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ポケマルチャレンジャーアワード2021 年度テーマ「一次産業の現場から、地球を持続可能に」特別賞 エントリー内容文

最初に、以下取組とこの度の受賞は私一人では成し得ることはありませんでした。北海道への移動養蜂のきっかけを頂きました養蜂家さん、それに際する技術のご教授を頂きました地域の養蜂家さん、その他さまざまなサポートをしてくださった方々に厚く感謝申し上げます。
ありがとうございます!

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◆取り組みを通して、どのような課題を解決したいか教えてください。

20年、30年後に今のまま温暖化が進んでしまった場合、地元地域でハチミツが採れるか(特にみかん蜜)、そもそもミツバチを飼育し供給できるか?

切り取り範囲

◆取り組みの内容を、できるだけ詳しく教えてください。
  
「前書き」
西村養蜂場はハチミツの販売をしていますが、主たる仕事はあくまでもミツバチを飼育する事であり、ハチミツを採ることが中心ではありません。
また、飼育の中でミツバチを増やしミツバチ自体の販売や、花粉交配の為だけに巣箱の移動やレンタルをするポリネーション等を行っており、農業への関りも深いと考えております。特にこのミツバチの供給はここ島国日本においては、他国からの輸入等は出来ないことから、供給は国内生産がほぼ100%を占めており、花粉交配という観点からは農業のみならず自然環境全体で考えても重要な役割を担っています。もちろん販売しているハチミツに関しても、自然の恵みからミツバチが集めて来た貴重な甘味であり、販売を通して国産の純粋蜂蜜を知って頂くことはとても重要な役割ですし、この販売から得られた収入から飼育コストを賄っているので、当養蜂場としては絶やすことが出来ません。
以上のことから、”養蜂”を続けることが私の使命と考えております。

「本題」
きっかけは、養蜂歴も10年となりそろそろ目の前の課題だけではなく、20年30年後に目を向けたことからでした。そしてたった10年の経験から見ても、初めた当初よりだんだんハチミツの採蜜量は減ってきていて、ミツバチは夏の猛暑から夏バテしてしまうようになり年々少しづつではありますが飼いにくくなってきていました。特に主力商品である「みかん蜜」に関しては右肩下がり。気候も大きくかかわっていますが、もう一つの要因として地域の農家が減ってきていることもありました。このみかん農家が減る現象は今後も止まることはあまり期待できず、農家自身も昔のように大規模に面積を持つメリットもなくなってきたことから今後を考えると果たして20年後にみかん蜜が採れるのかも怪しいというかなり暗い未来を予想してしまいました。
となると飼いずらくなる分を補う形で年々飼育コストは上がっていくのに、収穫量は年々期待できない。最悪は養蜂で飯が食べれなくなる、ミツバチを飼う事が出来なくなる。
この問題を解決するには和歌山でこのまま同じように養蜂していても、抗えない可能性が出てきました。かなり大げさに聞こえるかもしれませんが、冷静に考えても実際に起こりうる事態です。
そしてそこで浮上してきたのが移動養蜂という手段でした。移動養蜂とはミツバチと共に飼育場所を移動して養蜂をすることで、移動先でも飼育や採蜜を行います。
移動養蜂で北限まで行けば、将来的に温暖化により気温があがってしまっても最悪飼えなくなるという事態は回避できると考え、北海道への移動養蜂を考え始めました。

メリット
➀季節がずれるため、採蜜期間が被ることが無く和歌山で採蜜を終えてから北海道でも採蜜を出来るので単純に増収益に繋がる
➁夏場でも同時期の和歌山の最低気温を下回るほどの最高気温で、ミツバチにとってはすごしやすい環境で越夏出来る。また、採蜜を終えてからも蜜が入ってくるため生育が和歌山の同時期とは比べ物にならないほど良い。
③リスクヘッジになる。和歌山でハチミツが採れなくても北海道で採れる可能性がある。また和歌山で採れなかった場合の対策が出来る(ミツバチの増産に切り替える等)。そして温暖化が進んでも和歌山と北海道のそれぞれの特性を活かして越冬と越夏が出来るので蜂は飼育し続けれる。

デメリット
➀どちらでもハチミツが採れない可能性はある。
➁単身赴任生産者となる。行けば4か月は北海道で生活しながら養蜂をすることになるのでプライベートががらりと変わることになる。
③金銭的な体力が必要。北海道に拠点を設けるところからスタートなので全てが一から。最悪初年度は赤字を覚悟しないといけない。

以上以外にも沢山の要因はありましたが、西村養蜂場にとってミツバチを飼育し続けれる、養蜂を家業として続けられる可能性の高い方は移動養蜂を行うことと考え決断しました。

無論簡単にいくはずもなく、長距離の移動養蜂は技術としては先駆者がいるので確立はされていますが、西村養蜂場としては全くその技術がなく、他の養蜂家の方に教えて頂くところから、そして北海道で家を探すところからでした。
先輩養蜂家からのご指導を頂き、何より家族に理解をして頂き、2021年6月末に和歌山から北海道へ300群のミツバチと共に移動養蜂を開始しました。

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◆取り組みを通して、これまでにどのような成果がありましたか。また、今後どのような成果が見込まれますか。

まず和歌山で採蜜を終えてから輸送の為にミツバチを150群→300群に増やし、北海道へ移動。北海道でさらに採蜜を終えてから150群増やし450群の増群に成功。和歌山で飼育するよりも好条件下での飼育のため、1群当たりの内容が和歌山での同時期とははるかに良い状態で和歌山に帰ってくることが出来ました。
採蜜に関しても、和歌山のみかん蜜の収量が例年の1/3と大打撃でしたが、その分以上に北海道では豊作となり、一からの設備投資がありましたがなんとか黒字で戻ってこれました。まさにリスクヘッジを実感した一年となりました。また、北海道での養蜂家の繋がりから北海道での飼育場所を増やす話を頂き、今後かなり北海道で動きやすくなりました。
そして、北海道に家を買いました。

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◆取り組みを進めた結果、どのような状態を実現したいか、目指すビジョンを教えてください。

一年目にして2拠点での養蜂の良さを実感できました。今後続けていく上で、2021年のように上手くいかない年も当然出てくると思いますが、養蜂を続けていく為に長期的に物事を捕えて、ミツバチと国産ハチミツの供給を絶やすことなく持続していきます。
そして、養蜂というほとんど知られていない実態を発信し続け、養蜂に対しての認知を広げると共に、養蜂業界に力を持たせたいです。専業の養蜂家が少ないことがかなり影響していますが、養蜂自体が知られなさすぎていて、全国規模の組合もありますが農業や他の産業と比べても全然力がありません。専業養蜂家が少ないからブルーオーシャンと驕ることではなく、ちゃんと実態を発信し続け養蜂業界の日本での社会的な地位を確立したいと思います。

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