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「バンクーバー朝日軍⚾️」カナダ日系人野球チームが貫いた不屈の精神

『JICA横浜海外移住資料館 オンライン講演シリーズ、よみがえった伝説の「バンクーバー朝日軍⚾️」カナダ日系人野球チームが貫いた不屈の精神(10/23 Sat.)』
講師:テッド・Y・フルモト(古本喜庸)氏

1600年に渡る遺伝子レベルの流浪の民のせいか、太古の昔から今のそこらのおっちゃんの事まで、ヒトの移動に興味がありまして。ふとした事からハマった、西海岸日系アメリカ人の歴史やナラティブについては以前にもご紹介していますが、今回は先日ZOOMで拝聴したカナダ日系人史、そして現地の記憶にレジェンドとして残る野球チーム「バンクーバー朝日」についてのメモ書きを…📝

明治維新前後からアメリカやハワイ、そして南米へ移民する人が出てきて、渡った人々が落ち着いた頃に郷里の家族(写真花嫁含む)を呼び寄せ、次第に日本街が形成されていったのと同様、カナダにも多くの移民が渡った。
★1877... 長崎島原出身の永野萬蔵、ニューウエストミンスター(BC州)へ密航、フレーザー川でシャケ漁に従事。その後製材所で働いたり、シアトルで商売もしたが「シャケ王」と呼ばれ、後に和歌山などの漁民が押し寄せるきっかけとなる。カナダ産サーモンには日系人の功績も大きいのですな。
★1881... カナダパシフィック鉄道建設開始(製材所、鉄道など肉体労働に従事する移民激増)
★1888... 和歌山日高郡三尾村の大工、工野儀兵衛が単身スティーブストン(BC州)へ渡り、「フレザー河にサケが湧く」と郷里に報告。現地の白人は紅鮭の身しか消費せず、筋子や白鮭を独占でき、缶詰瓶詰を作る事に成功。三尾村からは親戚、村人が多く海を渡る→サーモン・ラッシュ→ひと稼ぎして帰郷した村人、洋館邸宅を建てる→アメリカ村と呼ばれる(現存)。
★1894... スティーブストン日系人約4,000人。独占的な日系社会→次第に摩擦、排斥へ…
バンクーバー Powell St.→Little Tokyo化。移民としてはアメリカと同様、広島、和歌山出身者も多いが、日本街では近江商人が活躍。シアトルやハワイへ渡った人もバンクーバーに来た。
★1895... カナダ市民権を所持せぬ者は就業出来なくなる→漁業許可証発行停止、失業、家を追い出される。
★1905... 東洋人排斥法
★1907... バンクーバー暴動、排斥運動(アメリカの影響あり)→Kill the Japs!
★1908... レミュー協定(移民制限)

そんな歴史の中…⚾️

⚾️1914... 運動神経抜群の若者9人を集め、「バンクーバー朝日」結成。最初は製材所チーム等と対戦。
⚾️1919... 白人チームとの対戦スタート→コツコツとしたプレーで次第に勝つように→International League(マイナーリーグ)で優勝
⚾️1921... 日本運動協会に招待され日本遠征。しかし旧制和歌山中(現・桐蔭高校)に惨敗
⚾️1926... ハリー宮崎監督のもと、Int'lの上のTerminal Leagueで優勝。「Brain Ball(頭脳野球)」「Fair Play」「大和魂」。白人にチートされたり酷いジャッジされても、ラフプレーや抗議を禁じた(軋轢を防ぐ為)→ハリー氏談「カナダ人として立派に育てた」→次第に白人住民含む地元全体へ受け入れられるように…
⚾️〜1926... Teddy古本氏(お父上)在軍。ホームラン記録こそないが広角打法で手堅く活躍された。
⚾️1935... カナダ最強チームとなった朝日軍 🆚東京ジャイアンツチーム。ジャイアンツの投手は沢村栄治、水原茂やスタルヒンも北米遠征に参加している。
★⚾️1941. 12. 7(8)... Pearl Harbor
18〜45歳男性→労働者として全員徴用(市民権を剥奪されたので、アメリカのように徴兵はされず)。朝日軍も当然解散、1914〜1941迄、メンバーは延べ約120人。
その他の日本人日系人→全財産没収(管理するという名目で)、職も奪われ、トランクひとつで立ち退き、オンタリオなどの収容所へ→「Ice House(寒い)」。ただし収容所内でも朝日メンバーは人気で、野球をしたという記録あり。
★1945... 終戦、日本へ帰国(渡航)or差別されながらカナダ残留
★1949... カナダ人市民権復活
★1983... Redress Movement(リドレス運動)
★1988... カナダ、マルルーニ首相による謝罪、補償、強制移住の負の遺産として「Ice House」を残す決定。
⚾️1998... トロントで朝日の生き残りのリユニオン。Teddy氏は逝去されており、息子のテッド氏が招聘された。Teddy氏とバッテリーを組んでいたクツカケ氏、「私達は片時も日本の事を忘れた事はないけれど、日本人はバンクーバー朝日について知っていますか?」→息子として「バンクーバー朝日軍」を書き残そうと思い立つ(2009年出版)。その後、原秀則により漫画化され、ビッグコミックススペリオールで2012〜14に連載。そして2014年には映画化され、「バンクーバーの朝日」が公開された(石井裕也監督、妻夫木聡、亀梨和也、高畑充希など出演)。

Teddy古本氏はミシガン大学を出て戦前に日本へ渡り、戦後はNHKやアメリカ大使館に勤務されていたとか。テッド氏は日系人史、日系人野球史どちらについても熱く語り、1時間半に渡る講演をこう締め括った。
「勇気、希望を持つ大切さ、歴史を風化させない事。そして何よりも、戦争は何がなんでも起こしてはいけない。罪の無い一般市民が一番の犠牲になる。カナダは二度とこのような事(強制移住、排斥)をしないと誓い、多民族多国籍社会を認め、あらゆる差別を許さないと公言している。そこが素晴らしい。」

…ここまで読んで下さった奇特な方々、有難うございます。

写真:テッド・Y・フルモト(古本喜庸)氏の著書「バンクーバー朝日軍」、そのバンクーバー朝日軍の面々、お父上のTeddy古本氏👓、東京Giants北米遠征時の沢村栄治(投手)、2002年にトロントで行われた、Mariners(当時Ichiroやシギー長谷川、カズ佐々木がいた)とBlue Jaysの試合の始球式に招かれた故・Mickey前川氏ら。下の4枚はスティーブストン及びバンクーバー・パウエル街日本街の様子(最後は暴動後)

番外編。1921年の日本遠征時、船酔いでフラフラだったとおぼしきエド北川氏のコメント↓
The 1921 Vancouver all-star team which toured Japan. "It took us 14days to get there by boat and I was seasick the last 11days." says Ed Kitagawa in reference to the team's extended road trip. 

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