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国家経済、地域経済、家計の相似形構造

ウクライナ戦争に関するトッドの分析、特に経済分析はこれ以上のものはなかなかない。

どういうことかと言えば、現物の生産力についての分析であり、裏を返せばGDPに潜むブルシット・ジョブの分析でもある。

別の表現をすれば「欧米圏はGDPの圧倒的な差にも関わらず、なぜロシアを圧倒できていないのか?」ということ。
(なお、ロシアのGDPは日本のおよそ1/4)

具体的に言えば、企業所属の顧問弁護士やロビイストが何千万円と稼げばたしかにGDPの数値は増えるけれども、そういった「経済活動」をしたところで、戦車一両、砲弾の一発すら生産しているわけではないということ。

すなわち欧米のGDPの高さというのは、ブルシット・ジョブをはじめとする「虚業」によって水増しされたものでしかなく、トッドはこれを「水蒸気」と表現している。

なので、実物生産の能力という点ではロシアとトントン、もしかしたらロシアよりも下回っているというのがウクライナ戦争での、特に砲弾生産能力を見れば如実に見て取れるということ。

80年前、アメリカが世界のGDPの半分を単独で稼ぎ出していた頃のアメリカ経済は、こうした虚業ではなく実物生産能力がほとんどであり、GDPは本来的な意味での国家の生産能力を反映していたと言える。

しかし新自由主義が出始めた頃から欧米圏の経済は変質をして、そういった実物生産能力をグローバルサウスを始めとする国外にアウトソースしたことで、財務諸表的には「キレイ」になり、またそれによって実物生産能力の低下を虚業によって粉飾することができたに過ぎない。

そして今や虚業によるGDPの水増しを止めることができなくなると共に、ますます実物生産能力は不採算部門として徹底的に排除されていく流れに歯止めをかけることができなくなった。

これが「ラストベルト」として現出することになったが、その脆弱性が戦争という莫大な「実物の需要」を要求する社会現象において暴露されたに過ぎない。

相手が世界軍事力ランキング14位のイラン以上のロシアであり、50位台だったフセイン政権のイラクを相手にするのとは訳が違うということである。

なので、湾岸戦争やイラク戦争のようなアメリカによる侵略戦争での「格下いじめ」とは消費される物資も桁違いであり、その限界が露呈したのが今回のウクライナ茶番戦争であったということ。

後世の歴史書には、アメリカの軍事力が馬脚を露した最初の戦争と記されるのは間違いない。

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ここまでは国家経済の分析ではあるが、これは地域経済や個々の経済主体の家計分析にも同じく当てはまることである。

この欧米経済の特徴は、日本で言えば東京・大阪といった大都市圏の経済についても当てはまる。

金融、法務、管理といった実物生産に関わりのない虚業が肥大化すると同時に資本を集中させ、実物生産をますますアウトソーシングしていく過程が進むということ。

個人についても同様で、富裕層と貧困層に二極化していくけれども、富裕層で実物生産能力を持つ者はほとんどいないだけでなく、貧困層も徹底的な分業化による「エッセンシャルワークのブルシット・ジョブ化」あるいはヘーゲルが言うところの「一技能への制限による社会的連関への無制限な依存」によって同じく、都市=家畜の檻というインフラ無くしては生産力を全くもてないと言う状況に陥っている。

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以上から導き出される答えは、「自分で自分の実物需要を満たす生産能力を持つこと」これである。

経済形態で言えば、サプライチェーンに依存しない自前の自給自足経済圏を構築することであり、それは国家も地域も個人も同様である。

私がFIREに可能性を感じたのも、そういった個人的自給自足経済を構築するための小規模資本(技術を含む)を調達するための初期費用を賄うことができるという点が大きい。

そういう意味でも、お金だけ稼げればOKといった従来の経済観、六本木パリピ族的な発想を改めていくことが今後の生存を握るカギになるであろう。

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