自分にいいこと、してあげる
気分が沈んだ時、落ち込んだ時には、自分にいいことをしてあげる、ようにしている。
落ち込んでしまうときはだいたい、「どうにもならないこと」にぶつかったときだ。どうにかなることなら、何かしらの手を打ったり、他の人に頼ったりしている。
ついつい解決したくなったり、乗り越えたくなったりするけれど、じたばたしても「どうにもならないこと」だってある。
落ち込んでも、落ち込まなくても、どうにもならないことには変わりない。潔く諦められたらかっこいい。でも、そうスパッとも割り切れない。
そんなときには、自分の内側に目を向けすぎずに、外のことに目を向ける。体がシンプルに、「うれしいな」と思ってくれそうなことを、いつもより少し多めにしてあげる。
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例えば、温泉に足を運ぶこと。
湯船に長く浸かっているうちに、体がぽかぽか温まってくる。
裸んぼうの人たちを眺める。おばちゃんたちの世間話に耳を傾ける。小さな子どもづれのお母さんの表情を見てみたり、天井の湯気を眺める。
みんな裸で、いい気持ち。
好きも嫌いも、いいも悪いも、全部洗い流していく。
熱くなってきたら、シャワーで水をかぶる。さっぱりする。
髪を乾かす。湯上がりにお茶を飲む。
こうだったよなぁ、と思う。特別ではない日常。平穏。取るに足らないことで、満ち溢れている。
東京にいたときには銭湯で、山梨にいるときには温泉で。
体まるごと温まって、集中のしすぎは、良くないね、やっぱり、と気づく。沈みそうな心を、湯船にふわっと浮かべる。
そんな気分転換ができるから、タオルと石鹸を持って、お風呂に出かけるのが好きだ。
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例えば、日なたで、コンビニのお弁当を食べてみること。公園や緑のあるところで、温めてもらったお弁当を食べる。
普段、屋外で一人でお弁当を食べることなんて、あまりない。でもあえてベンチを探して、腰をかけてみる。
犬の散歩。工事現場の昼休み。木の影。温めたお弁当は、次第に冷めていくこと。
普段とは違う時間の流れの中に、自分を置いてみる。いつもと違うけれど「いつもどおり」みたいなふりをして。風景の中に馴染んでみる。
アイスも買ってみる。
色とりどりのアイスに目をくるくるさせて、どれにしようかな、と迷う。
食べたいアイスを食べていい。ささやかな喜び。食べたいものを、自分で決められる自由。そういうことを、もう一度自分に、確かめさせてあげる。
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例えば、図書館に行くこと。たくさんの本の中を歩き回って、好きな本を手に取る。拾い読みをする。色んな表現の仕方がある。
図書館は、文字と表紙と文章で溢れていて、カラフルでにぎやかだ。
強い主張。繊細な感覚。流行り。研究。写真。スポーツ、音楽、小説、詩。
触れるも触れないも気分のまま。本を通して、鮮やかな世界に、自由にアクセスできる。
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いつもより早めに布団に入って、ゴロゴロすること。
紅茶にミルクを入れて飲むこと。
玄関を掃除すること。
音楽をきくこと。
いいな、と思った風景の写真を撮ること。
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普段より元気がなくなった心には、いつもよりも多めに、いいことしてあげる。
いいことで、満たしてあげる。
どうにもならないこともあるけれど、自分で決められることだってたくさんある。
そのことに目が向くような場所へ、体を運んでいく。
しばらく甘やかしてあげていたら、だんだんと回復してくる。
ご機嫌になって、また元気な自分に、帰ってこられるように。
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