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山梨での暮らし-風景スケッチ-

ちょうど去年の今ごろ、山梨県に引っ越してきた。

来たばかりの頃は、富士山がすぐ近くに見えることがもの珍しくて、色んな角度からパシャパシャと写真を撮っていた。

この地域では、とうもろこしが特産なのだと聞いて、とうもろこし畑の間を歩いてみたりもした。とうもろこしの葉が風に擦れる音を、やけに大きく感じた。

富士山の写真を日常的には撮らなくなって、とうもろこし畑にも目を留めなくなったなぁ、と思ったら、あっという間に1年が経っていた。

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家の玄関を出るとすぐに、山が見える。森も見える。

今住んでいるところは標高が高いので、春がやってくるのは5月に入ってからだった。

遅い芽吹きが始まったかと思うと、そこからは1日ごとに、新緑が増えていった。葉っぱたちは、あっと驚かせるために、目配せしながら枝の下で息を潜めて待っていたのかな、と思うくらい。

梅雨の時期は、木々に靄がかかっていて、水墨画のように見える。遠くの山は薄く、近くの山ははっきりと。朝の幽玄な雰囲気に包まれると、感受性までしっとりと、しめやかになってくる。

晴れ間が差すと、ぱあっと光が当たって、山肌に陰影が見えてくる。かと思うとすぐに雲がかかって、一気に彩度が下がっていく。空模様も、光の加減も、刻一刻と変わっていくのを見ながら、山の天気の変わりやすさを思う。

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山梨から東京までは、バスで2時間ぐらいで着けるから、週末に東京に出かけることもある。欲しい物をあらかじめメモしておいて、目的地を決めてお店を回るからか、闇雲な買い物が少なくなった。

東京に住んでいたときには、「買い物に行こう」が先にあって、「欲しい物」は、出会ったらその場で買っていた。

今は、「必要なもの」が先にあって、そのために「買い物に行く」ようになった。

普段は、静かに暮らしつつ、日帰りで東京にも行ける。

この距離感が、自分には、合っているのかな、思う。

いつも涼しい場所で暮らしているから、すっかり蒸し暑さを忘れてしまっていた。6月の東京は、蒸し暑かった。夜、山梨に帰ってくると、静けさに包まれて、すうっと癒やされていく。

まるで、蒼い水の中に帰った魚になったみたいだ。

刺激は多くないけれど、自然があって、呼吸がしやすくて。

勉強したり、本を読んだりすることが、割に捗る。

山梨での暮らし、結構いいな、と思っている。

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