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小説 かなしい悲しい偽灯台の物語

どこまでもどこまでも、足首くらいまでの砂が埋め尽くされた道が遠くまで続いている。
不思議と、歩いている自分の靴の中に砂は入ってこない。

しかし周囲は閑散としている。ほとんど何もない。
ところどころに、ポツリポツリと、粘土でこねあげたような変なかたちの家……正確には、生活感をまったく感じないので、何かの施設みたいなものが建っているだけである。

それはどれもこれも本当に粘土でこねたような感じで、同じ形のものはどれひとつとしてなかった。
中で何をやっているのか、そもそも人がいるのかもわからない。

日は暮れかけていて、「ちょっと間隔が遠すぎやしないか」と思うほど、離れた距離で立っているいくつもの街灯に、明かりが灯り始めている。

夕日と、かなり離れた間隔でポツリ、ポツリと立っている街灯の明かりが混ざり合い、夕日のオレンジ色が、街灯の光の周囲だけにじんでいた。

外にも人はいない。

ときおり、黒い制服みたいなものを着ている人物が黒い自転車で通り過ぎていく。
が、それは広い道幅の、私からいちばん離れたところを走っていて、表情もかぶった帽子に隠れて見えないようになっていた。

もう一時間もすれば、あたりは真っ暗になってしまうだろう。
そうなる前に、目的地にたどりつかないといけない。

足を速めると、それほど気にならなかった足元の砂が、靴底にこびりついているような気分になってくる。

ものすごく、ものすごーく遠くには、灯台のようなものが見えるが、あそこが目的地ではない。
あそこには行けない。

たどり着いても、中に入ることもできないはずだ。
人もいないだろう。

昔はあそこが目標だった。
あそこに付けば、気のいい仲間たちが、少数ながら楽しく暮らしており、灯台のよくわからない機能を使って、有意義な観測や研究をしていると信じていたのだ。

だがそうではなかった。

あれは「灯台」のデコイにすぎなかった。

偽の灯台。

しかも、「偽であること」に大きな目的もなかった。

国の予算を消化するためだけに、全国に立てられた、それ自体はまったく意味をなさない塔である。

何しろ、本物の灯台のようには、明かりさえつかないのだ。

幼い頃、自分は確かにあの灯台に明かりがともっているのを観た、と思い込んでいた。
しかし、それは周囲の街灯の明かりを誤認しただけだった。

日が完全に沈んだら、あの「灯台もどき」は完全に見えなくなるだろう。

もちろん、街灯があるから周囲が真っ暗になることはない。

あともう少し歩けば、もともとバス停だった、木で組んだ小屋みたいなものにたどり着けるはずだ。

あたりが真っ暗になった後、どしゃぶりの雨が降る。

それを避けるために、木の小屋に入る。

今夜の自分のミッションはそこまでである。

おしまい

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