短編小説【惑星探査】
「君は、核爆弾と言うものを知っている?」
石油でできた洋服に身を包んだジゼルは焚火の前で、一人の少年に話しかけた。石油ではなく、動物の皮でできた服をまとったノアは木でできたコップに入ったココアを両手で包み込みながら『核爆弾』という言葉に首を傾げた。
「ああ、この時代なら、マッシュルーム爆発か」
「聞いたことはある。何が何なのかはよく分からないけど。俺勉強は嫌いなんだ」
「マッシュルーム爆発を知ってれば大したもんだ」
優しく笑ってジゼルは立ち上がると、背嚢の中から手に乗るサイズのテントを取り出した。袋から開けると、それは一人用のテントになった。骨組みは柔らかく、布は反発する。
「ずいぶんと良い物持ってるな。古代文明の余りものか」
「違うよ。これは惑星ティーガーデンでできた古いテントだ。最新式のテントはカプセルを置くと大きくて家みたいなテントができて、すべて使い捨て」
興味を持ったノアはテントの中を覗いて、寝転がった。
「なんで使い捨てにするんだ」
「その方が楽だからだよ。このテントは確かに開くのは簡単だが、この小さな袋に入れるのには慣れないと骨が折れるのさ」
「片づけることが嫌なのか」
それを聞いたジゼルはノアの隣に座り、星空を見上げた。
「うん。大体西暦2000年ごろからかな。人が使い捨てをするようになったのは」
「今から1000年も昔の話じゃないか。今は、ええっと3500年」
「3512年。1500年前」
「よくそんな大昔の話を知ってるな」
「私はもう1000年近く生きてる不死身だからね」
それを聞いたノアは目を丸くしてジゼルの事を見た。風が強く吹き、ジゼルの長い黒髪が大きく揺れる。
「嘘つくな」
「嘘じゃない。事実だよ。マッシュルーム戦争も体験してる」
それを聞いてノアは首を傾げた。
「マッシュルーム爆発だろ?火山の噴火みたいな」
薄くジゼルは唇を広げ「そうだね」と頷いた。それからしばらく沈黙が続いて、ノアが口を開いた。
「戦争だったのか?核なんちゃらと関係してる?」
「君は勘が良いね。やっぱり地球に残った人たちは頭が良い人たちばかりみたいだ」
焚火を眺めながらジゼルは「やっぱり地球は心地が良い」とつぶやいた。
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