100万ボルトの片割れ


鷲津隆芳


時を遡ること10年前。



デビュー1年目。


僕は鷲津の家でバガボンドを読んでいた。


「風俗でも行こかー」


突然、パチンコで大勝ちした鷲津が言い放った。


断れば男が廃る。


『Shall we dance?』


Noを言うなんて無粋だ。


僕は二つ返事で行くと答えた。


僕らはすぐさまネットでお店探しを始めた。


しかしネットでどの店を見ても似たり寄ったりで決めかねていた。


困った僕らはスマホを一旦置いて緊急会議を行った。


「どうせ客引きが声かけてくるから話聞いて一番良さそうなお店へ行こか」という結論が出た。


そして西川口の繁華街へ足を運んだ。


客引きがたくさんいた。


僕らは繁華街のど真ん中を闊歩した。


何事もなく繁華街の端までたどり着いた。



「あれ?全然声かけられなくない?」


僕らは何度も何度も往復した。


「あれ?声かけられないどころか避けられてない?」




こっちは一刻も早く楽しいことしたのにとイライラが募る。


しびれを切らした鷲津が客引きのお兄さんに声をかけた。


「すいません。」


客引きのお兄さんは鷲津を舐めるように見て言った。


「あんた、刑事だろ?」


「???違いますけど。」


鷲津は半笑いで否定した。


「どう見ても刑事じゃねぇかよ、ガサ入れしようしてんだろ?もうキャッチ全員に情報回ってっから。」


客引きに避けられている謎がようやく分かった。


学生時代に柔道で作り上げた身体。
少し冷たい目。
スポーツ刈り。


刑事に見えなくもない。
てかそう言われたら刑事にしか見えない。


どれだけ否定しても疑いは晴れぬまま僕らは帰ることにした。


帰り道、鷲津が夜空を見上げてつぶやいた。


「明日は晴れるかなぁ。」


彼が夜空を見上げていたのは涙がこぼれ落ちないようにだと思う。
多分。



そんな男と100万ボルトというコンビで動いています。
是非ネタを見に劇場に来ていただけるとありがたいです。
お待ちしております。


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