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英語教育は早く始めた方がいい?日本語への悪影響は?

早期英語教育の是非


「英語学習は始める時期が早いほど効果的」という考えが広まっている一方、「幼児期の英語教育が日本語の発達に悪影響を与える」という意見が聞かれることがあります。


英語の早期教育が子どもにとって「良い」のか「悪い」のか、親や子どもにとって大問題です。

そこで、幼少期の英語教育の影響についてじっくり考えてみたいと思います。

言語獲得の臨界期仮説

まず、「英語学習は始める時期が早いほど効果的」という主張の根拠を考えてみましょう。

この主張は主に、言語獲得の臨界期仮説を根拠にしています。


臨界期仮説とは、言語を習得するにはそれに適した年齢があり、その年齢を過ぎてしまうと、言語の習得が著しく難しくなるという説です。


言語習得の臨界期は12~15歳頃までだと言われています。

16才以前でアメリカに移住した人はみな高い英語力を身に付けたのに、対し、17才以降で移住すると人によって英語力にばらつきが出るという研究や、英語学習を始めた年齢が早いほど英語力が高い傾向にあるという統計などが、この考えの裏付けになっているようです。


さらに、発音に関係する能力の臨界期はさらに早く、5~6才までの言語環境によって、聞き分けたり発音し分けたりできる音の幅が変わってくるとも言われています。


こう言われると、やっぱり早くから英語教育を始めなくては、と感じる方が多いのではないでしょうか。


ここからは私の個人的な見解です。

英語教育は、早い時期から始めなければいけないわけではないが、早くから始めた方が上達しやすい、と私は思います。


臨界期を過ぎてしまったからといって、絶対に英語が喋れるようにならないというわけではありません。

実際に、幼児期に英語学習を始めていない人でも、きちんと勉強をして英語を使いこなせている人はたくさんいます。

なまりが残ってしまったり、ネイティブほど流暢に話せなかったりする可能性は確かにありますが、コミュニケ―ションに差し支えない程度には、訓練によって上達することができるのです。


一方で、子どもに英語が上手になって欲しいと強く思うのなら、できるだけ早く英語学習を始めた方が良いと思います。

小さい頃から野球を習っていた子どもの方が中学の野球部で活躍しやすく、プロ野球選手になる可能性が高いのと同じように、英語も早くから始めた方が上達の見込みは高く、英語に対する精神的なハードルも下げることができます。

小学校に上がる前は発音や聞き取りに力を入れ、小学校に上がる前後に文字と音を結びつけ、そこからは徐々に語彙と文法を増やしていく、というように、年齢に合わせた学習ができるので、無理なくステップアップしていくことができます。


小さい頃から学習をスタートしたからと言って、必ずネイティブのようになれるわけではありませんが、早く始めるほど上達の可能性は上がるでしょう。

逆に、もう子供が成長してしまったからといって英語教育をあきらめる必要はなく、今からでも英語を教えてみればよいと思います。きちんとした方法で学習すれば、社会で使えるような英語を身に付けることは十分可能です。

ダブルリミテッド問題

「幼児期の英語教育が日本語の発達に悪影響を与える」という意見について考えてみましょう。


英語教育が日本語の発達に悪影響を与えるケースとして、学習言語能力を形成できない場合が挙げられます。


言語能力には2つのレベルがあると言われています。

一つは、日常生活を送るために必要な「生活言語能力」、もう一つは学校での勉強に使われるような、読み・書きの能力や、抽象的な概念を操るための「学習言語能力」です。


ある言語が使われる環境で2年程度過ごすと生活言語能力が身に付き、学習言語能力が身に付くには5~7年程度かかるそうです。


幼い時期に異なる言語環境を移動したり、複数の言語が話される環境で過ごしたりすると、複数の言語において生活言語能力が身に付く一方、インプットが足りないため学習言語能力の獲得が遅れる場合があるそうです。


学習言語能力の獲得が遅れると、学校の授業で同年齢の子どもについていくことができず、結果としてどちらの言語も十分に使いこなせない「ダブルリミテッド」と呼ばれる状態になってしまう場合があります。


これを聞くと、今度はやっぱり幼児期の英語教育は避けた方がいいかもしれないと考える方もいるかもしれません。


ですが、日本で普通の幼稚園・保育園・学校に通いながらであれば、英語教室に通ったり、お家で少し英語にふれる時間を作ったりという程度の英語教育が日本語の発達を阻害する心配はありません。

家庭や学校など、圧倒的に多くの割合を日本語の環境で少していれば、日本語の学習言語能力をきちんと身に付けることができます。


逆に言うと、そういった環境で英語での学習言語能力を同時に身に付けるのはほぼ不可能だと思います。

そのレベルに達するまでには大量のインプットが必要となるため、週1回数時間程度の英語教室などでは到底インプットが足りません。


とはいえ、英語教育がまったくの無駄というわけではありません。幼少期から英語教育を始め、英語が身近な環境で育つと、自然と英語のインプットは増え、生活言語能力獲得の土台となります。

そして、時間はかかりますが、日本語の学習言語能力でサポートする形で英語の能力を引き上げていくことができれば、日本語ネイティブが英語を使いこなすという状況だって作ることができるのです。


そうではなく、日本語も英語もどちらもネイティブ並みに喋れるバイリンガルを育てたい、と思っている場合は、注意が必要かもしれません。


家庭で英語のみを使ったり、日本語禁止のインターナショナルスクールに通わせたりすることで、どちらの言語もインプットの量が中途半端になってしまうと、学習言語能力を獲得できず、その後の学習の大きな足枷となってしまいます。


子どもを思うがあまり、子どもに大変な想いをさせないよう、じっくり考え、少なくともどちらかの学習言語能力を適切な時期に獲得できる環境を確保してあげる必要があるでしょう。

まとめ

長くなりましたので、最後に少しまとめをします。


「英語学習は始める時期が早いほど効果的」という説について、おおむね事実と言えます。どうしても子どもに英語が上手になってもらいたいと思うのなら早く始めるに越したことはないでしょう。

但し、学習開始が遅いと英語は身に付かないというわけではありません。もう遅いと諦めることはありませんし、英語教育より優先させたいことがあるのなら、それを捨ててまで英語教育を行う必要はないでしょう。


「幼児期の英語教育が日本語の発達に悪影響を与える」という説に関して、日本で一般的な生活を送っている限り、気にする必要はほとんどありません。但し、子どもをバイリンガルにしたいと思っている方、複数の国で生活する家族などは真剣に考えて環境を整えるべきでしょう。


最後に、幼少期に周りの大人からたくさん話しかけられて育った子どもほど、その後の人生を豊かに過ごしやすいという統計があります。

英語教育を早くから始めるにせよ、そうでないにせよ、日本語で子どもにたくさん話しかけてあげることは、親として忘れずに心がけてもらいたいものです。

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