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雑記⑩:サヨナラに酒を勧める話

雑記⑨は一昨日書いたものの、読み返して「これは2025年になるまでは公開できないな……」と思ったため封印した。2025年に予約投稿しているわけでもなく、結局のところ公開しない可能性が高い。雑記③-2に続き、2つ目の欠番となる。そんなわけで今日は⑩。


おそらく昨日、久しぶりに明確な"別れ"を体験した。
何が起こるか分からないので、日常時から「この人と会うことはもう二度とないのかもしれない」を頭の片隅に置いて人と接していることが多いが、それが片隅でなく中央に来るような、場が"別れ"の雰囲気を纏っているようなことが、稀にある。高校の卒業式などが最たる例だ。

「誰」という話はさておき、別れの場は別段湿っぽくならなかった。そもそも予想されていた会話のトピック自体湿っぽくなるものではなかったのだが、僕側がろくでもないがゆえに場を湿っぽくしてしまう懸念があり、終わってみればまぁセーフだった(?)、という話である。
うまい酒を飲み、うまい飯を食い、うまい酒を飲んだため、自分も少々、相手はそれなりに気持ちよくフラフラになっていたからだと思っている。本当に良い店だった。


僕はお酒を飲んで会話するのが好きだ。これは、そもそも会話が好きで、お酒が入ることで「会話内容について、ある程度の適当さが場の全員に了解され、普段恥ずかしかったりして言えないことが言いやすくなる」、つまり会話がしやすくなるから好きなんだと思う。
お酒の場での会話は、お酒が入っていない場での会話と同じくらい覚えている。もともと忘れっぽいのでどちらも等しく忘れてしまうことが多々あるが、「酒のせいで記憶が薄いな」と思ったことは今のところない。(が、相手が「お酒の席だからこんなこと言っても忘れてくれるだろう」と思って話してくれていそうなことに関しては、やんわりと意識的に忘れるように、というか、意識的に覚えることはしない、くらいにしている。)

付随的に、お酒そのものも好きになった。良いお酒は良い空間を作る。
特に日本酒が好きだ。銘柄ごとに味が様々あって外見や名前だけでは容易に想像しづらいので、日本酒を飲むときは大抵の人が一度、会話を止めてお酒に向き合い、「お酒を飲んでいること」に自覚的になる。そしてお酒の場における、上記の「適当さ」の了解がなされる。あとウマい。この日飲んだ酒で一番ウマかったのは「新政」、一番面白かったのは「木陰の魚」。

酒の席の雰囲気は、飲む酒によって決定される部分が一定量ある。
その場の酒が全て瓶ビールであれば「今日は大騒ぎするんだな!」と思うし、酒が全てそれなりに良い日本酒であれば「今日は酒を肴に話すんだな」みたいなことを思う。
この感覚の中身は人それぞれ違うものだと思うが、「酒次第で雰囲気が変わる」という一点だけは、多くの酒飲みに共感してもらえるんじゃないだろうか。


今日は、場に適した酒が提供されていたと思う。お互い飲みたいものをグラスで頼み、「これはおいしいんですよ~本当に」「これ良いお酒ですね」などと言いながら、程よいゆるさをもって色々な話をした。
ほとんど聞き役だったが、お相手はとても話し上手な人だったので、「今、自分がその辺の壁に入れ替わっても大丈夫だな」みたいな気持ちになることはなかった。話し上手な人は聞き手の反応を汲み取って話し方や内容を変化させるため、会話の8割9割を片方が占めていても(少なくとも聞き手側には)相互交流していると感じさせてくれる。かなり難しい特殊技能だと思う。ありがたい。(話す側は負担だったかもしれないが……)

最後に「さようなら」をする段に至ってはお互い疲労と酒でふにゃふにゃになっており、あやふやな感じで別れた。未来についてはどうなっているか分からないねぇ、などと話し、突発的な会合なので当然次会う約束もせず、「ありがとうね」「お疲れさまでした」で別の道に進んでいった。


別れをあやふやにしてくれるから、別れの場には酒が適していることがある。
くっきり輪郭が見えなくても、そこに別れがあったことはお互い承知出来ている。相手がどう感じているかは自分でないので知らないが、少なくとも自分にとっては、今日はそれがちょうどよかった。

良い夜でした。
ありがとうございました。


明日以降の記事はナンバリングが①に戻ります。シーズン2。

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