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カラフルなアフリカ絵本で夏気分♬『ごちそうの木 タンザニアのむかしばなし』/語り継がれる昔話の意義。自然や文化、アートにもリンクする、絵本ならではの楽しさいっぱいの1冊!

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ごちそうの木 タンザニアのむかしばなし
(ジョン・キラカ 作 さくまゆみこ 訳)

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6月に入って、いよいよ夏らしくなってきました。今回は、アフリカの絵本『ごちそうの木 タンザニアのむかしばなし』をご紹介します。明るくあざやかな色彩に、のびやかで大胆な構図。エネルギーに満ちあふれるビジュアルは、眺めるだけで元気をもらえそうですね!

あらすじ・・・日照り続きで食べ物がなく、困った動物たち。おいしそうな実がたくさんなっている不思議な木を見つけます。でも、高いところにある実に手が届きません。どうしたら食べられるでしょう? かしこいカメに相談に行きますが…。ゾウ、ライオン、カバ、スイギュウ、ウサギなど、サバンナに暮らす大小さまざまな動物が協力して活躍する、「ひとりひとりが大切な存在」というメッセージが込められたお話です。

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「かしこい カメの だんな、」 「どうしたら いいでしょう?」
「ああ、あの ごちそうの 木なら、名まえを となえれば、実を おとしてくれるよ」 「名まえを おしえてあげよう」

動物たちはかわるがわる、カメから教わった木の名前を憶えて、仲間のところへ帰ろうとします。でも、そのたびに、なぜか途中でハプニング(?)が起こって、大事な名前を忘れてしまいます。

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最後にカメのところへ名前を聞きに出かけたのは、小さなノウサギでした。さあ、動物たちは、おいしい木の実をおなかいっぱい食べることができるでしょうか?

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繰り返しのストーリーから醸し出されるおかしさ、カメが教えてくれる木の名の独特な語感・・・。どこか懐かしい(日本の落語のようにも感じられますね!)このユーモラスなお話は、民話の採集をライフワークのひとつとしている作者のジョン・キラカが、タンザニア南西部に住む「フィパ」という部族の人々から聞いた昔話がもとになっています。

タンザニアの美しい自然のなかでうまれた絵本。

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作者のジョン・キラカは、東アフリカに位置するタンザニアの出身。いまもタンザニアで暮らしながら、絵本作家、イラストレーター、ストーリーテラーとして活躍しています。

ごちそうページ地図

「タンザニア」と聞いて、あなたはなにを思い浮かべるでしょうか? 

広大なサバンナ。アフリカ最高峰の山であるキリマンジャロ。

そして、そこで暮らすさまざまな野生動物たち――。

タンザニア 自然

日本の2.5倍以上の国土面積を持つというタンザニア。当地では、野生動物の姿を見かけることはごく日常であり、農家で生まれ育ったキラカさんも、作物を求めて畑に現れるゾウや、通り過ぎるライオンを見ることはよくあったとか。

そんなキラカ少年の楽しみは、おじいさんやおばあさんが語る昔話を聞くことでした。ときには、狩りに出かける父親のあとを内緒でつけていき、夜、森の中で狩人が語る物語に耳を傾けることもあったといいます。身近にいる野生動物が、たくさんのお話の登場人物として活躍したであろうことは、想像にかたくありませんね!

タンザニア発祥の現代アート、”ティンガティンガ・アート”って?

お話を聞くことが大好きなキラカ少年は、子どものころから絵を描くことも得意でした。やがて「ティンガティンガ・アート」という技法を学び、イラストレーターとして独自のスタイルを確立します。

キラカさんイベント写真コラージュ

来日イベントでイラストを紹介したり、自著へサインするキラカさん。

ティンガティンガ・アートとは、1960年代末、タンザニアで発祥したポップアート。その名称は、創始者エドワード・サイディ・ティンガティンガの名前に由来しています。サバンナの動物や豊かな大自然、人々の暮らしをあざやかな色でのびやかに描く、アフリカを代表する現代アートです。

語り継がれてきた物語を、次代へ手渡すために。

「昔話の宝庫」といわれるタンザニアですが、グローバル化した人の動きや、他文化が流れ込むことなどにより、昔話を語り伝える人が少なくなっているといいます。キラカさんのライフワークは、タンザニアの村々を回って、語り継がれてきた物語を聞き取って集め、それを絵本にして、子どもたちへ手渡すことです。

そんなキラカさんの取り組みは、世界的にも高く評価されています。

初めての絵本は『チンパンジーとさかなどろぼう』(岩波書店)。2作目の『いちばんのなかよし』(アートン)は、2005年ボローニャ国際児童図書展ニューホライズン部門でラガッツィ賞を受賞し、大きな反響をよびました。本書『ごちそうの木』は、2011年国際児童図書評議会(IBBY)スウェーデン支部が選ぶピーターパン・シルバースター賞を受賞しています。

ごちそうの木となかよしの水

右は『ごちそうの木』に続いて刊行された『なかよしの水 タンザニアのおはなし』(ジョン・キラカ 作 さくまゆみこ 訳)。

2017年には来日し、書店での講演会やワークショップなど多彩なイベントをとおして、絵本や物語の魅力を伝えてくれました。その時の様子は、さまざまなメディアでも取り上げられています。



☆彡お話を楽しんだ後は「ぬりえ」に挑戦!☆彡

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ごちそうの木_ぬり絵(PDFをjpegに変換したもの)

元気が出るような明るい色や、好きな色で、どうぞ、自由に楽しくぬってみてくださいね!


わたしも「ぬりえ」したの。

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じょうずにできたよ!

ピンクのゾウ、オレンジ色のカバ、みどり色のライオン。「どんな色でぬってもいいんですよ」とキラカさん。

ごちそうぬりえコラージュ


*おまけ*

動物たちが身にまとっているカラフルな衣装。よく見ると、みんなそれぞれ、色や模様、デザインの違う洋服を着ています。どれも、とっても個性的でオシャレ!

ごちそうの木(動物たちの衣装)5点コラージュ

動物たちのファッションにも、「ひとりひとりの個性を尊重する」というキラカさんのメッセージが込められているように感じます。

東アフリカには「カンガ」というあざやかな色彩の1枚布があるそうですよ。女性たちは、何通りも巻き方で、この「カンガ」をワンピースやスカートとして美しく身に付けるのだとか。

カンガ コラージュ


  ●○●○●○●○●○●○ ジョン・キラカの絵本 ●○●○●○●○●○●○