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〈ラグジュアリー! 香港〉在宅映画祭 vol.11 桃李争春

桃李争春 It’s Always Spring
1962年/キャセイ/カラー/98分
製作=鍾啟文、監督=王天林、脚本=張徹(チャン・チェー)、易文、撮影=何鹿影、美術=包天鳴、費伯夷、編集=王朝曦、音楽=劉宏遠(ラウ・ワンユェン)
出演=葉楓、李湄(ヘレン・リー・メイ)、雷震、喬宏(ロイ・チャオ・ハン)、張慧嫻(アネット・チャン・ホイシェン)、田青、劉恩甲


[あらすじ]
 シンガポールの歌姫、李愛蓮(葉楓)と妹の小蓮(張慧嫻)が香港にやってきた。 愛蓮の狙いは、許兆豐(喬宏)の経営するナイトクラブ「春風殿」と契約を結ぶこと。愛蓮が許の前で歌を披露すると、バンド・リーダーの陶正聲(雷震)は彼女の魅力に釘づけ。帰宅した彼は、姉の海音(李湄)に愛蓮のことを話すが、彼女こそ現在の「春風殿」専属の歌手で、しかも許兆豐の恋人だった。仕事と愛をいっぺんに失う可能性を感じて、焦る海音。翌日、海音と愛蓮はマネージャーの部屋で顔を合わせる。困ったマネージャーは、ふたりを一日おきに出演させ、一ヶ月後に公演の実績に応じて契約を更新することに。この闘い、どちらに軍配が上がるのか?


[コメント]
 葉楓と李湄の二大女優対決! といった趣の作品です。こちらはふたりの魅力・演技・歌のぶつかりあいですね。実はこういう二大女優対決ものはけっこう多いので、また機会があればご紹介したいところです。
 対決といいながら、本作ではこの二人を中心に、大人の恋、姉妹愛、板挟み、みたいないろいろな関係が生まれて、その中で引っぱり合いが起こってくるのが面白いところ。しかも、大人の恋がまた意外と初々しくて可愛いんだ(笑)。兆豐が、機嫌直してよーと海音を夜の船に連れていくところ、めっちゃいいですよね。 この作品には、同名のサウンドトラック・アルバムが出ています(#11以降はCD化の際に付け加えられたもの)。 

 ただし、李湄が歌う「賣餛飩」は別テイク(映画では吹き替え?)。出来はアルバムテイクの方がいいと思いますが、こちらでは2番が日本語になってるんですね。しかも、映画では日本語は別に使われていないんです。これはいったい?? と思っていたんですが、1961年に東宝で『香港』というミュージカル公演があり、李湄もそこに招かれて出演し、この曲を歌っていたようで、どうもそのときに作られた一節では……という可能性が今のところ濃厚です(スウィーティーせんきちさんのご指摘による)。


[キャスト/スタッフ]
 李湄は1929年生まれで、33年生まれの葛蘭、34年生まれの林黛などよりちょっとお姉さんですね。1957年には、自ら『野火』という作品を製作・監督・主演しています。李湄の相手を演じた喬宏は、頼れる男がぴったりの好漢。『燃えよドラゴン』(1973)に出演するなどして、20世紀いっぱいまで息の長い活動を続けました。葉楓の可愛い妹役を演じた張慧嫻は、このころはまだおませな少女という印象でしたが、『聊齋誌異』(1965)などでキャセイ末期を支える女優に成長します。
 脚本を担当した張徹は、その後監督に転じ、香港の武侠映画・カンフー映画ブームを代表するビッグネームとなりました。前述の『野火』でも脚本・共同監督を務めています。

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