物書堂の辞書アプリはこれを買え:③英英辞書編【2020年春セール対応版】
この記事では、iOSの超便利な辞書アプリ「辞書 by 物書堂」で購入できる英英辞書3種(+α)を紹介します。
なお、主なターゲット読者は「英英辞書に興味を持っているが、それぞれの性格がわからず、どれを買うべきか迷っている」という人です。
例によって長文です。せめて最初の2つ〈OALD〉〈コウビルド〉の説明までひとまずお付き合いください。
【記事の要旨】
●英英辞書には「学習英英」と「一般英英」がある。性格が大きく違う。
●学習英英辞書は語釈がやさしいので非ネイティブでも読みやすく、文型の情報があり語学向き。
学習英英のうち〈OALD〉は比較的オーソドックスな作り。
もうひとつの学習英英〈コウビルド〉はやや癖がある。癖がありつつも(日本人に)使いやすいのは〈コウビルド英英和〉。
●一般英英〈Collins〉は、ある程度デキる人がさらに英語力を伸ばすために。
●大は小を兼ねないったら兼ねない。
📚5/21まで辞書が安い!!!
春……それは辞書を買うのに最適な季節(何度でも言う)。
現在、アプリデベロッパーの物書堂が毎春恒例のセールを開催しており、「辞書 by 物書堂」上で買える辞書コンテンツ30種以上が最大50%オフと大変お買い得となっています。
第3回は英英辞書、つまり英語を英語で説明する辞書の紹介です。
▽
📚学習英英と一般英英の違いとは?
「②英和辞書編」で分類したように、英語辞書には「学習者向け」と「一般向け」の2つの性格があります。分類図を再掲します。
今回取り上げるのは下段の3つです。英英辞書でも、学習/一般の違いは歴然としており、その分類を意識しないでは自分にふさわしい辞書はけっして選べません。
そこでまずは、学習英英と一般英英の違いを明らかにします。
▽
▽
▽
🖋クイズでわかる学習英英と一般英英
突然ですが「ズッキーニ」をしましょう。辞書の語釈(語の意味)から、それが何の項目かを当てるクイズです。まずは日本語で、〈新明解国語辞典〉第7版から練習問題。
🥒
カボチャの一種。実の形はキュウリに似て、果実は濃緑色や黄色。若い実や花を西洋料理に用いる。
これ、なーんだ?
そうです、「ズッキーニ」の説明です。簡単、簡単(?)。
では問題。
分類図の右下、一般英英〈Collins〉に収録された、ある項目の語釈を出します。何の説明か推理してみてください。英英辞書ですから、当然英文です。
🥒
1. any insectivorous anuran amphibian of the family Ranidae, such as Rana temporaria of Europe, having a short squat tailless body with a moist smooth skin and very long hind legs specialized for hopping
これ、なーんだ?
ええ、クソ難しいですね。推理どころか、文中の語が難解で意味すら取れないよ!という方もあるでしょう。(かく言う私だってanuranやtemporariaなんて辞書なしでは無理です。)
でも、これは皆さんが絶対に知っている何かの説明です。
▽
ひとつめの辞書でわからなかったらどうする? ふたつめの辞書に助けを求めるのです。学習英英〈OALD〉(分類図の左下、左寄り)ではどうか?
🥒
1 a small animal with smooth skin, that lives both on land and in water (= is an amphibian) . ████s have very long back legs for jumping, and no tail.
※文中で見出し語(=答え)が登場する箇所は伏せ字にしました。
どうでしょうか。うってかわって読みやすい文章。「わかった」とうなずく人も多いはず。
別の学習英英〈コウビルド〉(図の左下、中央寄り)も読んでみます。
🥒
A ████ is a small creature with smooth skin, big eyes, and long back legs which it uses for jumping. ████s usually live near water.
もう間違いありませんね。
答えはfrog……カエルの説明です。
そして、いま実感された語釈の難易度の差が、学習英英と一般英英の性格の違いを如実に表しているのです。
では、「辞書 by 物書堂」で使える2つの学習英英辞書から取り上げていきましょう。
Q. 〈Collins〉ってムズすぎない? 大丈夫?
A. いささか極端な例を出しました。他の語釈は記事後半で紹介しています。
▽
🖋学習英英はやさしさでできている
学習英英辞書の説明がすらすら頭に入ってくるのは、文中の単語がやさしいから。語釈に使うことば(=定義語彙)を限定することで、難しくならないよう配慮しています。英語が母語でなくとも読める所以です。
改めて、学習英英〈Oxford Advanced Learner’s Dictionary〉(以下〈OALD〉)と、〈Collins COBUILD Advanced Leaner’s Dictionary〉(以下〈コウビルド〉)の「frog」を眺めます。
〈OALD〉が説明に用いるのは基礎的な英単語3000語、〈コウビルド〉は2500語のみです。
上の〈OALD〉はさりげなくamphibianの解説を挟んでいます。勉強向けの辞書らしい、ついでに語彙が増やせる工夫ですね。
Q. その3000語とか2500語のリストって使い道がありそうだけど、どっかで見れないの。
A. はい、〈OALD〉の用いる「Oxford 3000」という単語リストはネットにあります。アプリ内の「付録」からも一覧することが可能です。〈コウビルド〉の方も「付録」で確認できます。
▽
▽
▽
📚学習英英の語釈を比較する
〈OALD〉と〈コウビルド〉の検討をいま少し進めます。英和辞書のときと同様、動詞「tell」を例に。
🖋〈OALD〉のシンプルな語釈
※「学習英英ならでは」の情報は、注釈を緑色で付与。以降も同じ。
「give information」という下線付きの見出しがあります(この下にも複数)。見出しは意味を簡潔に示しており、多義語で「自分が探している語義はどれか」を見つけるのに便利なしくみです。いちいち語釈まで目を通すのは大変ですからね。
見ての通り語釈はシンプルですが、選択制限(何がその動詞の主語になれるか、何が目的語になれるか、といった制約)の情報もついていて、作文に重宝しそうです。
その下に並ぶのが主要な文型(太字)と例文(斜体)。文型は「tell something to somebody」「tell somebody something」など平易な形で提示されます。
なお、〈OALD〉の特長として、見出し語も例文もすべて、イギリス式・アメリカ式両方の発音が聴けます。語釈末尾には語源の情報も。
Q. 英語辞書なのに「語釈」? 「定義」じゃなくて?
A. 詳しい人が来ちゃったな。「見出し語の意味を解説する文=語釈」で統一しています。「定義」って用語には少々語弊もあったりするので。
▽
🖋〈コウビルド〉の独特な語釈方式
一方の〈コウビルド〉は?
レイアウト的にぎゅっと詰まった感じ。特筆すべきは意味記述のやり方です。語釈の1行目を取り出します。
If you tell someone something, you give them information.
〈OALD〉なら「to give information to somebody by speaking or writing」と、意味の部分だけ示すところで、〈コウビルド〉は説明したい語そのものを前半部に組み入れた文章によって、後半部で意味と使い方を説く、という方法を採ります。
じつはif節の前半部もさりげなく重要な役割を果たしています。tellの主語は「you(誰か)」になる、目的語に「誰かに」「何かを」をとる、といった選択制限の情報が盛り込まれているからです。
「誰かに何かをtellするって言ったら、その誰かに情報を与える、ってことになるかな」と先生が教えてくれるような趣があります。
Q. 文型のVとかn、to-inf、pron-reflとかって何?
A. 動詞、名詞、to不定詞、再帰代名詞、の略です。文型が[V n that]ならば、間接目的語に名詞、直接目的語にthat節を取る、というわけです。慣れてしまえば、記号の方がぱっと頭に入ってくるかも?
▽
文章による語釈は、主語や目的語に何がくるかを具体的に、語るように解説します。
こうした形式がお好きなら、購入を検討してもよさそうです。
▽
🖋〈コウビルド〉の独自な配列方式
もうひとつ、〈コウビルド〉の重大な特徴を紹介せねばなりません。
先に〈OALD〉から、「record」を引きます。同辞書では2項目に分かれます。並べます。
違いはおわかりですね。左は先頭にnoun、つまり「名詞のrecord=記録」。右はverbですから「動詞のrecord=~を記録する」です。品詞で項目を分けています。
▽
かたや〈コウビルド〉です。こちらは、綴りの同じ語は1項目にまとめるのですが……語義区分を示す数字に続く品詞表示に注目してください。
N-COUNT、VERBとありますから、[1]は可算名詞「記録」、[2][3]はそれぞれ動詞「~を記録する」「~を録音・録画する」とわかります。このあと[4]も動詞になっています。
Q. ははーん、〈コウビルド〉は1項目にまとめた中で、品詞ごとに固めるのね?
……と結論を急ぐ前に、下にスクロールして[5]以降を確かめましょう。
……? [4]まで、名詞・動詞・動詞・動詞と順当。ところが[5]がまた可算名詞、[6]はまた動詞、[7]がみたび可算名詞、[8]が形容詞、[9]がさらに可算名詞。品詞がばらばらです。無政府状態か?
驚くなかれ、これが秩序立った配列なのです。〈コウビルド〉は語義の頻度のみに頼って語義の順序を決めています。数十億語からなる膨大な英文データベース(コーパス)を分析し、「その語」の「その意味」が何回出てきたか、使われた数を重要度と考え、多いものから順に並べているわけです。
Q. 何の頻度が……何だって?
A. ええと、要するに〝みんな(英語話者)が「record」と言うときに一番よくあるケースは名詞「記録」としての意味だから、一番よくあるやつを真っ先に説明してる〟みたいな感じです。
で、〈コウビルド〉が<すごい/えらい/やばい>のは、この「フルセンテンス式の語釈」と「頻度順の配列」を、成句などでも貫いた点です。「record」のさらに続きへとスクロールしてみます。
for the record(2種類)や、off the recordという成句の説明が、上で見た「record単体の語義」と全く同列に並びます。徹底的。
でも、これで自分の欲しい意味がパッと見分けられるかというと、ちょっと疑問符がつくのは確かです。
▽
〈OALD〉の成句は、リストにまとまっています。説明は不要でしょう。
Q. さっきから英単語の前に変なちょんちょんがついてない? バグ?
A. アクセントです。「'」が第1強勢、「,」が第2強勢です。
▽
そろそろはっきり申し上げてよかろうと思いますが、英和辞書で慣れ親しんだ感覚のままに英英辞書を繰りたいのであれば、選ぶべきは〈OALD〉です。
〈コウビルド〉は慣れが必要です。また、項目の設計から考えて、〈コウビルド〉は「引く」より「読むための辞書」と考えた方がよいでしょう。
Q. どうにか〈コウビルド〉を引きやすくできないの。
A. おっと、記事の最後まで読んでください。
Q. 最初の2つだけ読んで、って言ってなかったか……。
A. ……じゃあ、記事の最後“を”読んでください。
▽
▽
▽
🖋類語なら〈OALD〉
このほかの機能としては、〈OALD〉は類語やその使い分け指南に文字数をかなり割いています。tellの類語、tellとsayの使い分けを示したコーナーはそれぞれこんなふうになっています。
うーん、親切。
類語欄は〈コウビルド〉にもありますが……。
簡素なリストにとどめています。
Q. 〈コウビルド〉で使い分けを知りたい場合は?
A. リストにはないので……リスト中の語句に飛んで、語釈を自分で読み比べてください、ということですね。
▽
ついでに記しておきますと、類語を知りたい「辞書 by 物書堂」ユーザ向けには他に〈小学館 オックスフォード英語類語辞典〉があります。類語専門の辞書とあって使い分けも詳細。説明が日本語なのもうれしいポイントです。詳述は省きますが、参考用に「tell」の項目の一部を貼っておきます。
見ての通り、この辞書も便利です。
Q. また買わせようとしているな。
A. 今更何を言っているんだ。
▽
▽
▽
📚学習英英まとめ
〈OALD〉〈コウビルド〉は、やさしい語で意味を記述し、語法も説明する学習英英だという点で共通です。しかし、情報の伝え方には実に大きな差があります。
▽
〈オックスフォード現代英英辞典(第10版)〉
通常3,920円→🎁セール中2,700円
〈OALD〉は、平明な書きぶりで親しみやすい学習英英です。類語を学び、その書き分けを理解するにも適しています。特段のこだわりがなければ、〈OALD〉を選ぶのが無難だと思います。
版元ページはこちら。第10版は2020年1月に出たばかりの最新版です。
▽
〈コウビルド英英辞典(第9版)〉
通常2,320円→🎁セール中1,220円
〈コウビルド〉は独自路線。洋書に出てきた知らない英単語をサッと引いてサッと次に進む、といった使い方では、真価を発揮させづらい。それより一旦本を置いて腰を据え、項目を上から読んでその英単語を学ぶ……というほうが、価値を引き出せそうです。
第9版は2018年発売で、こちらも割合に新しい。(版元ページは見当たりませんでした。)
▽
実は、〈OALD〉〈コウビルド〉ともオンラインで引くことができます。何と無料!
「操作性(反応)のよさ」「他の辞書との連携」の観点からすると、お金を払ってでもアプリに入れておく方が断然使いやすいと考えます。とは言え、まずネットで試して、自分との相性を確かめてみるのも悪くないですね。
Q. 〈コウビルド〉って、ストアにいっぱいあるような……。
A. 〈コウビルド英英辞典(第9版)〉のほか、〈コウビルド英英辞典(米語版 第2版)〉〈コウビルド英英和辞典(米語版)〉〈柯林斯 COBUILD 高级英汉双解词典〉があります。ややこしいですね……記事の最後でまとめて解説します。
▽
▽
▽
📚一般英英辞書〈Collins〉のそっけなさ
お次は一般英英辞書です。「辞書 by 物書堂」上では〈コリンズ英語辞典 + シソーラス〉が提供されており、この〈コリンズ英語辞典〉(以下〈Collins〉)が一般英英に当たります。
学習英英で比較した「tell」は、〈Collins〉だとどうか?
すべての語釈が1行。そして例文もほぼ1行。実にシンプルです。冒頭のクイズでびびらせてしまいましたが、すべての語釈が難解なわけではありません。
文法上の指示もあり、例えば1.では「when tr,...」と括弧書きがついています。読み下すと「他動詞(=tr)のときは、目的語に節をとれる」。しかし学習英英の方が丁寧ですし、説明を短く切り詰めているため、そもそも英文に慣れていない人には読みにくい可能性があります。
〈Collins〉の語釈はよく言えば端的、悪く言えば不親切です。
もし英文を書こうとするのであれば、文型や語法の情報は詳しい方がいいはず。英作文のための辞書ならば〈Collins〉よりも学習英英から選ぶべきでしょう。
Q. 〈Collins〉もイギリス音声だけ?
A. そうです。しかも、〈コウビルド〉と流れる音声が全く同じです。2つの辞書は出版社が同じなので、データを使い回しているようですね。
▽
🖋〈Collins〉のキャラクターを読み解く
一般英英〈Collins〉の、語釈以外の特長を挙げていきます。
👉 たくさんの項目を載せる
「②英和辞書編」で、一般英和は項目数の多さが売りだと述べました。一般英英でもその点は同じです。〈Collins〉の収録項目数は22万3000項目。学習英英〈OALD〉の6万2000、〈コウビルド〉の4万6000と比べると破格です。
「word」で始まる項目がいくつあるか? 小さい〈コウビルド〉と、〈Collins〉の前方一致検索結果を並べます。
学習英英の〈コウビルド〉は12項目。一般英英〈Collins〉では47項目。項目数にかけては後者の圧勝です。
Q. 一般の、英英じゃなくて英和の方ってどれくらいあるんだっけ?
A. 一般英和は〈ランダムハウス〉〈リーダーズ + リーダーズ・プラス〉ともそれぞれ32万項目でした。一般英和の方が〈Collins〉よりでかいですね。
▽
👉 モノの説明が詳しい
「一般向け英英辞書」とは、「英語を母語とする大人にとっての国語辞書」です。学習英英が自らに課していた「2500~3000語の語彙で説明しきる」という縛りは、一般英英にはありません。
結果、詳しく精確な説明の副作用として、非母語話者にはしんどい文章も見受けられます。一般英英〈Collins〉の「frog」を再び引きます。
やっぱり難解……そして、生物分類に関しては、そもそも学習英英になかった記述です。「①国語辞書編」で見た〈大辞林〉〈精選日国〉の「桜」のようですね。
言い換えると、〈Collins〉では、とくに具体的なモノの記述は百科事典的な書き方がしてあります。難しい内容を難しく説くのですから、「知らないモノ」の意味を一般英英で理解しようとするのはなかなか大変でしょう。
しかし、「知っているモノ」を一般英英で引いてみれば、それ自体の理解が深まるのはもちろん、語釈の中で関連語に触れられるというメリットがあります。例えば、「食べ物」や「鉄」とは何か、日本語で思い浮かべてから英英辞書を引くと……。
参考になる表現が見つかり、学習英英とはまた違った意味で身になります。こうした使い方をする場合には、引こうとするモノを国語辞書で下調べしておいたり、英和辞書を駆使して語釈を読解することも、また有効です。
なお、〈Collins〉には〈OALD〉同様に語源欄があります。
Q. 〈大辞林〉だと「文化」なんかも百科事典的だったけど、そういう項目は?
A. 〈Collins〉、コトの説明は何故か詳しくないんですよね。「culture」や「politics」「human」を引いても学習英英と語釈に大きな違いは見えません。
▽
👉 圧倒的な類義表現の充実さ
物書堂アプリの〈Collins〉は、シソーラス(類語集)である『Collins Thesaurus of the English Language Complete & Unabridged 3rd edition』と抱き合わせで販売されています。〈Collins〉で「tell」を引けばシームレスに長大な類義語・反意語リストへ突入します。
下が見切れていますが、盛りだくさんのリストの末尾には「tell on someone」「tell someone off」など若干数の成句も言い換えを用意。「類義語・反意語をまとめて覚えたい」「英作文用になるべく多くの類義語を知りたい」なんて需要に応えてくれるはず。
細かい使い分けは書いておらず、その点は〈OALD〉に一歩、〈オックスフォード英語類語〉に20歩ほど譲ります。しかし、類語の物量が欲しければ〈Collins〉です。
▽
〈Collins〉の特徴をおさらいします。
「語釈が難しく、語釈自体が語彙を広げる手がかりになる」「文型は手薄」「項目数が多い」「膨大な類語が学べる」……〈Collins〉は、ある程度英語を運用できる人が、(学習英和・英英などと組み合わせながら)語彙力の増強のために使うのが効果的だと言えるのではないでしょうか。
▽
〈コリンズ英語辞典+シソーラス〉 860円
セールじゃなくても安い。とりあえず買ったらいいと思うんですよ。
版元ページはこちら。(書籍版シソーラスの版元ページは見つかりませんでした。)
なお、書籍の『Collins English Dictionary』は13th editionが2018年に出ています。また、〈コウビルド〉同様に〈Collins English Dictionary〉と〈Collins English Thesaurus〉もそれぞれオンラインで引けます。
▽
▽
▽
📚その他の英英辞書
ここからは、ちょっと特殊な英英辞書たちの出番です。左から行きます。
▽
📚論文を書くための〈アカデミック英英〉
英語で論文などを書く人のための辞書です。
英語で論文などを書く機会のない人は、買う必要がありません。
〈OALD〉が7万6000項目に対して、〈オックスフォード アカデミック英英辞典〉は2万3000項目しかありません。読解用には不利です。
ですが、この辞書にはアカデミックライティングに役立つ工夫が詰まっています。
アドバンテージのひとつは例文です。左に〈アカデミック英英〉、右に〈OALD〉の動詞「record」を並べて比較します。
画面デザインの違いを無視して語釈を読むと、いずれも「to keep a permanent account of ...」で同じです。
しかし、「record sth(something)」以下の例文はまるで異なり、〈アカデミック英英〉では「データの生成および記録を行うよく試された手法がある」「被面接者の文書による同意を条件として、すべての面接調査は記録され、文章に書き起こされた」など、まさにアカデミックな文ばかりです。
コロケーションの紹介も、論文に出てきそうな表現に特化。
英語でのレポート作成にもってこいですね。
さらに、付録「Oxford Academic Writing Tutor」はアカデミックライティングの作法をイチから教えてくれます。
全48ページのこの付録はPDFとしてエクスポートも可能です(右上のボタン)。
▽
〈オックスフォード アカデミック英英辞典〉
通常3,680円→🎁セール中2,440円
英語で論文などを書く人のための辞書なのです。
版元ページはこちら。
▽
▽
▽
📚意外と違うコウビルドファミリーの性格
既に最もスタンダードな〈コウビルド〉をご紹介しました。物書堂で買える〈コウビルド〉は他に3種があります。見やすいように書名を整理して挙げます(※ストアでの販売名と異なります)。
🃏〈英英 米語版第2版〉
🎴〈英英和 米語版〉
🀄〈英英中 米語版〉
どれもベースは学習英英〈コウビルド英英〉なので、「やさしい語釈」「フルセンテンス式の語釈」「頻度順の配列」といった設計上の原則は同じです。
▽
🃏〈コウビルド英英辞典 (米語版 第2版)〉
〈米語版〉は、元々の〈コウビルド〉と比べると次のような点で異なります。
👉 内容がちょっと少ない。‥‥項目や例文がなかったり、多義語で一部の語義が削除されたりしています。推測ですが、イギリスでしか通じない語や意味を削ったのではないか。項目数で言えば6000項目(13%)減です。
👉 内容がちょっとアメリカ寄り。‥‥でも元のブリティッシュな〈コウビルド〉だって、「elevator」も「cellphone」も「popsicle」も(※いずれもアメリカ英語)載せます。〈米語版〉ならではの項目・語義もあるにはあるのですが、言うほど変わらない気がします。
つまり、「アメリカ英語の情報がてんこ盛りに足された」と考えると間違いで、「イギリス色を多少脱臭して、アメリカのフレーバーをまぶした」ものではなかろうか、と思うのです。
👉 文型情報がだいぶ乏しい。‥‥学習辞書として見たときに問題になるのはここです。「tell」で比較してみましょう。左が元々の〈コウビルド〉、右が〈米語版〉です。
[V n that]、[V n wh]といった文型情報がありません。例文も少ないですね。
「少ない」「足らない」と言いたい放題言ってきました。ですが、これをベースにした次の〈英英和〉は実に見どころのある辞書です。
▽
🎴〈コウビルド英英和辞典(米語版)〉
〈米語版〉をもとに、語義には簡単な訳、例文には全訳をつけた〈英英和〉。
さてお待たせしました。
引きやすい〈コウビルド〉は〈英英和〉です!
数千字ほど前に、〈コウビルド〉を引くには癖のある配列がネックだと申し上げました。しかし〈英英和〉ならば、語義の和訳がいい目印になって項目探しが捗るのです!
左に通常の〈コウビルド〉、右に〈英英和〉の「great」を並べてみます。
はたして和訳つきのメリットは一目瞭然です。日本語を頼りに、欲しい意味をさっと探し、それから英語の語釈を読み始められる。「引く辞書」の役目を果たす作りになっています。
例文に追加された和訳も見逃せません。〈コウビルド〉の例文は実例をそのまま抜き出していますが、言い換えれば、学習者向けにアク抜きされていません。
上の「great」の場合、「bay window」「live to a great age」に対訳があって悩まずに済むのはありがたい部分ではないでしょうか? また、「A nation must take certain risks to achieve greatness.」が「偉大な国になるためには……」と訳し下されていますが、こうして(短い語句単位でなく)文単位で例文と訳を対比できると勉強になりますよね。
確かに見出し語は2万3000と少ない。〈コウビルド〉の半分です。
けれど、その少なさを補って余りある実用性という魅力が〈英英和〉には、あります。
Q. じゃあ、〈コウビルド英英和〉は英和辞書として使える?
A. うーん、難しいかも。英和辞書に何を求めているかにもよりますが、語義の訳語はあくまでも簡易な対訳にすぎません。〈英英和〉の真髄はやはり英語で書かれた語釈と例文であると言うべきです。
▽
🀄〈柯林斯 COBUILD 高级英汉双解词典〉
勝手ながら〈英英中〉と呼ばせてもらいます。あいにく中国語はできませんのでごく簡単な紹介に留めておきますけれども、〈英英中〉は〈英英和〉と設計を同じくするようです。
対比すると〈英英和〉の日本語部分がそっくり中国語に置き換わったのが〈英英中〉なのは明らかです。したがって、中国語話者の人から見て意味が探しやすい・例文が使いやすい〈コウビルド〉になっているものと思われます。
〈英英和〉を英和辞書扱いするのは難しいだろうと言った手前、〈英英中〉に英中辞書の用をさせることも同様に厳しいと考えざるを得ません。
▽
〈コウビルド英英和辞典(米語版)〉
通常1,960円→🎁セール中1,220円
皆さん〈英英和〉を買われることと存じますので、〈英英和〉だけリンクしておきます(強引)。
(版元ページはありません。)
▽
▽
▽
📚参考文献(読むべし)
旺文社が〈OALD〉の活用ガイドをネットで無料公開しています。日本で販売されている〈OALD〉(の1つ前の版)の付録なので、〈OALD〉を念頭に置いた内容です。
されど同時に、学習英英辞書を使うそもそもの意義や、辞書引きの手順を分解して検索技術を上げる実践演習、英英辞書を実際にライティングやスピーキングに活かしていく方法など、〈OALD〉以外の英英辞書にも応用できる、極めて有用な解説が詰まっています。必読です。
▽
「辞書 by 物書堂」で利用可能な英英辞書をご紹介してきました。賢明なる読者諸氏は、ここまで読んだからには既に全7コンテンツを購入済みのことと信じていますが、上記に述べたような性格を念頭に辞書を引き分け、より充実した辞書ライフをどうかお送りください。
▽
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?