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ウェブ会議デビュー

テレワークが始まったら飲んだくれながら仕事してしまうのではないか、という不安があった。これで喫煙まで加わったら不健康街道を飛び越えて三途の川を渡りそうだなんて思ってしまった。

実際にテレワークが始まってみると。なんということでしょう。コロナ恐怖に煽られたこともあって煙草には全く手を出さず、朝は通勤時間分ゆっくり眠ってスッキリ目覚めて軽く運動したら事務作業を片付ける。そして上半身だけいつも通りの「窓際事務員日本代表」と言われた身なりでウェブ会議に参加する。

以前、自宅のだいたいどの位置からでも丸わかりする推しの特大ポスターを職場に晒すか晒さないか慎重な協議が行われた結果、ウォークインクローゼットから中継でお伝えすることになった。ここなら推しも見えないし、多少盛り上がっても近所迷惑にはならないだろうと踏んだのだ。

開始時間の少し前にログインしてみたところ、上司が一足先にいたのだが、つながった瞬間に「顔がGANTZになってるぞ」と言われたため、慌てて懐中電灯をつけてみたら、たまたまPCを覗いていた上司の子ども(小学生になったばかりのめでたいキッズ)のトラウマになったらしい。ギャン泣きされた。叫ぶ言葉すべてに濁点が入っていた。私は懐中電灯をそっと消し、昔、宗教勧誘のおばさんたちから逃げた時並みの俊足でウォークインクローゼットから脱出し、推しのポスター丸見えのいつもの作業場に立った。久々に上司からガチ睨みされた。上司が溺愛する御子を初めて泣かせた部下があろうことか私であると思うと、次の昇給が訪れるかという不安でいっぱいだった。

時間になって続々と参加者が集まってきた。ポスターの構造上、私の隣にかっこつけて立っているイケメンがオーラを放っているのが1時間半ほど垂れ流されていた。誰も触れてはいけない、そもそも触れるほどの余裕もない、触れるほど私のワイプは存在感がなかったのだろう。無事、私のウェブ会議デビューwith推しは幕を閉じた。

やはりいつもの私の変なところを気にしすぎた結果だったらしい。さらに、ウェブ会議用の背景があることを今さらながら知った。次の会議の時はジブリのやつでも使おう。これなら黒い球だろうが貞子だろうが、子どもたちもうちの親父金ローの録画観てるやん、とでも思って流してくれるだろう(絶対ない)。

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