見出し画像

オンラインマーダーミステリーの短評(第6回)

箱庭の観測者様へ

1人用であるのにしっかりマーダーミステリーとして成立しています。プレイ時間も短く、初心者にもベテランにもおススメできます。
アドベンチャーゲームやゲームブックでは成立しないゲーム性があり、「本当の君と出会えるマーダーミステリー」というキャッチコピーの通りの不思議な体験が味わえます。

難点があるとしたら、ゲームのコンセプトを深く体験するためにはGMとプレイヤーに一定の信頼関係が必要ということです。

シガーウォーズ

小品ながら名作です。
軽妙で知的な文章とキャラクター造形、犯人探しと個人目標、ゲームシステムの絶妙なバランス、タバコにまつわる犯人探しという題材のカジュアルさと、肩に力を入れることなくプレイできます。
マーダーミステリーで洒脱な文章はめったにお目にかかれないのですが、スモパニシリーズは諧謔に富んでいます。

あくまでカジュアルな作品なので、本格的な推理やエモさとは縁遠い作品です。

野槌

ジャンルはホラーとなっていますが、ほかのホラー系マーダーミステリーと比べてそこまで怖くはありません。ただし一部の方が気分を害するかもしれない表現が出てくるのは確かなので、プレイにあたっては公開されている概要をよく読む必要があります。

作品は和風怪奇モノで、凝った演出と相まって独自の世界観を作り上げています。ただ倫理観を問われる要素があり、プレイヤーによっては没入感の妨げになるかもしれません。
犯人探しのバランスは程よいと言えるでしょう。どちらかが辛い展開になることはありませんし、導線もしっかりしています。
全体として面白い作品に仕上がっています。

名探偵は四人もいらない

絶妙なゲームバランスの上に成り立っている佳作です。個性的なキャラクターが揃っていて、それだけでもプレイしていて楽しいですし、ゲーム開始時点からある程度信頼が置けるペアがいることで遊びやすくなっています。
犯人探しとは別の推理導線や情報の出し方に曖昧な点があり、もっとスマートにすることができるでしょう。
また事前の注意事項にはありませんが、一部にかなり不快な表現があります。プレイヤーによってはかなりの不快感を催す危険性があるので、GMがしっかり確認、ケアする必要があります。

プレイ人数はマーダーミステリーの永遠の課題です。プレイ人数が少ないと、真相にたどり着けていなくても犯人に投票する確率が上がります。4人プレイであれば自分を除いてランダムでも33%で犯人に当たります。
一方でプレイ人数が多いと、情報量が増えすぎて推理がまとまらなくなります。8人プレイで全員と密談するというのはかなり効率的に動く必要があるでしょう。
ペアは1つの解決策で、ほかのプレイヤーをペアとして疑い、パートナーと情報交換することで推理の難易度を下げつつ、偶然だけで犯人を見つける蓋然性は抑えられています。

響明館の幻影

ゲームの仕掛け、ストーリーともよくできている佳作です。
ただギミックの性質上もありますが、序盤のロールプレイが難しくて没入しづらいという構造上の問題があります。
またカード枚数が多く、もっとスリム化できます。
とはいえ価格を考えればよい出来といえるでしょう。

ガーディアンズ・ミトロジア

スマホアプリUZUのリリース初期からある代表作の1つです。
物語の世界観やエスカレーションはひねりがあって飽きが来ないようになっています。

UZUでのプレイ前提というシステム上での制約があるとはいえ、推理の導線が荒くて展開によっては不条理さを感じるかもしれません。
プラグマティズムな視点に立てば未完成作品ですが、エモーティヴィズムな観点では佳作です。

青の問いに緑の答えを

最近のトレンドに乗ったシステムの小品。全体的な推理は難しくなく、マーダーミステリーに不慣れな人でも楽しむことができます。推理導線も工夫が凝らされています。
作品の設定上、キャラクターの役割の大きな差があり、それによってユーザー体験も大きく変わります。プレイにあたってはその点を理解して臨むのが望ましいでしょう。

ある令嬢の幸せな結婚

作品のコンセプトは明快ですが、ややもするとマーダーミステリーという根幹を覆す可能性があるため、好き嫌いが分かれるでしょう。
非常に残念なのは、プレイヤーの意志ではなく運によってせっかくのコンセプトが阻害される可能性があることです。取り残されたプレイヤーには不条理さしか残りません。
プレイヤー自身がコントロールできないところでスタート地点にすらたどり着けないのは、プレイヤーにとっても作者にとっても不幸でしかありません。
作品にとってなにがいちばん大事なのかを熟考して、コンセプト実現のための補助線はもっと必要です。

雲は魔を集結する

犯人探しにおける課題への解決策が提示されていて、皮肉なことに近代国家観が反映されています。
といっても堅い作品ではなく、魔王とその配下というロールプレイを楽しむ作品でもあります。

注意事項にGM処理が多いとあり、GMレス作品と比べれば確かにそうですが、GMが必要な他作品と比べて特に煩雑だとは感じられませんでした。

真田幸村は幽世の宿で空ろな夢を呟く(5人用)

戦国武将(特に真田幸村)が好きな人向けのファン性がかなり高い作品です。
またクトゥルフ系マーダーミステリーとある通り、クトゥルフ神話の知識をある程度持っていることが前提条件となっています。
マーダーミステリーなのかと問われると論理的な推理がかなり弱く、一方で文章とイラストの質は高いので、雰囲気と物語を楽しむ作品です。

罪色の友情

ゲームのコンセプトは面白い。ただ犯人導線が甘いということとギミックに起因する不自然な箇所が目についてしまいます。
クローズ型の悪いところが出てしまっています。
作品のテーマをもっと掘り下げた方が印象深いものになったはずです。

人間は一挙に情報を摂取しても処理しきれないので、一定の時間ごとに徐々に情報が追加されるのはプレイヤーファーストです。しかし記憶喪失でもない限り、思い出すまでまったくなにも覚えていないというのは不自然です。
日常的なことであれば記憶が曖昧なのは理解できますが、印象的な出来事をまったく覚えていないのはリアリティが感じられません。

反逆のグングニル

ネガティブな意味でマーダーミステリーの根幹を問う作品。
犯人導線も詰めが甘く、おすすめできない作品です。
北欧神話の神々としてプレイするというアイディアは魅力的です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?