25年前の今日、児童労働の根絶を訴え、わずか12歳で凶弾に倒れた少年を決して忘れない。『イクバル 命をかけて闘った少年の夢』
「児童労働」を知っていますか。
発展途上にある国々では、5歳から14歳の子どものうち、1億5000万人が、児童労働をさせられているとユニセフは指摘しています。
●伝記絵本『イクバル 命をかけて闘った少年の夢』
児童労働は、完全になくすことがとても難しい社会問題のひとつであるといわれています。
1982年、パキスタンの小さな村の貧しい家庭に生まれたイクバル・マシーは、4歳で、父親の12ドルの借金と引きかえに、じゅうたん工場の働き手として売られてしまいます。
本書『イクバル 命をかけて闘った少年の夢』は、児童労働を強いられた少年イクバルが、過酷な日々の中でも希望を忘れず、ついに自由を手に入れ、やがて世界の子どもたちに影響を与えるまでを描いた伝記絵本です。
地球という名の星で
「そんな小さな手で、1日じゅう なにをしていたの?」
子どもたちは話してくれた。
イクバルは、じゅうたんを織る機械のまえにすわらされ(時にはくさりでつながれることもありました)、1日12時間以上、毎日働かされました。
けれど、9歳になったときのある日、仲間をさそって工場を抜け出し、児童労働をなくすために活動している団体の集会に参加します。
そこで、初めて、自分が自由になる権利を持っていることを知ったのです。
そののち、自由になったイクバルは、弁護士をめざして勉強をはじめました。また、児童労働の現実を人々に知らせるために、自らの体験を語るとともに、教育の大切さを訴える旅をします。
『いかなる子どもも、仕事の道具を手に持つことがあってはならない。子どもが手に持つべきものは、ペンやエンピツだ。』
1994年、スウェーデンのストックホルムで、ペンを高くかかげながら、人々を前にイクバルは語りかけました。
アメリカでは、「子どもにだって、学生にだって、世の中を変えることができる」と言い、希望と勇気を持ち続けることの大切さを訴えました。
しかし、1995年4月16日、イクバルの短い生涯は、突然、閉じられます。
久しぶりに帰った故郷の村で、何者かによって銃で撃たれたのです。即死でした。
「イクバル、あなたの夢はわたしたちが代わりにかなえるから!」
突然すぎるイクバルの死を世界中が悲しみ、悼みました。
でも、イクバルが教えてくれた勇気や夢は、たくさんの人々に引きつがれました。
児童労働をなくすために、いまなお大勢の人が闘っています。
イクバル 命をかけて闘った少年の夢
(キアーラ・ロッサーニ 文/ビンバ・ランドマン 絵/関口英子 訳)
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本書のイラストを描いたイタリアの作家・画家であるビンバ・ランドマンの多彩な活動が記事にまとめられています。