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「新しい乗り物」の開発に携わらせていただいております<2nd>

広島商船高専 海洋空間利用工学研究室メンバー(5年生)です。

 広島県でニューノーマル(あたらしい当たり前)を創り出す、ひろしまサンドボックス「D-EGGS」の一環として、株式会社エイトノットの「EVロボティックボートで水上オンデマンド交通の実現を目指す自律航行技術開発」に携わらさせていただいております。
 エイトノットの公式Noteも大変面白いので、ぜひ読んでみてください!

 今回は、実際に商船高専生が共同研究として、取り組んでいることを紹介したいと思います。

船にもパイロットがいる?

 広島商船高等専門学校は、いわゆる高専ー5年制の学校です。高専というと、ロボットコンテスト(ロボコン)のイメージが強いのではないかと思います。

 商船高専は全国に5校あり、船員を養成するー船乗りを育成するー学科「商船学科(1学年40名)」を持ちます。ちなみに、商船高専と名がつくので、みんな船員になるかと思うとそうではなく、その他にも特色のある高専ならではの学校があります!広島商船であれば、電子制御工学科、流通情報工学科があります。

 僕は商船学科ですが、3年生から本格的に船のことを学びます。授業で時折、こんな言葉を聞きます。

「パイロットが乗船…」「パイロットステーションが…」「オートパイロットを…」

 パイロットって、飛行機の操縦する人ですよね。でも、船の学校で、飛行機の操縦士が船に乗るのはおかしいですよね。
 お分かりの方は多いと思いますが、実は船員の言う「パイロット」とは、「水先案内人」の意味で使います。昔は、沿岸に入ると水先案内人が乗ってきます。お金などと交換で、難しい海域を彼らが操船し、港に停泊する役割をしていたようです。その役割を海賊が担っていたとも言われています。今は、「水先人(パイロット)」という職業が生まれ、外国船や操縦の難しい船の船長に対し、操船支援の仕事をしています。水先人の仕事に興味がありましたら、下記の日本水先人連合会の紹介ビデオをご覧ください。

 高専生からも水先人になった方は大勢いらっしゃいます。船長をやるにも、水先人をやるにも、大事なスキルが、通航する海域の情報をよく知っていることだと言われています。

海図を理解し、海図に載っていない情報を補完していく

 通航する海域の情報を知るのに最も基礎となるのが海図(chart チャート)です。日本国土の地図は、国土地理院が発行しています。海図は、海上保安庁が発行しています。一枚あたり平均3000円程度で、消しゴムで何度も線を消したり書いたりしても破れないように厚手の紙が使われています。今では、webで手軽に買えるので、ポスターとしてもよいと思います。

 航海士は、出発地点から到着地点まで進路(Course line)と呼ばれる、船が走る予定の通路の線を引きます。その進路通りに船が動くように、操船や船の位置を確認します。下図に今回の実験の海域と想定される進路を図に書いたものを示します。(現在の実証実験において、この進路は実際とは異なります)このように事前に進路を引くことで、通る道は安全であるか、いろいろと考えるよい機会になります。

 さらに、その後、重要な作業があります。それは、船が入ってはいけない場所を決めることです。船が入ってはいけない場所は、その場所に入ると、船に危険が及ぶ場所のことです。このような場所を、航海士はNo Go Areaと呼んでいます。No Go Areaを設定し、この場所から遠ざけて進路を決めるようにと、授業で言われます。

 船が入ってはいけない場所「No Go Area」とは具体的などんな場所でしょうか?例えば、以下のような場所になります。

・地底に岩場(岩礁)があり、浅くなっている場所

・そもそも浅い場所

・アマモなど海草が植生していて、プロペラに絡みついてしまうところ

・沈船や大きなごみが捨てられている場所

・普段より網や漁具が入れてある場所 など

 こうした場所は、海図などの資料を見ながらNo Go Areaとして、海図にその場所を囲い、中を斜線で塗り No Go Areaとして示し、進路から遠ざけるようにします。特に、瀬戸内海の平均水深は38mといわれ、琵琶湖の水深とほとんど変わらないといわれています。実証実験の海域でも、ほぼ10m以下の水深で実験を行わないといけないほど浅い海域です。下図は、実証実験の海域を上空から撮影した写真です。この写真から、浅瀬を判断できますか?笑(この写真の中に水深1mの場所が含まれています)

 こうした情報は、小型船の場合、海図の情報からとれない場合が多いのです。これは海図の改定はすぐに行われるものではなく、長年水深等が計測されない等、含まれない情報がたくさんあるのが実情です。そこで、その海域をよく航行している人に聞き取り調査を行います。航行している人は、その海域のことをよく考え航行しています。その方の聞き取りを通じて、気づくことが多いです。下図に、その聞き取りをまとめた一例を示します。

 今回のエイトノットの自律航行の実施にあたり、本校研究室メンバーで、航路海域の調査ということで、水深の計測や、航行海域をよく航行している方に、暗礁や漁具、海草の生息域、漁具等について聞き取りを行いました。(下図)

 それらの情報をもとに、No Go Areaを設定し、情報提供を行っています。実証実験中も、絶えず海域の情報を整理し、No Go Areaの設定を変更し、アップデートを行っています。お読みいただきありがとうございました!

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