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熊本かわりばんこ
昨年の秋と今年の春、熊本へ行きました。
熊本市内に行ったなら、熊本城より何よりも、是非行きたいと思っていたのが、「橙書店」
雑誌旧クウネルや村上春樹さんの旅のエッセイを読んでこの書店の存在を知り、いつかは行きたい!と願っていました。
そしてその願いは、ついに叶いました!
市電にトコトコ乗って辛島町で降りてすぐの、肥後銀行の立派な建物の横の、雑居ビルの2階にひっそりとその本屋さんはあります。
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橙書店は元々は雑貨屋さんとして開業したそう。
雑貨屋さん兼本屋さんでカフェでもあるので、お茶やお食事も楽しめます。
こちらに伺うと、お金をかけなくても(失礼!)、居心地が良くてコージーな空間が作れることと、この場所が愛されていることの空気感をしみじみと感じます。
そして、本のセレクションがまた素晴らしい!
売れる本ではなくて、おいしい水を飲むように、心が喜ぶような本が沢山置いてあるのです。
もし、自宅に図書室や大きな本棚があったなら、この書店の本のセレクションを参考にしたいくらい。
川内倫子さんの写真集
谷川俊太郎さんの詩集
石牟礼道子さんの随筆
ジュンパ・ラヒリ
ポール・オースター、、、
セレクトされた本達を眺めていると、私が大学進学で文学部を選んだのは、あながち間違いなかったのだと思えてきます。
子供の頃に本を読んで空想の世界を旅していたわたしは、感受性が強いみたい。
(魚座ですから!笑)
店主の田尻久子さんは物静かでベラベラ喋るような方ではなさそうですが、その適度な距離感がまた良いのです。
お茶も丁寧に淹れてあって美味しかった。
さて、「熊本かわりばんこ」ですが、元スタイリストの吉本由美さんと、田尻久子さんの交換日記みたいなエッセイになっています。
吉本由美さんは、オリーブ少女だった方達には憧れの存在ですよね?
彼女は長らく東京で活躍された後、故郷の熊本にUターンし、のんびりと暮らすはずが、沢山の保護ネコや飼っている猫たち、実家のお庭のお世話で忙しい日々を送っているそうです。
私は世代は下ですが、似たような部分(庭の世話やら実家の色々な雑用等)があるので、将来の自分事のように思えました。
そして、吉本さんのように、年を重ねても飄々と、自然体でいたい。
一方、田尻さんは、目の前にある日常的な自然や、書店で生まれたさまざまな人間模様を適度な距離感をもって、繊細に描いています。
田尻さんの文章は、読みやすいのに読んだ後の満足感が深くて、本当に素晴らしいと思います。
おふたりのやり取りを読んでいると、なんだか余計な力が抜けて、特に輝かしくもない自分の人生、そんなに悪くないんじゃ?!と思えてきました。
そして、また熊本へ行きたくなってしまうのです。
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