見出し画像

益子一人旅 #2


「次に益子に来た際は、わたしが案内するからね」

演奏会で出逢った女性の、その言葉がずっと心にあったまま、
季節は秋になった。

ある日、貰った2冊の本を読んだとき、
「わたしはいま益子を訪れなければならない」
そう強く感じた。

本から感じたこの感覚を、
益子に行って確かめなければならない。
そんなふうに思った。

わたしはすぐに女性に連絡した。

人生で2回目、益子へ行くことが決まった。
ずっととどまっていたものが、動きはじめた瞬間だった。
何かが変わる、漠然と感じた。


二週間後、益子へ向かった。
お昼過ぎに到着すると、車で迎えに来てくれていた。

『まずはランチでもどうですか?』

わたしが行きたいと言ったことを覚えてくれていて、
その場所に連れて行ってくれた。

言葉に残すことを躊躇したくなるほど、素敵な場所だった。

場所は、人が、今生きている人が作り上げていくもの、そう強く感じた。

柚子胡椒などの隠し味が効いたそぼろ親子丼、
いちじくに豆乳のムース、
赤味噌のお味噌汁。

今まで食べたお料理の中で、一番と言えるほど美味しかったかもしれない、忘れられない味。

ビジュアルもそれはもう素敵だったのだけれど、
撮ろうとした時フィルムが終わった.
冷めないうちに食べたいから、フィルムを交換する時間が惜しかった。

おかげで写真は食べ終わった後。


美味しい親子丼を食べながら、色んなお話をした。

ここを後にして、彼女の住む隣町へ向かった。

彼岸花

私が一番好きな花。

街の至るところに咲いていて、まるで歓迎されているようだった。

呼ばれていたんだ。


茂木に着いた。
彼女が、彼女の家族のような友人たちと作り上げた場所を、見せてくれた。

彼女は友人たちに、わたしのことを、
『わたしの新しい友人よ』と言って紹介してくれた。

その後は、演奏会の会場になった場所の日常の姿を見に連れて行ってくれた。
益子に戻って美味しいコーヒーと、クレームブリュレを頂いて、
古本屋さんに行った。

あっという間の一日、大切な一日。

わたしの、益子一人旅のお話。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?