災害とサーキュラーエコノミー

 前回、災害の多発化について書いたので、その続きみたいなイメージで災害廃棄物について触れてみたい。予定されていない大量の廃棄物が一度に発生することについて、社会はそれをどう受け止め、処理しているのか。そして(いささか難しい視点ではあるが)サーキュラーエコノミーの考え方が、災害廃棄物の対策にどの程度適用できるものなのか。

 国立環境研究所が「災害廃棄物情報プラットフォーム」というウェブサイトを開設している。その他にも国土交通省や環境省、各自治体がさまざまな情報を提供している。それらを眺めてざっくりと言えることは①災害廃棄物の処理がこのところ大きな政策課題になってきていること、②処理前の分別はある程度しっかり行われていること、③土砂を中心とした発生量の多くは土木関係の復旧工事に使われていること、などだ。カンタンに言ってしまえば、災害廃棄物として発生した土砂を堤防復旧工事などに使っている、ということ。
https://dwasteinfo.nies.go.jp/

 廃車となった自動車や、金属系の廃棄物もリサイクルされている。木質系の廃棄物や可燃性のそれは焼却工場で処理されている。行政による区分では「処理困難物」とされる布団や畳など、泥水をかぶって使えなくなった大型の家財道具は、乾いた後で破砕・焼却などの処理に回されているようだ。

 災害廃棄物について考えるとき、優先されるのは災害発生地域の衛生と復旧だ。結果的に想定しない量の廃棄物が仮置き場に積みあがる。地震などにより、広域被害が発生した場合の影響は甚大だ。加えて、このところ毎年のように発生する豪雨災害は、西日本を中心とした全国にその影響を及ぼしている。

 そんな中にも、サーキュラーエコノミーの考え方を織り込むことで対策につながる方向性が見えてくるように思う。たとえば予め災害発生を織り込んだ設計、という対応が考えられる。私が住んでいる千葉県松戸市では、江戸川に近い地域の住宅に一階部分を駐車場にしてある個人住宅が少なくない。この土地は、まだ治水対策が万全とは言えなかった昭和の中盤頃まで、良く水害に見舞われた土地なのだ。古くから住んでいる人たちは、かつての知恵を生かして自分たちの家を少しでも水害に強い設計にしたのだろう。

 他にも、浸水に強いフローリングや配電ケーブル、エアコン室外機の設置場所など、その気になれば災害に強い設計ができる。

 たとえば農業用ハウスでも、嵐で飛ばされずに簡単に倒れ、その後簡単に復旧できるような骨組みが設計できたなら、全体の被害総額を減らすことができたりはしないだろうか。部品の一つ一つはやや重たく、梃子などを使うことで誰でも簡単に組み立てられるような仕組みのイメージだ。同様のことは、漁港や水産養殖向けの施設などにも言えるのではないだろうか。

 あらかじめリユースやリサイクルを想定しておくというエコデザインに近い発想だが、グッドデザイン賞では「そなえるデザイン」と言うコンセプトで災害に備えたデザインを推奨している。
https://www.g-mark.org/sonaeru/

 それでもやはり、災害で泥をかぶってしまった生活用品などの再利用には一定のハードルが存在する。お気に入りのよそ行きなど、クリーニングに出しても元には戻らない。逆に言えば、思い出の品物を完璧に修理するようなサービスが構築できたなら、そこにはビジネスチャンスが生まれるということなのだけれど。

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