です。
好みに偏った感想になってるかもなので、もし気分を害されたらごめんなさい。ディスるつもりは毛頭ないということは最初に言っておきます…

第二部

女車引

『菅原伝授手習鑑』の中の『車引』は、平たく言うと三つ子の松王丸、梅王丸、桜丸が出会って喧嘩するという話ですが、『女車引』はその三つ子の妻が集う舞踊でした。
松王丸VS梅王丸・桜丸という元の構図を取って、2対1の雰囲気を出しつつも、そんな剣呑でもなく、一緒に料理したりと和やかではありました。

三つ子と言いつつ、歳が本当に一緒か!?という描写なのですが、それは妻も一緒で、松王丸の妻・千代は貫禄のある妻で、それを魁春さんが、非常に若々しい桜丸の妻・八重を七之助さんが、二人の中間にあたる梅王丸の妻・春を雀右衛門さんが演じていらっしゃいました。

魁春さんは、めっちゃ細くてすっとされてるんですが、出てきた途端、大物感というか、なんなら怖い姑感あって貫禄がありました。

雀右衛門さんは、若い八重さんをサポートしたり、ラスボス(千代)に立ち向かったりと、”真ん中”具合がよく出てました。最近、雀右衛門さんの姫やら芸者やらばかり見ているのですが、正直、春みたいな女房役が合いそうで、今度はそういった役で見てみたいなぁと。

七之助さんは、まぁきれいで可愛い!鏑木清方に出てくる美人って感じで、甘々な可愛さというより、すっきりした可愛さという感じ。表情豊かで、踊りなのに何をやっているのか分かる演技力。さすがだなー!

船弁慶

第二部のメインはどちらかというと、こちらの『船弁慶』。
ふぉーーー!!!かっこよかったーーー!!終わった後の興奮がやばかった!!!

…ちょっと冷静になりまして…
五世中村富十郎十三回忌追善ということで、そのご子息の鷹之資さんが静御前&知盛の霊となっていました。
『船弁慶』は富十郎さんの当たり役の一つ、私もはるか昔に見たことがあります。が…何分その時はとっても若く、あまり良さが分からずに、なんなら静御前の時はほぼ寝て、知盛の霊は「ぐるぐる回っててすごい」というしょぼい感想しか覚えてない…くっ…惜しまれる…

とはいえ、『船弁慶』の舞踊自体は好きなので、とても楽しみにしてました。
『船弁慶』は、義経が頼朝から逃げる際に静御前と別れて船に乗り込むと、源平の合戦で討った知盛の霊が舟を襲い掛かるものの、弁慶の懸命な祈りで立ち去る、という能を題材にした舞踊です。
静御前と知盛の霊は同じ人が演じ、前半の”静”、後半の”動”を踊り分けるのが見どころの1つと言えます。

義経は扇雀さんが演じられ、出てきた途端に公達感というか、ノーブル感があって素敵でした。

弁慶は又五郎さん。個人的に又五郎さんの踊り、めちゃくちゃ好きで、なんなら又五郎さんの『船弁慶』に感銘受けたので、弁慶ではちょっとしか踊らないとなっても、「ふぉ~~~」となりました。

肝心の鷹之資さんはと言うと、若さみなぎる!軸がまったくぶれずに、動きもしっかりしてる!
静御前にもうちょっと情感あったらいいなとか、知盛の霊ももっと迫力あったらいいなとかありましたが、将来がすごい楽しみ!(上からですみません)

と言いつつ、やっぱこの演目、本当好きだ!!!と思わせるところで十分でしょう。

個人的に、松羽目物×人外ってもう最高!と思っていて、『船弁慶』もがっつりその中に入っており。
前半の静御前の舞部分は、正直、割と退屈。寝てしまう人続出なのもしょうがないレベル。
でも!それがあるから後半の激しさが引き立つのであって、前半あってこその後半と言えるでしょう。
因みに今回は、前半も寝ないで済みました。鷹之資さんの軸のぶれなさ具合に感動して目が離せませんでした(なぜなら私がブレブレだから…)

そして義経たちが船に乗り込んで出発すると、怪しい雲が近づいてきて…というところ、太鼓や皷、笛などでめちゃくちゃテンションが上がる!
映画で恐ろしいものが来る時に効果音が大きくなるのと同じことをしているんだと思いますが、歌舞伎は出てくることを期待してるせいか、なんとなく霊を呼び出しているみたいで、「来い来い来い!(シャッという花道の幕が開く音)来たーーーー!!!」と興奮が高まるわけです。

襲い掛かる知盛の霊、対峙する義経。
薙刀振りかざす知盛の霊に、数珠と念仏で応戦する弁慶。
弁慶に気圧されても、何度も襲い掛かる知盛の霊。
と攻防が続いて、知盛の霊が力を失い去って行き、花道のすっぽんでしょぼんとしたところで、舞台の幕が引かれます。

すると太鼓と笛だけ出てきて、花道の付際に座すると、おもむろに知盛の霊がその二人に襲い掛かり、それに応戦するように太鼓と笛が激しくかき鳴らされる。
その激しさたるや!
何度も襲い掛かる知盛の霊も激しい音に負け、波の渦の中へ引き込まれるようにぐるぐると去って行きます。まるで幕の内へと押し込むかのように、それを追いかける太鼓と笛の音。
あーーーー!かっこいいーーーー!!!!うぉーーーーー!!!!!

と興奮してる内にすっと終わる歌舞伎。
はーーー!!!かっこいい!!!
余韻を引きずりながら歌舞伎座を後にするのでした。

第三部

霊験亀山鉾

第二部と第三部の間が1時間あり、結構長いなと思いつつ、歌舞伎座下のTully'sに入って興奮を鎮めていると、あっという間に1時間が経ってしまいました。

さ~て、お次は大好きな仁左衛門さんだよ~~~と、気持ちをリセットできたところで歌舞伎座に入ります。

この演目、観たことあったものの、”片岡仁左衛門 一世一代にて相勤め申し候”と言われると観ないとな、となりまして、チケットをポチリしてしまいました。
どの席を取るのかは、いかなる時も悩みどころですが、今回は一度観たし、できるだけ近くで感じたい(と言うと変態くさい)ということで、ちょっと遠くになるけれども花道横にしました。

この『霊験亀山鉾』は、めちゃくちゃ胸糞悪い演目で(なのであらすじは割愛)、最大の見せ所は仁左衛門さんの”悪の華”。
一人二役で、一人は極悪非道の藤田水右衛門、水右衛門に瓜二つの小悪党の八郎兵衛を演じられていました。
この二種類の”悪”を魅力的に演じるのがミソなんでしょう。

正直申しますと…あー…前回見た時からかなり経ってるのはしょうがないけれども、お歳を召されたな…
当たり前のことなんですけどね。
敵対する役を演じられている芝翫さんが割とがっちりされているので、その対比にもなってしまったのがいけないのか、もうこれはしょうがないと思うしかないのか…

あとこれは完全に個人の話ですが、自分が歳を経て好みがかわったのかな…と思ったり。
極悪非道の”悪の華”よりも、正統な二枚目見たいなと思っちゃいました。
悪でも『女殺油地獄』までかな~なんて(もうこのお役はやられないはずなんですが…)
なんて思っていたら、四月は”切られ与三”をされるのを知り、見たい!となりました。チケットが高いし、相手が玉三郎さんなんで、チケット入手のハードルが高いですが…

その他の感想としては。
仁左衛門さんのご子息、孝太郎さん、やっぱ好きだなー
帰って来ないと思った想い人が来た!と喜ぶところとか、純粋さが出て可愛い。孝太郎さんの仕草、ちょこちょこ動き回る様、めちゃくちゃ可愛くて好きです。

あと、歌昇さんを久しぶりに見たのですが、めちゃくちゃ上手くなっててびっくりしました。
前は”若いし、かっこいいな”という印象しかなかったのですが、存在感が出てすごい良かったです。
と上からな発言ですが、歌舞伎って子供の頃から知っている役者さんが、若者になって、うまくなって成長していく様が見れるのが醍醐味の1つだなと思います。

ということで、チケット代高いものの、歌舞伎、やっぱ好きだなーと思った1日でした。

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