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#16 感覚のコップは伸び縮みする

運動会シーズンがひと段落しようとしていますね。
普段見れない姿は大人としては嬉しいことですが、「いつもと違う」を苦手にする自閉症の子は結構多くて。
やっと年度がわりに適応してきた頃に始まる「運動会の練習」というイレギュラーな予定&集団行動連発の状況に調子を崩してしまう子もちらほら。。

今回はそんな「その日の調子」に関する話です。



感じ方の違い / 感覚特性とは

障がいのある子たちが見せる特性を説明する言葉の1つに「感覚過敏 / 鈍麻」があります。

柔軟剤の匂いやテレビの音量など、ある程度の「感じ方の違い」は誰しもあるものですが、多数派の社会で「これくらいは許容範囲」とされているレベルでも苦痛に感じてしまう場合、生きづらさにつながるため「障がい」と診断される要件の1つになることがあります。

例えば、こんな行動が見られたら、背後には「感じ方の違い」があるかもしれません。

人が多い空間で耳をふさぐ、突然走り出す、泣いている人がいると叩こうとする(→聴覚過敏)
手作りのご飯は口にせず、レトルト食品やカップラーメンなど決まったものしか食べない(→味覚、嗅覚の過敏)
家以外のトイレに入れない (→嗅覚の過敏)

決まった服しか着ようとせず、夏でも裏起毛スエットを着たがる (→触覚過敏 / 温度感覚の鈍さ)
指が腫れあがっているのに泣きもせずけろっとしている (→痛覚の鈍さ)


「感覚のコップ」という例え

「感じ方の違い」を理解するためによく使われる例えが「感覚のコップ」です。


水を刺激、コップを子ども(の、感覚受容力)に見立てます。

コップが小さすぎると、少しの感覚刺激でも上手く処理しきれず、溢れ出してしまう。→パニックや不安定さにつながる。

コップが大きすぎると、世の中的には「適正」とされている量の刺激では満足できず、もっと強い刺激を求めてしまう。→自傷行動や「じっとしていられない、高い所にすぐ登る」といった行動につながる。

その子の「感覚のコップ」を理解し、刺激の量をコントロールしてあげることで、気になる行動が減ったり無くなったりする場面がよくあります。


コップ自体が伸び縮みする、という視点の重要性

「コップのサイズ=感覚処理のキャパ」は人それぞれ、という視点を身につけることができたらもう一歩進んで、同じ子どもでも、コップのサイズは常に伸び縮みしている、という理解が重要です。

  • 年度がわり、運動会シーズン、夏休み明け、卒業直前

  • 花粉症シーズン、睡眠習慣の乱れ、空腹、気圧

体調要因やスケジュール要因など様々な影響を受けながら生活する中で、常に「感覚のコップ」は伸び縮みしています。

学校や家庭も含めた生活全体をイメージしながら「今日の調子」に合わせた対応をすることが大切。

例えば放課後デイの活動設定なら、
運動会シーズンなど学校生活で負荷がかかりがちな時期→リラックスできる活動、
年度後半の安定してくる時期→ルール性の高い小集団活動や少しチャレンジングな活動
といった形で調整を行なってあげると、その子の力をより引き出すことができます。

また、理由のわからないパニックへの対応は職員を緊張状態におきますし、「今日調子悪いかもな」という推測の有無で初期対応の適切さが変わってきます。
最初の挨拶でその子をよく見て「今日の調子=感覚コップの大きさ」を見極めることが支援者に習慣づけできていると、自傷行動やパニックといった「爆発」の予防・対応においても非常に有効です。


以上、「感覚のコップ」という見立て方を持った上で、その日の調子を見極めることが大切、という話でした。

ではでは。

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