作品「地べた」


地べた           
 
 
奈良は
まだ
地べたが多い
手つかずの自然が
そのままに
ある
地面の表情が
じかに
見てとれる
人と同じで
くるくると
顔色を変える
長雨の日は
水たまりをあちこち作る
凍える日は
すすっと霜柱をこしらえる
たまらなく暑い日には
強い根っこを育てる
雨上がりには
湯気をしゅううと上げる
時々
庭の地べたに寝ころんでみる
顔を 空に向け
背中は 地べた
空は 
いつも 
よそよそしげに
遠ざかっていく
地べたは 
なぜか 
親しく 
重い
横になっていると
大切なものを
吸い取られたように
動けなくなり
ぼくは 
そのまま
今日を
地べたに
ゆだねることにした
 






『歩きながらはじまること』(七月堂)
『朝のはじまり』(BOOLORE)
 

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