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「雪の鉄樹」を読んだ

「雪の鉄樹」 遠田潤子 光文社文庫 を読んだ。

祖父と父が日々女を連れ込む、通称・たらしの家で育った庭師の雅雪は、二十歳の頃から十三年間、両親のいない少年・遼平の面倒を見続けている。遼平の祖母から屈辱的な扱いを受けつつも、その傍に居るのは、ある事件の贖罪のためだった。雅雪の隠してきた過去に気づいた遼平は、雅雪を怨むようになるが...。愛と憎しみの連鎖の果てに、人間の再生を描く衝撃作

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雅雪が贖罪する事件とは。
と同時に、13年間待った7月7日に何があるのか。
わからないまま、辛い状況のまま、読み進める。

明かされたところで、重たい状況は変わらない。
より複雑さが増し、何故そこまで…という気持ちにもなる。
それでも、グッと引き込まれる、この物語。

前回読んだ遠田作品は「ドライブインまほろば」。歪な家族が虐待という形で描かれていた。
今回は、無関心。

それにしても、この人の書く主人公の救いとなる自然は、美しい。
前回は十年池。
今回は天上の苔庭。

自然に疎い私には、その光景が映像として鮮明に現れるわけではない。
心に直接くる感じ。
それまで、辛く重い状況がじんわりと染みている心に、ふいに、救いとして迫ってくるのだ。

前回もそう思ったけど、冷静に考えたら、やり過ぎ? でき過ぎ? なところもあるような。
もちろん、物語だからね。
でも、さらっと書かれたその奥を考えると…
そうなるのは納得、と思ったり。

遠田潤子作品はクセになる。

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