見出し画像

〈ラグジュアリー! 香港〉在宅映画祭 vol.4 百花公主

百花公主 Princess of a Hundred Flowers

1959年/ 新華影業公司/カラー/91分

製作=童月娟(タン・ユェチュアン)、監督=王天林(ワン・ティンラム)、脚本=陳蝶衣(チェン・ディエイー)、撮影=徐增宏(シュー・ツェンハン)、美術=梁海山(リャン・ホイシャン)、編集=宋明(スン・ミン)、音楽=姚敏

出演=鍾情(チャン・チン),金峰(チン・フェン)、張意虹(チャン・イーハン)、林靜(リン・ジン)、賀賓(ホー・バン)、蔣光超(チャン・クァンチャオ)、吳家驤(ウー・チァシャン)


[あらすじ]

 花屋の娘、高月英(鍾情)は、両親の花屋を手伝うおてんば娘で、ニックネームは「百花公主(百花姫)」。目下お隣りに住む方煥文(金峰)に片思い中なのだが、彼の方はたまたま知り合ったスターの丁愛玲(鍾情、二役)にぞっこん。前借りして愛玲に贈った花がたまたま気に入られて、毎日花を届けることに。さらに彼女を自宅に呼んでみんなでもてなそうとするが、当然空振りに終わり、煥文は落胆のあまり寝ついてしまう。愛玲への手紙を届けるもけんもほろろの扱いを受けてしまい、かわいそうに思った月英は一計を案じる……。

[コメント]

 1950~60年代の香港映画を見始めて驚いたことのひとつは、この鍾情の存在さえも自分が知らなかったということです。なぜ誰も教えてくれなかったの?! 鍾情は、1956年の『桃花江』の大ヒット以降、ごらんのとおりの愛くるしさで当時の香港のトップ女優のひとりとなりました。本作は発想としてはありがちな一人二役ものですが、対照的なふたりを鍾情は楽しげに演じています。ただ、いくらその両者の間の落差が重要とはいえ、これほどすっぴんに近い顔をさらしてしまうのもそうとう大胆ですよね(素顔も可愛いですけどね)。

 鍾情が歌う歌は、香港歌謡界最大の作曲家、姚敏の妹、姚莉(ヤオ・リー)による吹き替え。当時は歌えない女優の吹き替えをプロの歌手が担当することは、ごくふつうに行われていました。姚莉はすでに「玫瑰玫瑰我愛你」をヒットさせていた大歌手で、このふたりのカップリングはまさに相乗効果を生んだといえるでしょう。歌にのってウキウキでパーティの用意をしていたにもかかわらず、歌のエンディングで、ゲストが来なくてつまんないの、となる展開、思わずつりこまれます。


[キャスト/スタッフ]

 金峰はやはり当時人気の二枚目俳優で、鍾情とも何度か組んでいます。この時代の香港映画には、『曼波女郎』の劉恩甲を筆頭に、一度見たら忘れられない顔の人が多く、本作の蔣光超もそのひとり。今回のラインナップにも何度か出てきますので、ぜひ探してみてください!

 監督の王天林は、この時期の香港映画を支える名匠といえるでしょう。かなりアメリカ映画を研究していることが画面からもうかがえます。膨大な監督作がありますが、1980年で監督業からは手を引き、その後に俳優としての活動を始めたのにはびっくり。王晶(バリー・ウォン)監督の父親としても知られています。 新華影業公司も、1930年代から70年代初頭まで活動を続けた会社で、最初期に製作した『夜半歌聲』(1935)は、中国映画史に名を残す恐怖映画の傑作です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?