今夜、ロマンス劇場で

観てないなら観たほうがいい。僕はラブロマンス物で初めて泣きました。とても素敵な映画です。

「観たほうがいい」と何度も勧めてくる某友人(一緒に飲みとか海外とか行く)の熱量に負けた形で観た。正直「人がすっごく推す作品って、勧めた人の熱量に負けたときがきまずいんだよなぁ」なんて思ってました。結果、その心配は全くの無用でしたが。

※ストーリーの核心には触れずに書きます。なぜならこれはマジで観てほしいから…。

キャッチーな感じで書くと「俳優陣の演技がよい」「坂口健太郎がさわやかで良い」「北村一輝のキャラ立ちがよい」「昭和のノスタルジーな感じがよい」「映画ネタがたくさんちりばめられていて楽しい」などなどあります。綾瀬はるかの演技力はまぁ…個人的にはちょっと…うん…

とにかく。

ここまで読んで「面白そうかも?」と思ったあなたは観ましょう。そしてこのnoteは閉じてください。僕は初めて観る人のノイズになりたくない。今ならAmazonPrimeにあるから! 

前情報って映画鑑賞の邪魔になりません? 勧められた作品ほど「予告編」とか「あらすじ」とかはなるべく観ないで初見を迎えたいのって僕だけですかね。


これでも「まだ観ないかな~」ってあなた。予告はこちらになります。

これを観て「面白そうかも?」と思ったあなたは観ましょう。そしてこのnoteは閉じてください。地上波でもやる(やった?)から! 録画するとか最新の録画機材ならできるでしょう!





さて、ここからは「観た」or ここまででも観ないな~と思った方用です。あと僕の個人的備忘録です。もう後悔してもしらんぞ! 俺は!

序盤からローマの休日チックな導入からの三文芝居が始まる…と思いきやこれは劇中劇で、懐かしい白黒フィルムは仕舞われる…と思ったらそれが取り出されて坂口健太郎が観る…と思ったらなぜか現代の病院に飛び、それすらも劇中劇だとわかる。いきなり三重構造をかましてくるのである。

そしてストーリー。まぁとにかく、映画の中から出てきた綾瀬はるかが傍若無人。「なんだこのヒロイン。社長令嬢の本田翼のほうがよっぽどいいじゃねえか!」って感じです。

序盤から中盤は、さんざん迷惑をかけられる坂口健太郎にとにかく同情する時間です。そしてなんとか綾瀬はるかがデレたと思ったら、異世界に住む者のお約束です。「一緒にはなれない」制約は「触れられない」ということで…ひねくれ者の私は「ははぁ~ん、ぬくもりが感じられない系のストーリーで行くんだな、これは!」なんてゲスいメタ視点で話を観てました。

劇中の昭和の雰囲気、登場人物の服装はまさに「モダン」な感じがして映像作品として面白いです。デートの場面の綾瀬はるかの服装がとてもお洒落で素敵なので、それだけでも一見の価値あり。坂口健太郎は常に白シャツを守っており、それもまたイメージ的に良し。ふたりの階級、身分の違いみたいなのが視覚的にも伝わってきます。

そして中盤、坂口健太郎は告白をするのですが…綾瀬はるかは坂口健太郎の幸せのため、本田翼のような「坂口健太郎を好きでいてくれる普通の女の人」のほうがいいと思い、自分から消えたいと願います。「最後に、抱きしめてほしい」と言って。

「おお~、とうとうクライマックスか~」なんて思いながら私は観ていたわけですね。

ここまでの展開でもテーマはちょこちょこと見えていて「人を喜ばせるために生まれてくる」という、映画自体の存在意義だったり、映画の世界から出てきた綾瀬はるかの存在とリンクしているのがわかっています。「人の心に残ること。それが作品として生まれたものにとっての幸福だ」というテーマを胸に、ドタバタラブファンタジー物語は終焉へと向かいます。

「うん、中々よかったじゃん~。映画ネタあんまり拾えなかったの心残りだな~。映画フリークはたまんねぇんだろうな~。でも俺はそこまでじゃないしな~」なんて思いながら私も観ていました、ええ。




※本当にいいですか? 観ていない人はここで引き返したほうがいいですよ??? まだ間に合いますよ???

※ここから超重大な核心。この作品の肝に触れながら書きますよ!! 







まぁ完全に騙されました。私は。

途中から「なぜこの作品は劇中劇の三重構造である必要があるんだ? 現代、必要か?」なんて思っていました。劇中劇だということを、いいタイミングで思い出させる演出には疑問符が付きました、ええ。

まぁ、これがあるからこそ、この作品は素晴らしくなるのですが……!

思い返すとちょこちょことヒントがあったんですよね。でもそれに最後まで私は気づくことは無かった…。

だって劇中劇も普通に面白かったし。劇中劇だけでも邦画の平均打点は普通に超えてると思います。周りの演技は良いしテンポも良いし、音楽も演出も相まってきちんとクライマックスを迎えてくれるんですもの!(語尾がおかしい)

そこから、この作品の独自にして最高な場面が始まるのですが。


まず病院のシーンで軽く泣きました。最後のワガママのなんと切ないことか。最後に触れて、綾瀬はるかは消えていきます。静かに息を引き取った加藤剛のあたたかさを初めて感じて…… 

ああ、悲恋とはなんとこうもなってしまうのか。切ない、悲しい…


しかし映画はまだ終わらないんですね。劇中劇のラストがまだ終わっていないから……!

そこから坂口健太郎が白黒映画の世界に乗り込んでくるわけですね。この時は、はっきりと劇中劇だとわかるんですね。この作品内で最もフィクションな世界です。そこで出すのは…白黒の世界には無かった、一輪の赤い薔薇。そこから世界が色づき、二人は幸せなキスをして…終幕です。ハッピーエンドを用いた創作物による、運命や逆境への勝利です。

なんだこの美しいエンディングは! 私はまた泣きました。

二人のロマンスが結実した瞬間の演出としても最高だし、劇中劇の締めとしても最高だし…異世界の住人だから結ばれないというジンクスを跳ね除け、薔薇を差し出すシーンはとっても良かった。かつての映画たちへのリスペクトを忘れずに、それでもハッピーエンドをきちんと作ってくる…脚本の人はほんとにすごいと思いました。こんなに美しいエンディングがみられる作品、出会ったことがなかったです。観た人ならわかってくれますよね!

私はとても感動しました。この感動を忘れる前にnoteを書くため、オンライン飲み会をすっぽかすくらいには感動しました。すごい。

綾瀬はるかでないといけなかった理由もなんとなくわかって、時代を感じさせず普遍的に美しいと思われているであろう顔だからだろうな、と思いました。作品を観終わり、この仕掛けを知ったうえで考えると、顔的に、この作品は綾瀬はるかが最もふさわしいと思います。はい。演技は知らない(好みでしょうし)。


創作物って、どうしても「メタ視点」から逃れられないと思うんです。テーマ性や見どころをコンセプトにするとどうしても、それを担保して話を進めないといけなくなるし。特にこの「メタ視点」の点でこの映画には脱帽しました。

「そんな、映画じゃあるまいし」という前提を映画で表現した上で、映画は何を人に提供できるのか? 何を人々に感じさせることができるのか? という視点を突きつめてできた映画なんだろうな、と思います。

世界中の映画をリスペクトし、映画のすばらしさを伝える、とても素敵なファンタジー映画でしたね。


映画ってすばらしい。フィクションってすばらしい。

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