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オンラインマーダーミステリーの短評(第4回)

デモンズボックス

正統派ではない脱出ゲームやデスゲームの要素を多分に含んでいる作品ですが、舞台設定、ギミックなどどれをとってもよくできています。
脱出ゲームやデスゲームを題材にしたマーダーミステリー作品は、どれかに要素が偏るか詰め込み過ぎてうまくいかないものが多い中で、協力と裏切りのバランスがうまく取れています。
『椅子戦争』の作者の新作なので、『椅子戦争』を気に入った方は間違いなく面白いと感じられます。

エイダ

GMレスの傑作です。犯人探し、そしてエスカレーションがうまくデザインされています。
参加者全員をどうやって満足させるかというのはマーダーミステリーというゲームジャンルの構造的な課題ですが、『エイダ』では1つの解決策が提示されています。それによってプレイ後の満足度はどのプレイヤーも高くなっています。
GMレスと言いつつ、実際はGMがいないとスムーズにプレイできない作品が多い中で、エイダはちゃんとGMレスでプレイできます。
初心者にもベテランにもおすすめできる作品です。

幽刻館の殺人

館ものはミステリー小説では1つのジャンルになるほどですが、まさにそれをマーダーミステリーにした王道的な館もの作品です。
館ものに理解があるかどうかで評価は大きく分かれます。
犯人探しのためのフーダニット、ハウダニット、ホワイダニットがきちんと揃っていて、ミステリー小説の雰囲気をうまく掬い取ってマーダーミステリーに仕立ててあります。

絶滅危惧種マウント女子

『暗殺 赤ラベル狂』の作者の新作で、ぶっ飛んだ設定なのに推理は本格的というスタイルが踏襲されています。
『暗殺 赤ラベル狂』は世界観がかなりユニークでしたが、本作は登場キャラクターが非常に個性的で、それだけに楽しくプレイできますし、ノリの良いロールプレイ推奨です。
推理の難易度は前作より上がっていて、マーダーミステリー全体で見ても難しい部類に入ります。ただ犯人が見つかっても見つからなかっても面白かったという読後感は残るでしょう。

マダム・ペテンシーと吸血鬼の交霊会

オンラインならではの作品で、新たな試みが新鮮な刺激を与えてくれます。
マーダーミステリーではゲームとして成立させるために単純化、抽象化されている要素がいくつかあります。当たり前として受け入れられていますが、それをリアルに戻すことで新しい遊びが生まれています。
それに頼っているだけでなく、その要素がなかったとしてもきちんと楽しめる作品です。

夢ノ棺ノ時間ドロボウ

ビジュアルが豪華でキャラクターの心情に寄り添うことで没入感が味わえる作品です。
犯人探しはかなりシンプルで、推理や謎解きよりも物語を体験してほしいという作者の意図は汲み取れます。そのクオリティは高くてプレイする価値はあるのですが、ちょっとしたズレが作者にとってもGMにとってもプレイヤーにとっても不幸を呼んでしまっています。

仮縫いの肖像画

フィクションが現実では経験できないことを疑似体験するものだとしたら、正しくそれにのっとった作品であり、作者のコンセプト通りに仕上がっています。
犯人探しは手堅くオーソドックスな作りで、作者の狙った通りの深淵を覗くような体験ができます。

放課後のミィザイア。

マーダーミステリーなのかと問われると、犯人探しが主になっているわけではないので違うと答えるべきでしょう。むしろ脱出ゲームに近いのかもしれません。
キャラクター視点で物語を体験するのが主眼で謎を次々に解いていくわけでもなく、ボーダーの作品と言えます。
マーダーミステリーと言っていいのか判断しかねるボーダーの作品は最近増えていますが、その中ではキャラクター造詣やナラティブ、エスカレーションなどがしっかりしています。
プレイヤーにとっては楽しいかそうでないかが全てで、楽しんだ者勝ちです。

異世界迷宮オークション

「謎解き×脱出 デスゲーム風マーダーミステリー」と銘打たれていますが、マーダーミステリーというより単なる「謎解き×脱出」です。
謎解き好きであれば楽しめるでしょうが、マーダーミステリーだと思ってプレイするとがっかりします。

エウメニデス礼拝堂と漆黒の鐘

「神聖厨二マーダーミステリー」、「厨二全開でロールプレイするのが醍醐味」と説明されていますが、マーダーミステリーではありません。
厨二全開というのはまさにその通りで、作者の感性に最後まで付き合えて、朗読が好きな人だけが楽しめるでしょう。

バロン・サムディと賑やかな死体の謎

コンセプト自体は面白いと感じたのですが、ともかく随所の練り込みが足りません。
導入というのは作品に没入してもらうために重要なはずですが、導入が大切にされておらず、その程度の作品なのだと見切りをつけられます。
マーダーミステリーとしては致命的な欠陥があり、そのままプレイしたら開始1分で終了するでしょう。肝心のアイデアにしてももう一捻りないとただの思いつきです。
マーダーミステリーのクオリティはこの1年で驚くほど上がっているのに、まったく取り残されています。

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