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【復刻版】英・仏現地取材 原子炉のゴミ「死の灰」の行方 【第2回 セラフィールドから湖水地方に放射能汚染】

【この記事は復刻電子版です。最新の記事・情報ではありません】1995年に取材。集英社・週刊プレイボーイで連載した記事を編集しました。

先生、どうして教えてあげないの?

ここはイングランド北部・カンブリアの湖水地方。英国の詩人ワーズワースや『ピーターラビットのおはなし』など優れた童話を書いた作家ビアトリクス・ポターの出身地である。このイングランドで最も美しい森と湖を見ながら、私たちは海に向かって走っていた。

なだらかな山の稜線を越えると視界が開けて、アイリッシュ海が見えた。海の手前には巨大な建造物が見える。広い敷地、高い煙突、コンクリートの建物が点在する施設−−−−。

湖水地方で「ピーターラビットの故郷はどこですか?』と聞くと、人々は優しい笑顔で場所を教えてくれる。しかし、この巨大な施設の場所を尋ねると英国人たちは複雑な心境になる。
世界の子供たちに夢と希望を与えた童話の里と、海岸に沿って建つ巨大な施設はきわめて対照的な存在だ。

『ピーターラビット』の絵本と自然保護は英国の文化的な誇りであり、また、このセラフィールド核施設は英国の科学技術の成果なのである。

私たちはセラフィールド核施設を目指していた。海への視界を妨げる高い煙突を目標に走ると、やがてセラフィールド核施設の正門に到着した。しかし、この門から中には入れない。どの国の原子力施設もそうだが、入口の警備は厳重である。

実は、私たちは事前に英国核燃料公社に取材の申し込みをしていた。公社の回答は「取材はお断りします」だった。拒否理由の説明もなかった。

正門では警備員の視線が厳しいので、施設とは別の敷地にあるビジターセンターに向かった。ビジターセンターは訪問者でいっぱいだった。施設の展示説明の部屋と喫茶室にいる見学者たちは真剣そのもの。観光客とは明らかに違う目で展示物を見ている。

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