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〈ラグジュアリー! 香港〉在宅映画祭 vol.7 倩女幽魂(真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)

倩女幽魂(真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー) The Enchanting Shadow

1960年/ショウ・ブラザーズ/カラー/82分
製作=邵逸夫(ランラン・ショウ)、監督=李翰祥(リー・ハンシャン)、脚本=王月汀、撮影=何鹿影(ホー・ルクイン)、美術=沈灝(スム・ホウ)、編集=姜興隆(チャン・シンラン)、音楽=姚敏
出演=樂蒂(ベティ・ロー・ティ)、趙雷(チャオ・レイ)、 唐若青、楊志卿(ヤン・チーチン)

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[あらすじ]
 時は清朝末期の初め。地代の集金で各地を回っている書生の寧采臣(ニン・ツァイチェン/趙雷)は、妖怪が出ると噂される金華古寺という荒れ寺に泊まることになり、そこで剣客、燕赤霞(イェン・チーシャ/楊志卿)と知り合う。深夜、箏の音に誘われて采臣が外に出てみると、寺の奥にある屋敷で美しい娘が箏を弾きながら歌っている。その娘、聶小倩(ニエ・シャオチェン/樂蒂)が歌っていた詩を采臣が添削したことからふたりは惹かれ合うようになるが、翌日町で小倩を見かけた采臣は、小倩が入った店で彼女がこの世の人でないことを知らされる……。


[コメント]
 本作はもちろん、レスリー・チャンが主演した『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の元になった作品で、人と人ならぬものの恋という切ない物語。『聊斎志異』の一編「聶小倩」を原作にしています。1960年の第13回カンヌ国際映画祭に出品され、受賞こそ逃したものの、大きな評判を呼びました。こちらではブツ切りかつ不完全版で、申し訳ありません!
 確かに樂蒂のゆかしい美しさは、本作でも特に印象的。衣裳も素晴らしいし、寺やお屋敷のセットも面白く、荒れ寺の穴だらけの部屋の中で、スモークや照明を使ってふたりの立場の違いや心情の変化を表現するさまはまさに絶品です。
 最後の見せ場はなんだか『妖怪人間ベム』みたいな感じになりますが、ふーむ、これが中国の「妖怪」観かー、と妙に納得したりして。

[キャスト/スタッフ]
 樂蒂は、このころのショウ・ブラザーズの看板役者のひとり。クールな面立ちで「古典美人」と呼ばれ、カンヌでは「中国で最も美しい女優」と称賛されました。通称どおり、後出の『梁山伯與祝英台』(1963)など、黄梅調映画の演技が有名ですが、現代ものももちろん素晴らしい出来。1965年にキャセイに移籍、『亂世兒女』(1966)、『太太萬歲』(1968)などの傑作に出演しました。『四千金』に出てきた雷震は彼女の実兄です。樂蒂は、1969年に残念ながら落命しました。
「映画皇帝」の異名をもつ趙雷は、当時の香港と台湾でもっとも人気のあった二枚目役者。ちょっとおっとりしているところが持ち味で、林黛と共演した『江山美人』(1959)や『楊貴妃』(1962)など、やはり主に時代もので活躍しました。
 妖怪の元締め役は、『曼波女郎』にも出演している唐若青。「中国のロッテ・レーニャ」と呼ばれていたのも納得の大迫力です! 監督の李翰祥は、西本正『香港への道』にも何度も登場する、香港映画界の巨匠で、古装片(時代劇)のベテランとして知られています。先の『江山美人』もそうですが、後出の『梁山伯與祝英台』(1963)が記録的なヒットを飛ばし、黄梅調ブームを惹き起こしたことは特筆すべきでしょう。

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