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『スマホ脳』の要旨・感想

 「スマホは有害!」という話が256ページの紙幅を費やして繰り返し主張されている本。今まで漠然と思っていたことを、科学者らしい説得力で諭された感がある。以下、要旨。

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【1章】

・原始時代と現代社会はまったく環境が異なるのに、生物的には人間は原始時代のまま。原始時代は人口の10〜15%が他殺で死んでいた究極の弱肉強食の世界。一方、現代は衣食住の心配が不要で、安全が保たれている。死ぬ心配はほぼゼロ。

【2章】

・ストレスやうつ状態は「戦うか逃げるか」を常に迫られていた原始時代の名残。うつ状態は、周囲が危険で溢れている時にじっと布団にくるまって身を隠し、休む行為と言える。

【3章】

・ドーパミン(人間に行動を起こさせる脳内物質)は不確かなもの、期待感を感じさせるもの、ワクワクさせるものに接触した際に大量に放出される(例:ギャンブル)。快楽を感じさせるもの。

・スマホの着信音には「大事なメッセージかもしれない」という不確かさから”スマホを見たい”という強い欲求を生み出す。FacebookなどのSNSは、「いいね!」の表示されるタイミングを意図的に操作し、利用者のドーパミン(=快楽)を最大化させている。(※この部分は本当かな? と思った)

・スティーブ・ジョブズは自身の子供にスマホを与えなかった。

【4章】

・マルチタスク(=気が散ってさまざまなことに関心が向かうこと)は、周囲に危険が満ち溢れていた原始時代の名残。当時は生存率を高めるために必要だったが、マルチタスクは切り替えにエネルギーがかかり、脳の働きが悪くなる。

・スマホのせいで人間は常にマルチタスク(気が散りやすい状態)に置かれてしまう。ポケットに入っているだけで、集中力を低下させる。

・スクリーン上の文章は、リンクが貼られて色が変わっていたりするが、それも集中力と読解力を低下させる。

・キーボードで書いたメモは、記憶に残らない。手書きは手書きの速度に合わせて脳が情報を咀嚼する時間があるので、記憶に残りやすい。

・写真を撮ると、記憶に残らない。脳は常にラクをしたがるため、「写真で撮っているから記憶しなくていいや」となる。

・食事中のテーブルにスマホを置くと、それだけで食事の満足度が下がる。

【5章】

・スマホが手元にないだけで、現代人は異常なほど不安を感じてしまう。

・スマホのブルーライトは昼間の光と同じで、睡眠を阻害する。

・電子書籍も集中力を低下させる。タブレットという形状がスマホに似ているためかもしれない。

・原始時代の名残で、入眠時は少しずつ近くをオフにしていく必要がある(身の安全を守るため)。

【6章】

・人間は社会的な存在であるため、「悪い噂」を本能的に好む。自分の周囲の人間が危険な人間でないかどうか、常に知っておきたがる。

・「自分のことを話したい」という本能的な欲求をFacebookは満たしてくれるが、一方では、他人との比較によって自信を失い幸福感を低下させることにもつながる。

・カラフルなスマホアプリは、アイコンを見ているだけでドーパミンが出る。twitterやFacebookの画面の仕様は、スロットマシーンに似ている。(※言われてみれば確かに!)

【7章】

・アルコールやタバコなどと同様に、子供ほどスマホに依存しやすい。

・タブレット学習はある程度の年齢以上でないと、効果が薄い。幼稚園児ぐらいは、ペンを握るなど質感を伴うほうが効果的。

【8章】

・たった5分の運動でも、身体に良い効果がある。あらゆる種類の運動に、良い効果がある。

【9章】

・フリン効果(教育水準の向上や社会が複雑化した結果、世代が下るにつれてIQが上昇する傾向)が近代は起きた。だが、スマホの登場でむしろ下がった。

・道路を暗記しているタクシー運転手は、海馬が成長した。Google マップを使っていては、こうした変化は起きない。

・印刷・鉄道・電話などの発明品も、当初は不自然なものとされ、電話は「悪魔の発明」とも言われた。スマホも同じかもしれないが、スマホは24時間ずっと触れ続けている点で、従来の発明品よりも影響が甚大。

・不安や気分の落ち込みは、生存のために本来必要な自然なもの。そうした感情によって、行動する動機も生まれる。一方、喜びや幸福感は生存率アップには結びつかないため、一時的で持続しない。

・SNSで小さな情報をのかけらを集めてばかりいると、大きな情報の塊が頭に入らなくなる。

【10章】

・スマホ=ドラッグと同じ。中毒になってはいけない。

・目覚まし時計や腕時計など、スマホ以外のもので代替できる機能は、極力そっちを使う。

・通知を極力オフにする。画面をモノクロに設定して刺激を減らす。

・スマホを使う時間を決める。

・運動を5分でもいいからする

・SNSはパソコンだけで使う。時間を決めて使う。

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 「スマホはドラッグと同じ」という主張は少々過激とはいえ、うなずける気がした。ツイッターやネットサーフィンをしている時、ついページを更新する手が止まらず、見続けてしまうことがある。現代人はだいたいそうだろう。本書によれば、それはスマホに脳をハッキングされた状態。「スマホ=刺激の強いドラッグ」と見なすことで、スマホを主体的に使えそうな気がした。

 人間の性質や男女の違いなど、何でもかんでも原始時代の名残で説明するのは私はあまり好きではないというか、眉唾っぽい話も多いと感じているが、本書に関してはうなずける点が多かった。とりあえず目覚し時計を買おうと思う。

 ついでに、Twitter上の議論が往々にして罵詈雑言のぶつけ合いになってしまうのは、ひょっとしたらスマホが原因なのかもしれん。あのカラフルでチカチカとしたスクリーンを見ていれば、自然とドーパミンが溢れ出し、興奮状態になる。まったく同じ画面をカラーコピーして紙で見せたら、そこまで興奮しないのかも。

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