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ニシデさんの思い出〜ある晴れた春の日〜


今シーズンの冬は寒かったねぇ

暖かい日が少なかった気がします

3月になり、ようやく春めいた日がちらほら

こんな穏やかな春の日ざしの中

あったかい日になると思い出す


今からもう20年近く前のこと


俺は現場でNTTの光回線の敷設工事をしていた

当時はちょうどNTTがBフレッツ(光回線)の提供を始めたばかり

申し込みが殺到し、工事は連日鬼のように予定が入る


今だから言えるのだが、当時朝の6時に出社して6時半から現場で作業をし、
終わるのは下手すりゃ22時とか
(もちろん違法行為なんです。道路使用許可は9:00〜17:00なんですから笑)

でもそれくらいしないと予定件数がこなせない
(もちろん入社したてで技術も未熟であったからなのだが)

当然、道路上の工事もあるので、一台に1人(2人1チームの場合も1人、幹線工事メインのチームは4,5台なので、2,3人)の警備員がつく。


しかしながら、警備会社もなかなかの人材不足ゆえ、
ホントろくでもない警備員が来ることもしばしばあった。

よく現場の職人は気性が荒いというが、

あながち間違いでもない


いや、間違いかなww


どちらともいえる


とかく現場は騒々しいので、


大声で叫ばないと声が通らない

自然と大声になるので、怒鳴ってるようにも映るかもしれない


さらにスケジュールが押してくるとイライラして、思い通りに動かないと八つ当たり的なことまでしてしまう


「バカヤローッ、てめぇ何やってんだこのヤローッ」

「言われたこともやれねぇのか、クソ野郎がっ」

そのくらい言ってしまうことも数多くあった。


最悪のケースは、「お前、もうここで帰れやっ💢」といい現場近くの路上に放置した
(最終的にガードマン会社の人間が拾いに行くんだけどね)

もちろん独断でやるわけにはいかない

会社に連絡した上で、「そんなに使えねーなら帰らせろや」という許可をとった上でのことである
(今思うと、会社も相当なヤベーとこですね)

ちなみに俺は2,3人帰らせたことがある。


なので、ガードマン会社は俺のチームには
そこそこしっかりしたガードマンを配置するようになったのだが、


ある日、どうしても人が足りず

わりと年配のおじーちゃんみたいな人がガードマンとして俺のチームについた

それがニシデさんとの出会いだった

(これ拾い画像なんだけど、ニシデさんのイメージはまさにこんな感じでした)

やはり慣れてないからか、何度も何度も怒鳴りつけられる
(今でこそ穏やかな俺ですが、当時はかなり瞬間湯沸器でしたねw)

ただ、ニシデさんのすごいところは

その無理ゲーに対して、毎回毎回

「すいませーん、すいませーん」

「はい、気をつけまーす」とか返してくる


自分の子ども、下手すりゃ孫くらいの年の俺に

くらいついてくる。

現場に到着すれば、真っ先にダッシュで誘導をしてくれる

帰り際、車の中で

「ワシはこの通り年寄りなんで、若い人には体力ではかなわない。
でも、それなりに頑張りますので、足りないところがあったらどんどん言ってください」

と言われた


その日以来、ニシデさんは俺のベストパートナーとして同行することとなった


お昼ご飯食べてる時も

「ニシガキさん、大変ですよね。この仕事って」

とか、

「ニシガキさんは腕が良いから早く終わるんで助かります」

とかね。


ちなみに終了時間とかはチームリーダーが記入することになっているので、
ニシデさんの終了時間はいつも多めにつけてあげていた。


たまに客先でコーヒーやお茶をもらったら
ニシデさんにもお裾分けしていた

ごく稀にビールをくれるお宅もあり、
そんな時はニシデさんは満面の笑みで

「仕事が終わって飲むサケは美味しいんだよねぇ」と言っていた


その後、俺は会社で一二を争う技術を持つようになったので、
1人で現場を回らされることが多くなった。

数ヶ月後のとある日、

人手が足りないので、2人チームに駆り出された。

ニシデさんと久々のお仕事だ


ただ、ニシデさんの動きがイマイチなのだ

「ニシデさーん、何やってんのよっ💢
以前ならちゃんとやってたっしょ💢」
と強めに言ってしまった。

仕事が終わり会社に帰ってきて、ガードマン会社の担当者と談笑してる際に
「ニシデさん、なんか本調子じゃなかったみたいやねぇ」と伝えた。

またそれから1人仕事に戻ったのだが、
それと同時にニシデさんの姿が見えなくなった

「あれ?ニシデさんは?」とガードマン会社の責任者に聞くと
「あ、今日は来てないですねぇ」と

「もしかして俺のせいとかですか?」

「あ、いや体調悪いみたいなんで」と

それから数ヶ月たったある日

仕事を終え帰社した俺に

ガードマン会社の担当者がそっと寄ってきて

「なんかね、ニシデさんが亡くなられたみたい」

「えっ?マジですかっ」


そのやりとりを聞いていたガードマンのシンタニさんがやってきて

「ニシデのとーちゃん死んだってな。
いつも帰る時に『ニシガキさんにはホント世話になってる』とか『今日はコーヒーご馳走になった、今日はビールをもらった』とか言ってたんだよね。ええ人だったんだけどなぁ」


そっかあ、ニシデさんが天に召されてしまったか


最後に怒っちゃって悪かったなぁ


ホントにニシデさんには助けられたもんなぁ


今ごろ天国で美味しいお酒飲んでんのかなぁ


そんな温かな春の日でした


今でもたまに春の陽気な日には思い出すんだよなぁ

ニシデさん、ありがとね

一緒に仕事できて楽しかったよ


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