声楽タイムズ第7回「オペラとキャラクター」

日本声楽家協会事務局の木村雄太です。
最近は日本のオペラ団体や世界の歌劇場などで
ストリーミング配信が行われており、
ネットにてオペラをご覧になられている方も多いと思います。

さて、オペラは音楽、演劇、美術などの様々な要素が
融合して成り立っているため、総合芸術と呼ばれています。
作曲家の書いた美しい音楽に酔いしれたり、
お好きな歌手の声を堪能したり、物語に笑って涙して、
豪華絢爛な舞台美術に息をのんだり、
または極限にシンプルかつユニークな演出に
その手があったかと感心したりと
総合芸術と呼ばれるだけあり、オペラには様々な楽しみ方があります。
そんなオペラの要素の中で、今回はキャラクターについて
焦点を当ててみようと思います。

有名なところでいえばトスカ、カルメン、ネモリーノ、フィガロなどがいますが、
これらのキャラクターは声種に深く関わっています。
オペラでの声種は高いほうから
ソプラノ、メゾ・ソプラノ、アルト、テノール、バリトン、バスと
大きく分けられますがそれぞれの声種にはこういった性格のキャラクターが合う、
といった絶妙なマッチングがあります。
男声でいえばテノールは王子様役やお調子者役、
より低い声種のバリトンはお父さん役やニヒルな役、といった感じです。
(ファッハと言って、同じ声種でもより細かく種類を分類するための用語もあります。)

そんな沢山いるオペラのキャラクターから個人的に好きなキャラクター三役を
ピックアップしてみました。

・ムゼッタ(プッチーニ《ラ・ボエーム》より)ソプラノ
画家のマルチェッロの元恋人であり、一見派手な性格のように見えますが、
4幕でのミミへの優しさなど、愛に溢れたキャラクターだと思います。

・ウェルテル(マスネ《ウェルテル》より)テノール
ゲーテの小説、「若きウェルテルの悩み」を題材にしたオペラのキャラクターで、
婚約者のいる女性に想いを寄せる青年です。
タイトルロールなだけあって、オペラを通じて出番が多く、
その苦悩は美しいメロディーに乗せて歌われます。

・ズルガ(ビゼー《真珠採り》より)バリトン
カルメンの作曲家、ビゼーの書いた美しいオペラに登場する漁師の役です。
親友であり、恋敵でもあるナディールを救う、バリトン的な複雑な心理描写が魅力的な役です。

色んな魅力の詰まったオペラ。
あらすじを見て、このキャラクター好きだなあと思った演目を
その人物に感情移入しつつ観劇するのも面白いと思います。

次回の「木村雄太の声楽タイムズ」もどうぞお楽しみに!

【お知らせ】
日声協メルマガに以下のURLより無料でご登録いただけます。
コンサートや講座など、日本声楽家協会に関する情報毎週水曜日に配信しています。
https://ws.formzu.net/fgen/S71618674/