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「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」を読んだ

「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」 川本直 河出書房新社 を読んだ。

 各メディアで話題騒然。もうひとつの20世紀アメリカ文学史を大胆不敵に描く、壮大なデビュー作にして、第73回読売文学賞(小説賞)受賞作。

「ジュリアンは私で、私はジュリアンだった」
作風は優雅にして猥雑、生涯は華麗にしてスキャンダラス。トルーマン・カポーティ、ゴア・ヴィダル、ノーマン・メイラーと並び称された、アメリカ文学史上に燦然と輝く小説家ジュリアン・バトラー。
その生涯は長きにわたって夥しい謎に包まれていた。
しかし、2017年、覆面作家アンソニー・アンダーソンによる回想録『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』が刊行され、遂にその実像が明らかになる――。

河出書房新社

図書館で予約した本が手元に届く頃には、その本がどんな内容の本だったか、忘れてしまっていることがある。
しかし、予約した時の自分を信じて、あえて内容を知らないまま読むのも、また楽しい。

「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」
この本もすっかりどんな内容か忘れていた。
どうやらジュリアン・バトラーは戦後アメリカ文学を代表する小説家だが、日本では知られていない作家らしい。
のっけから、ジュリアン・バトラーのセンセーショナルな騒動が描かれる。

ここまで読んだら、ジュリアン・バトラーって、どんな作家なんだろう…って思うよね。
Google先生に聞いてみるよね。

えぇ、私、ジュリアン・バトラーは実在すると思ってたんです。
そしたら、違うんです。
フィクションなんです。

そうか、ジュリアン・バトラーは実在しないのか。ジョージ・ジョンも。

だからと言って、この小説の面白さが変わるわけもなく。
スキャンダラスなジュリアンとひたすら表に出ないジョージ、二人が関わった人々(こちらは実在の人物)の一コマ一コマが、ジョージの視点で描かれる。
私に海外作家や古典に対する知識が深ければ、もっと面白く、もっと虚実ないまぜの世界に幻惑されたんだろうな。

そんな無知の私でも、Ⅲー14&15に出てくる特別番組『文学の今』はツボった。
アンディ・ウォーホルは、本当にシャイでちょっとおバカな感じなのだろうか。
ローリング・ストーンズのキース・リチャーズは、演奏中にあんな騒動があったら、やっぱりギターで殴りつけるんだろうか(笑)

ジュリアンの濃い人生をたどり終えると、「ジュリアン・バトラーを求めて ー あとがきに代えて」「主要参考文献」と続く。
またもや「あれっ? 本当はジュリアン・バトラーっているんじゃないの?」と思う私。
そんな私にも作者は親切だ。
最後の1ページのど真ん中。
ごく小さいフォントで

本書はフィクションです。

と書いてある。

いや、マジで最後に念押ししてもらわないとヤバイって。


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