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たゆたえども沈まず

今日、宝塚歌劇団の花組が無事に大千秋楽を迎えた。スリランカで宝塚の大千秋楽をライブ配信で見れるなんて、本当に良い時代になったと思う。

さて、私がなんでこんなことをわざわざ書いているかと言うと、今日宝塚歌劇を卒業されるトップスターの柚香光さんに若干の思い入れがあるからだ。
柚香さんがトップスターに就任したのは2019年の11月25日。そこから程なくして新型コロナウイルスの流行により公演が休止となる事態が発生した。
その時の柚香さんのお披露目公演でもあった「はいからさんが通る」は私も何度もチケットを取っては公演が中止になっていたので、当初の予定から半年ほど遅れて初めて東京宝塚大劇場でその演目を見た時は、とにかく感動で涙が止まらなかった。

同じ場所に大勢の人数が集まることすらできなくなっていた2020年。それが約半年ほどの時を経て、一つの空間に役者もスタッフも観客も皆が意思を持って、そこにいる。ごく当たり前のことではあるが、再び舞台を見ることができたのが、あまりにも貴い体験のように思えて、「観客」を考える時にいつも柚香さんの「はいからさんが通る」を見た時のことを思い出す。

あの時は確か10月ぐらいで、ちょっと風が涼しくなってきた頃だった。作品の歌詞や音楽を聞くだけで、あの時どんな風が吹いていて、どんな味がして、巡っていく季節がどこか愛おしく感じた感覚、全部、今でも思い出せる。
私があの時に感じた観客達は、今どこにいるのだろう?分からないなりに感じて、考えて、探し求めて外国まで来た先はどんな「観客」がいただろうか?一人のトップスターが羽を下すその日に、私も改めて振り返っていた。

ねぇ、私。どうだろう?スリランカにいる「観客」は。

うーん。スリランカの観客は、正直観客と言えるのかどうか分からないぐらい、図々しくて自分本位で全然言うことを聞かない。それでも家族や友人、仲間には優しくて温かく、外国人の私でさえも、その温かさに気持ちを救われたこともある。でも一つ言えるのは、彼らはとてもタフでパワフルだ。
私はこんな偉そうな文章を書いているけど、インゴルドや文化人類学者が書いていたような「わたしたち」の概念には全然及ばない。でも、スリランカの人はその横で悠々と「わたしたち」を体現する。それが本当に凄いなぁと思うし、叶わないなと思う所でもある。

スリランカで生活する中で、なんでやねんって思うことが本当に沢山ある。もう5%ぐらいしかスリランカのこと好きじゃないって思うこともいっぱいある。スリランカの嫌いなところなんて挙げれば、本当にキリがないんじゃないかって思えるぐらい、永遠に言える自信だってある。
しかし、私よりもずっとタフで飄々としてて、日常的に「私たち」を体現する彼らは本当に凄いと思っていて、少しでも彼らのエッセンスを吸収できていれば良いのにって思うことは多々ある。

結局、特に何が良くて何が悪いのかって言いたい訳でもないんだけど、私が「観客」を考えた時のことを思い出して、改めてスリランカという土地で自分がどんな地点にいるのか確かめたくなったのだ。

少しでも前進してるといいよね。
スリランカ生活もあと1年半。たゆえども沈まず、とにかく生きる。

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