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「勝手にDI室」β 遮断薬のカルベジロールビソプロロールをまとめてみた

β遮断薬の使い分けについて
現在 β 遮断薬が 10 種類以上ありますが、主に現場では、ビソプロロールとカルベジロールが使われているかと思います。 また最近は、β 遮断薬を高血圧治療薬よりも慢性心不全治療薬としての使用が多いので、この2つをメインにまとめてみました。


1.用法用量 と 適応

びそかる

ほぼ同じような適応です。  日常の保険調剤薬局として注意が必要なのは、ハイリスク加算(特定薬剤管理指導加算)の部分です。 不整脈としての心房細動の部分のみハイリスク加算が算定可能。
また、基本的に用法はどちらも1日1回ですが、カルベジロールは慢性心不全のみ1日2回になるのでココも注意が必要です。

2.作用の違い

ビソプロロールは β1選択的遮断作用を持ちます。その結果COPDや気管支喘息の患者さんに対しても使用することが出来ます。
カルベジロールは α 遮断作用も併せ持っています。その結果末梢血管抵抗を減らし、様々な臓器保護作用に繋がり、治療効果を高めます。(1)

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3.主なエビデンス

従来、β遮断薬は心不全に使用すると陰性変時作用(洞房結節に作用して心拍数を減らす作用)や陰性変力作用(心筋収収縮力を減らす作用)によって心不全が悪化すると考えられ、使用が避けられていました。
しかし、1996年 ACE阻害薬に上乗せする形でカルベジロールを使用した大規模臨床試験 US-carvedilol 試験(2)において、 65% の死亡率の減少効果【95%信頼区間:39-80%; P <0.001】が示されたのをきっかけに、日本でも使用がするため MUCHA 試験(3)が行われ、死亡率の減少効果が示されて慢性心不全に対する適応が追加となりました。
カルベジロールの大規模臨床試験の結果を皮切りに、複数の β 遮断薬における心不全に対する死亡改善効果が示されました。この際に 1,25 mg錠と 2,5 mg錠の剤形追加承認が行われました。
また、ビソプロロールについては、CIBIS-Ⅱ 試験(4)において 34% の死亡率低下が示されました【ハザードリスク比:0.66(95%CI 0.54-0.81、p <0.0001)】。この試験をきっかけに、日本でも大規模臨床試験 MAIN-CHF 試験が実施され死亡率の減少が示されました。この当時は低用量の 0.625 mg錠が存在してなかった為に、2011 年 3 月に剤形追加承認を受けています。

カルベジロールとビソプロロールは、大規模臨床試験で死亡率の減少が幾つかのエビデンスで示されています。また、この2つは脂溶性であり、透析においても除去されにくいために多くの透析患者さんにも使われています。(5)

4.まとめ

β遮断薬は、2014年に高血圧ガイドラインで第一選択から外されたのをきっかけに高血圧薬よりも、慢性心不全薬の顔として使われる事が増えてきました。それでも降圧作用が無くなった訳ではありません。服用してもらうことは、低血圧が起こる可能性は十分にあります。
低血圧症状だけではなく、服用に対して引き起こされる事象についてフォローアップが必要ではないでしょうか。

参考

1.薬局ですぐに役に立つ 薬の比較と使い分け100 33-37
2.N Engl J Med. 1996 May 23;334(21):1349-55. PMID:8614419
3.Am Heart J. 2004 Feb;147(2):324-30. PMID:14760332
4.Lancet. 1999 Jan 2;353(9146):9-13. PMID:10023943.
5. β 遮断薬としてビソプロロールとカルベジロールが頻用される根拠は?

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