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【本の紹介】エンジニアリング組織論への招待

 事前にちら読みする事なく買った本書、がっつり組織論的な所から入っていくと想像していたら良い意味で裏切られた。

 まずは「物事の捉え方(認知)」から入り、そこに差違や歪みがあるためにコミュニケーション不全が起こる、といった部分から入ってくる。また(これは全章にに渡ってそうだが)人によって解釈がぶれがちな言葉の定義をきちんと行いながら内容が記述されているので、とても理解がしやすく感じた。

 次にメンタリングについての章が儲けてあり、この二章で組織論的な部分へ入る前の「個同士のコミュニケーション」について理解が深まるようになっている。この章立ては白眉だと思う。

 次いでアジャイルなチームについて記述が続く。この章の内容はアジャイル的な方法論を既に学んでいる人にはおなじみの内容が多いかもしれないが、全章までの内容を理解した上で改めて復習すると、また違った味わいがある。次いで来るのが「不確実性について」の章。ここでもスクラムやリーンについて学んだ人にはおなじみの内容が多いかもしれないが、見える化による不確実性の削減などについて、ツールとともに十分な記述がある。

 最終章でようやく組織的な内容となってくる。主に「組織の情報処理能力」をどう維持するかについて書かれている。これを高レベルで保つためにどういう権限維持をすればよいのか、など。しかしこの章で一番感心したのは「技術的負債」についての考察・定義とこれをどう見える化し、経営と技術の間でどう扱っていくかについて定量化の方法含めての記述である。またアーキテクチャーとビジネスの関係性についても言及されている。

 全体的にきちんと言葉に対して定義・考察を行いながら、丁寧に記述されている本だと思った。冒頭にも書いたが、がっつりとした組織論的な内容を想像しているとちょっと肩すかしをくらった感があるかもしれないが、システム開発的な視点から捉えれば大変な良書だと思う。リーダー層・マネジメント層・経営層の人々は一度目を通し欲しい一冊と言える。


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