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誰でもカンタン らくらくアマチュアGM術(後半)

レベル2:感想戦を盛り上げる

レベル2ではゲームの満足度をより高めるため、ゲーム終了後の感想戦を盛り上げます。
感想戦はマーダーミステリーの重要な要素です。複雑なストーリーの映画やドラマを観終わった後に語り合いたくなるのと同じで、自分で気づいたことを伝えたり、疑問に思ったことを解決することで作品の理解度が深まり、愛着も湧きます。
マーダーミステリーはネタバレ禁止で自由に話せる機会が少なく、同じ作品をプレイしていても同じ展開はほかにありませんから、自分の体験を遠慮や説明なしで語り合えるのは一緒にプレイした人たちだけです。
プレイする際は感想戦を織り込んだプレイ時間をなるべく確保します。

感想戦を盛り上げるのはレベル2 GMの役割ですが、無理に活気づける必要はありません。つまらない作品、そのプレイヤーに合わなかった作品は感想戦も盛り上がりません。
作品のポテンシャル以上のことはできないのでさっさと切り上げても問題ありません。

感想戦では"各キャラクターの目標は何か"、"犯人がどうやって犯行を遂げたか"、"どうすれば犯人を特定できるのか"、そして時には"被害者がなにを行っていたか"をGM主導で解説します。
その後はプレイヤーに話題を任せたフリートークにします。感想戦でも主役はプレイヤーで、GMはサポート役に徹します。
時間無制限で感想戦を楽しむというのはプロGMになかなかできないことで、プレイヤーとGMが交じり合って語り合えるのは友人同士でプレイするアマチュアゆえの特権です。

犯人を見つけ出し、タイムラインを洗い、自分の目標を達成できていたとしても、プレイヤーの立場からは事件の全貌を知ることはできません。犯人であっても把握しているのは断片的な情報です。ゲーム中にそれぞれのキャラクターがなにをやろうとしていたのか、密談で何が話されたのかは当事者でなければわかりません。
まして犯人を見つけられないまま終わった場合、いったいなにが起きていたのか、どうすればよかったのかを知りたいはずです。
感想戦で事件の全貌を知ることは作品のコンセプトの理解にもつながり、作品の物語や世界観をより深く味わうことができます。

各キャラクターがどういう人物だったのかは、そのキャラクターの目標を起点に掘り下げていきます。目標はそのキャラクターの行動動機であり、その人物が何者なのか、何を行っていたか(あるいは行おうとしたか)を端的に表しています。
目的を端緒として、そのキャラクターがなぜそんな目的を持っているのか、なぜその場に居合わせたのかを説明します。

キャラクターの解説はGMが話すのではなく、プレイヤー本人に語ってもらいます。
GMよりもよほどそのキャラクターに精通しています。なによりGMが一方的に話し続けるのではなく、プレイヤーが感想戦に積極的に参加することで一体感が出て、満足度が上がります。
GMは伝えるべき情報が出ていない時に補足するか、目標から話題がずれた際に軌道修正したり、切り上げるといったモデレーターの役目を果たします。
楽しい作品や自分が活躍した場面はついついプレイヤーがいつまでも話し込んでしまいがちです。どういったキャラクターだったのかを披露するという主旨から外れてしまいますし、まだ話していないプレイヤーを待たせることにもなるので、長くなりそうだったら「続きは後ほどフリートークで」といった言葉で締めます。
犯行についても同様に犯人の口から語ってもらいます。事件の真相を理解してもらうため、いつ、どうやって殺したのか以外に動機も明かすように促します。

”どうすれば犯人を見つけられたのか”------特に犯人にたどり着けなかった場合はプレイヤーが最も気になることです。
作品にもよりますが、犯行が可能な時間はいつで、その時にアリバイがないのは誰なのか、またアリバイがある人はどう証明されるのか、凶器は何で誰が入手できるのか、動機があるのは誰かを解説します。
プレイヤーがゲーム中にたどり着けている場合はプレイヤーの推理や行動を称賛しつつ、さらっと流して構いませんが、たどり着けていない場合は躓いた箇所を中心に丁寧に説明します。
これら以外に各キャラクターの行動についても質問が飛び交うでしょうが、それも担当プレイヤーに語ってもらいます。

レベル2 GMの事前準備

レベル2 GMの事前準備は”キャラクターシートを読むこと”、”犯人の解説についてGMガイドを読むこと”です。
キャラクターシートは通読しますが、隅々まで記憶する必要はありません。キャラクターの全体像を大づかみに把握しつつ、最も重要なポイントを押さえておくのが事前読み込みの目的です。
どういったキャラクターなのか、目標が何か、犯行時刻に何をしていたかが重要なポイントです。1キャラクターあたり1行程度で構わないので、メモしておけば記憶を定着化させられます。

犯人の絞り込み方法はGMガイドで解説されている場合がほとんどです。もしも用意されていないようなら、解説できるように自分でまとめる必要があります。
犯人のキャラクターシートを起点にして各キャラクターシートを追っていく時間がかかる作業ですが、マーダーミステリーは本質的に犯人探しのゲームなので感想戦で触れないわけにはいきませんし、プレイヤーからも質問が出ます(だからこそすべての作品でGMガイドに犯人の絞り方を記載すべきです)。
アリバイと凶器という客観的事象を中心に据え、動機を補強材料として組み立てます。

レベル3:パレートを超えて満足度を高める

レベル3ではプレイヤー体験の質をさらに高めます。レベル2までは受動的でGMガイドに沿っていかに進行するかが基本でしたが、レベル3ではエンターテイナー、ストーリーテラーとしてGMの工夫が求められます。

感想戦の満足度を向上させる

感想戦は解説の場ですが、プレイの振り返りの場でもあります。
キャラクターの人となりや目標を明らかにするだけでなく、一緒にゲームを遊んだ仲間へ素直にリスペクトを表し、ゲーム中の行動で良かった点、感心した点を称えます。
犯人追及の決め手となる推理にたどり着いた人、難しい目標を達成した人を積極的に評価します。
マーダーミステリーは結果だけでなく過程を楽しむゲームです。最終的に目標が達成できなかったり、点数に結びつかないとしても、どのプレイヤーにもうまくプレイできた場面は必ずあるはずです。
そのプレイヤー自身も含めて当事者が気づかないファインプレイもあり、あらかじめ全容を知った上でプレイする客観的な立場だからこそ見えることがあるでしょう。たとえば正しい推理のきっかけを作った、途中までうまく犯人を匿っていた、共通の目的のプレイヤーで協力体制が取れたなどです。
またキャラクターの心情に寄り添ったプレイも積極的に称賛します。時には目標を捨ててでもロールプレイを重視した選択をする場面もあるでしょう。目標を設定した作者よりも深くキャラクターを理解できていたとも言えますから、その決断こそを称えるべきです。

振り返りの注意点は批判や糾弾の場にしないことです。
あの場面でこうすべきだった、なぜこうしなかったのかといった発言はいらぬおせっかいで、(マナーやルール違反でない限りは)プレイヤーの行動は否定すべきではありません。
もちろんそのプレイヤーから「あの場面でどうすべきだったのか」と問われたら、こういう選択もあったと助言するのは構いません。

演出を強化する

演出の強化でアマチュアとしてできることはスムーズな読み上げとBGMです。
オープニングやエンディングなど、GMがナレーションとして台本を読むシーンはどの作品にも存在します。ナレーターや声優のような演技力は求められませんが、あまりにもたどたどしかったり、読み間違いがあると没入感や理解を損ねますし、プレイヤーに不安を与えてしまいます。
音読の練習まではしなくて構いませんが、特にマーダーミステリーは難読の名前や常用外漢字を使いがちなので、読み上げ箇所はあらかじめ目を通して読み方を調べておきます。

音楽は言うまでもなく没入感を高めるための重要な要素です。その場面にふさわしい音楽が鳴るだけで高鳴ります。映画やゲームの音楽を聴くだけで名場面を浮かべる方もいるでしょう。
一方でマーダーミステリーで音楽が重視されている作品はほんのわずかです。だからこそ場面に合わせてどういったBGMを流すのか、GMの工夫とオリジナリティの余地があります。
BGMはあくまで雰囲気づくりであってプレイヤー同士の妨げになる音楽では主客転倒です。ゲームやアニメ、映画のサントラのように劇伴音楽が向いています。
オンラインであればユドナリウムやココフォリアには音楽再生機能がありますし、オフラインではスマートフォンでも十分です。プロは著作権処理が面倒ですが、非営利で友人とプレイするアマチュアGMは私的利用の範疇に収められるでしょう。

ゲーム中にどこまで介入すべきか

マーダーミステリーの主役はプレイヤーです。プレイヤーがゲーム中にどのように行動し、どのような結末を迎えるにしても、それがプレイヤーの選択です。
こう行動すべきだ、この結末の方がいいと考えたとしても、GMがコントロールするものではありません。GMは主役が引き立つように努める裏方であって作品の監督や演出家、脚本家ではありません。
GMが行うのは進行と裁定で、ルール違反や重大なマナー違反(暴言を吐くなど)でない限りはゲーム中に介入すべきではないというのが基本原則です。

とはいえ個人的な意見としては、キャラクターにとって自明なことはプレイヤーにも説明しても良いと考えています。
プレイヤーが得られる情報はキャラクターシートやカードに書かれている文章だけです。しかし作品の世界で生きているキャラクターは五感からもっとたくさんの情報を得ています。

たとえば大けがをして本来は誰が見ても動けないキャラクターがいて、本人のキャラクターシートにはその記述があるものの、ほかのキャラクターには記述がないとします。
けがをしたキャラクターの担当プレイヤーがそれを理由に行動できなかったと説明しても、ほかのプレイヤーには記述がないゆえに事実なのかが判断できず、嘘をついているかもしれないという疑いは晴れません。しかしキャラクターから見れば、けがをしている(あるいは少なくともそのように見える)のは「見ればわかる」ことで、キャラクターとプレイヤーの認識に乖離が生じます。
これは逆も然りで、「見ればわかる」ことでプレイヤーが嘘をついてもプレイヤーには判断できません。
叙述トリックでもない限り、こうした場合はGMから補足して構わないと考えています。GMが事実を説明しない限り、記述がないゆえに証明できないからです。

レベル3 GMの事前準備

レベル3 GMとしての事前準備は”読み上げ箇所に目を通して読めない漢字があれば調べておくこと”、”キャラクターシートを時間の許す範囲内でできるだけ読み込んでおくこと”、”作品にふさわしい音楽を探しておくこと”です。
ゲーム中は感想戦に備えて、推理やロールプレイのポイントになる発言、行動をしたプレイヤーをなるべくメモしておきます。そのためには犯人を絞り込むための推理の道筋、各キャラクターの目標を事前に把握しておく必要があり、結果的にGMガイドとキャラクターシートを事前に読んでおくことになります。

レベル外:GMとしてほかに考えること

マーダーミステリーのマナーとは

マーダーミステリーにおけるマナーはほかのプレイヤーが嫌がることをせず、一緒に楽しむことだと捉えています。
マーダーミステリーにはロールプレイや推理などさまざまな要素が詰まっていて、それが多様性と奥深さを生み出していますし、さまざまなプレイスタイルが認められます。
マナーが問題になるのはプレイスタイルが異なるプレイヤー同士が集まり、それぞれが重視する楽しみ方が衝突してしまう場合です。いわゆる「人狼民とTRPG民とボドゲ民が同卓している」状態です。
これこそが正しいマーダーミステリーの遊び方だというものはなく、ダイバーシティと価値相対主義で捉えるべきです。

幸いなことにアマチュアGMはマナー問題からは縁遠いはずです。不特定多数が集まる場ではなく知り合い同士でのプレイであり、プレイスタイルがまったく異なる人同士が集まるのは考えづらいからです。
また一期一会ではなく同じプレイヤー同士で何度も遊ぶ(=次がある)ので、それを前提に合意を形成することもできます。
とはいえ完全に同質な集団というのは考えづらく、意見の差は生まれるものです。関係性があるからこそ名指しで注意しづらいこともあるでしょう。
(次回以降のプレイで)ゲーム冒頭の注意事項として、全員に周知する形で喚起します。

マーダーミステリーのプレイスペース

オフラインでプレイする場合に考えなければいけないのは「どこでプレイするのか」ということです。
誰かの自宅でプレイできればそれに越したことはないでしょうが、6~7人が集まって密談もするとなるとそれなりの広さが必要で現実的には難しいでしょう。

全国どこでもあって安価に借りられるのは公民館など公共施設です。またインスタベーススペースマーケットといったレンタルスペースサイトで探す方法もあります。
どちらにしても注意しなければいけないのは広さです。プレイヤーが7人だからと10人以下の会議室を借りると密談スペースがありません。パーティや会議利用であれば20人用になる30~40平米以上のスペースが良いでしょう。
欲を言えば、1つの広い空間では密談の声が聞こえてしまう複数の部屋に分かれているスペースが望ましいです。

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