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いつかの記憶、いつかの未来

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フルーツサンド屋「日々果」の日常、4作目。BLです。
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#小説

【BL連載】いつかの記憶、いつかの未来02

   城慧一・1

 歩ちゃんと轍が向かい合って座ると、やっぱり兄妹だな、と思う。背丈も体格も全く違うが、まっすぐな眉や口元がよく似ている。
 さすがに轍と店内で話すことはできず、歩ちゃんは裏口からスタッフルームに入れた。午後の補充も一段落つき、轍が手を離しても大丈夫な時間帯だったのがありがたい。
「日々果って結構いろんなところに載ってるんだね、わたしも見たよ」
 歩ちゃんはテーブルに置かれた雑誌

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【BL連載】いつかの記憶、いつかの未来01

   国吉轍・1

『日々果』から自宅に帰ると、こもった熱気が充満している。リビングダイニングのドアを開けると、西日の熱で蒸された空気に息苦しさをおぼえた。ベランダに続く窓を開け、夜の涼しい空気を部屋に入れこむ。
 俺が扇風機のスイッチをつけると、郵便物を手に慧一がリビングダイニングに入ってきた。
「轍、実家からきてるぞ」
 実家から?
 心当たりがない。
 怪訝に思いながら手を差し出すと、そこに

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