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【#25 才能】 未来(いつかは)、どうしてる?

ぼくはね、こんな身体いらないし、こんな心もいらない。
ネガティブなことばかり考えるし、それでいて何かをする気にもならない。
憂鬱を、誰かに吐き出したって励まされたり、名言めいた借り物の言葉をぶつけられたり、怒られたりするばかりで、結局そんなことはそんな誰かを気持ち良くさせるための存在に成り下がってるだけでしかない。
生まれた価値がない、なんて言葉は親はもちろん先生だって、よく知らない他のクラス子にだって言われてきたし、SNSでも引用されて晒されたこともある。
別にね、死んでしまってもいいんだよ。ぼくなんて。でも、生きてる。
いらないのに、こんなにぼくを取り巻くすべての時間がいらないのに。

(しらないよ。そんなこと)

ぼくはね、みんなから嫌われていて、なんの価値もない人間なんだ。

(それは、きみがみんなのことを嫌っているからだよ)

どっちが先でもいいよ。ぼくは嫌いで、嫌われているんだ。

(ほんとは、みんなに好かれて、みんなのことが好きになりたいのに)

ぼくは、こんなぼくのことを好きになるやつなんて気持ち悪くて嫌いだね。

(残念だね。もっと昔なら、価値がないって思い込んだまま死ねたかもしれないのにね)

なんで、20年も生きてから才能を発見する検査が出来るようになっちゃったんだよ。くだらないよ。余計なお世話だよ。いまさら、いまさら生きる価値なんて見つけないでよ。

(でもきみは、人を幸せにできちゃうんだ。きみの親も、先生も、よく知らない他のクラスの子たちも、みんなかわいそうだね)

こんなにも世界を恨んでいるのに、絶望すらさせてくれないなんて。ひどい。ひどすぎる。

(悲劇の主人公はもういない。ここまでは幸せにする人の前フリにしかならない)

いまさら誰かに感謝されたって、好きだって言われたって、愛してるって言われたって、ぼくはぼくがかけて欲しかった言葉がもらえなかったあの頃には戻れないし、隕石が落ちてきたみたいに凹んだ心のボコボコは、何を上塗りしても穴が空いた跡は消えないよ。
空を見上げた時、ふとトイレに入った時、夜寝ようと目を閉じた瞬間、ぼくはぼくの心についた跡をそっとなぞる癖をやめられないよ。

(きみの絶望はきみだけのものだけど、きみが与える幸せもきみだけのものだ)

ねえ、本当に才能を発見する検査なんて生まれて意味があったのかい。

(しらないよ。けど、きみはいま自分が人を幸せにすることを受け入れはじめてる。それでじゅうぶんさ)

いまは絶対にありがとうなんて言わないよ。

(うん)

恨むかもしれない。

(うん、がんばれ)


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