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お母さんだなんて呼ばなくていいのよ【4/5】

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 それから3日間、英治への“白い顔の女”の責めはさらに激しさを増した。

 最低3回、射精させられ、英治の体力は限界に達していた。
 もはや抵抗の意思は奪われた。
 まるで麻薬中毒患者のように、英治は快楽を求めている自分に気づいた。

 その時以外の性欲は全て巻き上げられた。

 昼間の学校生活で、女生徒を見て性的な感情を持つことも無くなった。

 その日の学校の帰り道、英治は強い日差しに照らされ、もはやまっすぐ歩くこともできなかった。

 頭がずきずきした。目の前でチカチカと火花が散っている。
 よく学校が終わるまで持ちこたえられたものだと、自分でも思う。
 
 家に帰ると、家の中に人の気配はなかった。
 一重は出かけているのだろう。

 相変わらず、一寸の乱れもなく片づいた部屋の風景。
 明かりのついていない部屋に窓から差し込んだ夏の日差しが、磨き上げられた床に光の帯を落としている。

 部屋の中には、どこからかラベンダーの香りがした。
 しかし今の英治には、それに気づく余裕はなかった。

 とにかく冷たい水で顔を洗いたかった。
 しかし洗面所に入る時には用心が必要だ。

 前のように、風呂上がりの一重がそこに立っているかも知れない。

 あれ以来、洗面所に入るときにはいつも気を遣った。
 必ずノックしてから、中に物音がしないか確かめてから、洗面所のドアを開けることにした。

 あれから洗面所に一重が立っているようなことはない。
 もしかすると、自分はそこに全裸の一重が立っていることを期待しているのかも知れない。

 いや、そんなことはない。
 自分はいったい何を考えているのだろう?

 洗面所に入り、水を出して顔を洗った。

 洗面所といえば、英治が下半身裸で精液にまみれたパンツを洗っている姿を目撃して以来、一重の方も洗面所に入るときには細心の注意を払っているようだ。

 また、早朝、人目を避けながら毎朝パンツを洗っている英治がいることを、一重はどうやら認識しているらしい。

 洗面所で洗ったパンツは部屋の中でドライヤーで乾かしたが、ここ2週間ばかり英治のパンツの洗濯物がないことに関して、一重は何も言わなかった。

 父にも何も話していないようだ。

 一体どうなってるんだ。
 何もかもが、あの女の手のひらの上か?

 よくわからない。
 ひとしきり冷たい水で顔を洗ったが、それでも頭痛は消えなかった。

 タオルで顔を拭い、そのまま冷蔵庫に向かった。
 氷かなにかで冷やすと、少しはましになるかもしれない。

 冷凍庫のドアを開ける。
 当然、冷凍庫の中も一糸乱れぬ整理整頓がなされている。
 冷凍食品、タッパーに入った様々な食材、アイスクリーム。

 いや、考えるのはやめよう。

 意味なくイラつくことも止めよう。
 英治はひとりでにわき上がる雑念を追い払い、冷凍庫の中を探すことに集中した。

 と、冷蔵庫の奥に保冷剤でできた氷枕のようなものがあるのを見つけた。

 白いビニール袋に覆われた、幅20センチ、横10センチくらいの立方体。

 厚みは3センチほど。
 英治はその物体を引っ張り出して、手に取った。

 氷枕ではなかった。

 白いビニール袋の中に、きんきんに氷った重みのある物体が入っている。
 奇妙な手触りだった。なにか、この手触りには覚えがある。
 それはカチカチに氷っているが、確かに覚えのある手触りだった。
 
 袋を開けて、中を見た。

 中には、かちかちに凍った蒟蒻こんにゃくが入っていた。
 英治は呆然とそれを見つめた。

 こんにゃく?
 なぜこんなものを冷凍庫で凍らせておく必要があるんだ?

 蒟蒻は外の熱い外気に触れ、かすかに白い蒸気を上げている。
 英治の手から伝わる体温で、それは早くも固さを失い、柔らかくなりはじめていた。

 凍った蒟蒻を、熱い頬に当ててみた。
 冷たさと、かすかな柔らかさを感じる。
 突然、肉体が自動的に反応した。

 草臥れ、萎れきった肉茎に一気に血液が集まってくるのを感じた。
 下腹の奥に、しびれるような感覚が灯る。
 
 これは……?

 そう、これだ。

 毎晩自分を嬲り、弄ぶ冷たい“舌”、その正体は、この凍った蒟蒻だ。

 嬰児はそのまま蒟蒻を乱暴に冷凍庫に放り込むと、一重と父の寝室へ向かった。

 ドアを開ける。
 部屋の中には箪笥が二つ、鏡台がひとつ。

 そしてその他の家具とともに、亡き母の遺影を頂いた仏壇があった。

 この部屋もまた、完璧に整頓され、磨き上げら得ている。
 仏壇には(不釣り合いな感じもするが)母が好きだった赤いフリージアの花が供えられている。

 それらも全て、一重の手によるものだった。
 英治は頭が混乱するのを感じた。

 この花の添えられた仏壇の前で、一重と父は浅ましく交ぐわい、嬌声を上げ、貪りあっている。

 二人の痴態を、母の遺影は常に見守っている。
 心ならずも、父を憎悪した。
 そして、一重を憎悪した。

 しかし、自分は今一体何をしているしている?

 そう、あの晩、自分はその二人の浅ましい営みを盗み聞き、欲情し、それ以来毎夜のように現れる“白い顔の女”にその欲情を弄ばれている。

 あの女は自分の恥ずべき欲望の産物ではないのか?
 いや、そうではないのか?

 英治はまるで狂ったように箪笥を開け、押入を開け、開けられるものは全て開け、その中にあるもの全てを床にぶちまけた。

 頭のおかしい泥棒のようだ。
 一重の手により完璧な均衡さと整然さを保っていた寝室は、見る見るうちに混沌に溢れかえっていった。

 自分は何を探しているんだろう?
 何を求めているんだろう? 

 この狼藉によってどんな答が得られるというのか?
 自分は浅ましい肉欲の奴隷ではない、という証か?

 自分を毎晩のように翻弄するあの“白い顔の女”が、夢ではないという証拠か?

 どれくらいの時間が経っただろうか。

 押入の中のものを全て床にぶちまけて、空っぽの押入を覗いた時だった。

 英治は、押入の奥を仕切るベニヤ板の色が、一部分だけほかの部分と違うことに気づいた。

 普通なら、気にならない程度の色の違いだ。
 しかし根拠のない猜疑心と、疑念の固まりとなっていた英治の目に、その違いは不思議な説得力をもって飛び込んできた。

 おそるおそる手を伸ばす。

 ここに、答があるのだろうか。
 そうではないかもしれないし、そうかもしれない。

 その回答を知ることは、これからの生活に一体どんな影響を及ぼすのだろうか。

 答えを知るのが恐ろしかった。

 英治はベニヤ板に手を触れ、ゆっくりと押した。

 ガタン、と音がして、ベニヤ板が倒れてきた。

 英治は目を見張った。
 喉がカラカラに乾き、声が出なかった。

 ベニヤの外れた後ろには15センチほどの奥行きがあり、むき出しのコンクリートの壁があった。

 その壁には、白い女の顔の仮面が、まるで何か神聖なものであるかのように飾られていた。

 英治はしばらく…その白い仮面を見つめていた。

 毎夜のように現れては、自分の躰を凍った蒟蒻と冷たい手で弄んだあの実体のない“白い顔の女”その正体が、そこにあった。

 ラベンダーの香りがした。
 ラベンダーの香りだけが、部屋を満たしている。

 仮面を凝視していた英治は、ふと、ラベンダーの香りが強くなっていることに気づいた。

 振り返る。

 白いブラウスにベージュのスカートを履いた、一重が悲しそうな顔ですぐ後ろに立っていた。

「……ごめんね……」

 一重が手を伸ばし、英治の首筋に触れた。

 全身に電気が走り、そのまま英治は散らかりきった床に倒れた。

 英治は床に倒れたまま、指一本動かすことさえできない。
 倒れたまま、一重が散らかり切った部屋を片づけるのを眺めていた。

一重は何も言わず、もくもくと部屋を片づけている。
 相変わらず表情は悲しげなまま。
 みるみるうちに、部屋は以前の整然さを取り戻していった。

 いったい自分は、何をされたんだろう?
 なんで身体が動かないんだ?

 毎晩の金縛りと、まったく同じだった。
 しかし今は意識もはっきりしており、これは明らかに現実だ。

 先ほど一重に触られた首筋には、なにか不思議な異物感があった。

 しかしその位置は死角であり、英治には見えない。
 部屋がすっかり片づけられた。

 一重が英治の前に立ち、英治を見下ろす。
 一重の身長が、いつもの何倍にも思えた。

「……ほんとに、ごめんね……英治くん」

「……ぼ、僕に……なにを……」

 英治は一重を見上げて、言った。
 一重がしゃがみ込んで、英治の顔を覗き込む。
 一重の手が英治の顔に延び、短い前髪を優しく掻き上げた。

「……人間の体には108のツボがあってね、それぞれが体のいろんなところに影響してるの……いま、あたしが英治くんの首に刺したのは“癒身”っていうツボ」

「…………」

「……ここを刺すとね、鍼を刺してる間中、体が動かなくなるの。でも、抜いたら元通り動くようになるから、安心してね……」

「……そんなことじゃなくて……僕に……なにを……」

「……」

 一重は答えず、傍らに置かれていた白い仮面と、蒟蒻を取り上げた。
 そのこんにゃくは先ほど、一重が改めて冷蔵庫から持ってきたものだ。
 
 一重が、仮面をつける。
 毎夜現れた、あの女だった。
 一重は仮面をつけたまま、英治の頬を蒟蒻で撫でた。

「……い……い、いやっ……だっ……」

 思わず英治は息を吐く。
 一重が仮面を外した。
 無表情な仮面の下から、一重の悲しそうな顔が現れる。

「……ごめんね……こんなことして……わかってる。英治くんが、こんなことイヤだってこと……」

 蒟蒻が頬から首筋に下り、ゆっくりと上下になぜる。
 毎夜の感覚を呼び覚まされ、早くも英治の身体は反応をはじめていた。

「……でも、我慢できなかったの……ごめんね……あたし、そういう女なの……」

「んっ! ……あっ……」

 英治が身もだえするのを悲しそうに見ながら、一重が言葉を続ける。

「……あたし、初めて会ったときから、英治くんのお母さんにはなれない、って思ったの……だって……」

 一重の手が、英治の制服のシャツのボタンを一つ一つ外してゆく。

「……だって、あたし、こんな女だもの……でも、努力はしたのよ……せめて……せめて、お姉さんには、なれるかなって、思った……」

 シャツのボタンは全て外された。
 今度は一重の手が、英治のズボンの前ボタンに掛かる。

「……でも、それも無理だった……英治くん、ぜったい、あたしのことなんか、お母さんと認めてやるもんか、って……思ってるでしょ? ……でも、あたしも同じなんだ……わかる?」

 学生ズボンのチャックが降ろされた。
 動けない英治には、それをくい止める術はない。

 ズボンが引き下ろされる……連日の責めでかすかに屈辱の染みを浮かせたグレーのボクサーブリーフが露わになった。

 これから待ち受ける強制的な愉悦を待ち焦がれるかのように、肉体は英治の意に反して明確に反応を示している。

 ショーツの布地が、すでに硬く隆起した肉茎に持ち上げられていた。

 鍼による戒めと、淫らな愛撫を受けながら裸に剥かれていく英治の姿を、母の遺影が仏壇から見守っている。

「……あたしも……英治くんの母親にはなれないの……英治くんを息子だなんて、思えないの……弟だなんて……だって……」一重が少し、顔を伏せた「……こんなに、好きなんだもの……」

 一重の手がブリーフに掛かった。

「や、やめっ……て…………やめろっ……」

「なんで……?」一重が無慈悲に、ボクサーブリーフを引き下ろした。一瞬布地に引っかかった肉茎がはじかれ、腹を打った。「……いつも……英治くん、気持ちよさそうにしてくれたじゃない……」

「……そん……なっ」

「……わかってる……英治くんがイヤだってことは……でも……あたし……」

 一重が英治の身体を見下ろす。

 手足を動かせず、晒された躰を隠す術を持たない英治は、思わず顔を背けた。

 ボタンを全部外されたワイシャツは左右に大きく開かれ、その左右に、固くなった乳首が上を向いている。

 痩せた白い胸には肋骨が浮き上がり、まだまったく贅肉を乗せていない腹には縦型のかわいい臍がある。

 その臍のすぐ下に、固くなった肉茎の先端があった。

 その根元にはかすかでまばらな恥毛。
 肉茎は血管を浮き出させ、ビクン、ビクンと震えていた。

 先端からすでに溢れている粘液が、臍のくぼみに垂れている。

「……ごめんね……あたし……こんなことしかできないだめな女なの……こんなことしか……」

「うっ……!」

 一重の手が、熱く、固くなった肉茎に触れた。
 毎夜と同じく、冷たい手だった。

「……ごめんね……英治くん、あたし、こんな女で……」

 一重は少し、鼻に掛かった声で言った。

「はあっ……!!」

 一重の指先が、英治の肉茎の先端からあふれ出た粘液をすくい上げた。
 そのまま一重はそれを肉茎全体に塗りつけるように、ゆっくりと手を上下に動かし始めた。

 湿った音がした。

「やあっ!……や……やめろっ……あ、や、めてっ…………」

「……英治くん……ごめんね……あたし、こんなことしか、英治くんにできないの……あたしの事、お母さんなんて、呼ばなくていいのよ…」

 一重は一拍間を置いてから、少しトーンの低い声で続けた。
 その間も手を休めることはない。

「こんな女だと思って、軽蔑してくれていいのよ……だから…今は……何も考えずに、楽しんで……お願い」

 英治は必死に目を閉じ、歯を食いしばった。
 しかし、湿った音は聞こえてくるし、全身を飲み込み、全神経をも凌駕するこの激しい歓喜からは逃れられない。

 あっという間に、英治は瀬戸際に追いつめられていった。
 このままでは、1分も絶たないうちに射精させられてしまう。

 それだけは出来ない。

 それだけは。なぜなら自分を淫らに責め立てているのは、父の再婚相手であり、ここはその女と父が交歓する寝室であり、そしてその様子を、母の遺影が見ているのだ。

 何があっても、母の遺影の前でそんな屈辱を受ける訳にはいかない……
 しかし頭でそんな事を考えれば考えるほど、英治の全身は甘美な痺れに侵されていった。

「……あっ……ああっ……」

「……いいから……英治くん……出して、いいのよ……」

「だ、だめっ…………んんっ! ……あっ………………んああっっっ!!!」

 目の前が白くなり、下半身から下の感覚が失われる。
 激しく堰を切った鈴口は真上を向いており、勢い良く精液を放出した。

 英治は、自分の唇に、顎に、自らの熱い精液が飛び散るのを感じた。
 もんどり打つような長く、激しい律動は、いつまで絶っても収まらない。

 自分の体の一部分ではなくなったかのように、精をまき散らしながら猛り狂う肉茎。

 胸に、腹に、精液が飛び散った。

 やっと律動が収まったときには、英治は白目を剥き、涎を垂らしていた。

 自らの精液を体の表面にまき散らし、息も絶え絶えの英治を、相変わらず悲しそうな顔の一重が見下ろしている。

「……すごい……こんなに出てる……」

 一重の手が、英治の躰の上にまき散らされた精液を、ゆっくりと塗り広げていった。

「……い、いやだ……も、もうっ……」

「……ほら、ね。英治くん……お願いだから……楽しんで……ね、あたし……こんなことだけは上手だから……」

 白濁した粘液を塗り込められた英治の上半身は、カーテンの隙間から入ってくる外からの光に照らされ、ぬらぬらと光っていた。

 一重は未だかすかに律動の余韻を残し、英治の萎れきった肉帽の先端から滴り落ちている液をすくい上げると、英治の陰嚢の裏や、肛門の近くまでそれを塗り混んでいった。

 脱力感と無力感と自己嫌悪感、敗北感のはざまで、英治は痺れるような嗜虐感を味わっていた。

 ひとしきり英治の躰中に精液を塗りたくった一重は、またも英治の力無い肉茎をつまみ上げる。

「……ダメ……だ……よっ……も、もう……もう……ほんとに……出ない……よっ……」

 ほぼ、命乞いのような口調だった。
 一重が顔を上げ、優しい笑みを見せる。

「大丈夫よ……ほら」

 いつの間にか一重の指先に、髪の毛のように細い鍼があった。

 「くっ!」

 英治の右足に、電流が流れるような衝撃が走った。

 その痛みはすぐに消え、消えると同時に体のまったく違う部分に、奇妙な変化が起こった。

「……あっ……ああっ……」

 下腹に火がともる。
 下半身がしびれ、下から持ち上げられるような感覚が英治を襲った。

 一度戒めを逃れた肉茎に、再び血液が集中する。

 耳をすませばその流れの音が聞こえそうだった。
 見る見るうちに、肉茎が鎌首を上げて立ち上がる。

 その先からは、新たに排出された悦びの液が溢れ、てらてらと光っている。

 英治はなすすべもなく、己の分身がかま首を持ち上げ、自分を裏切るのを見守った。

「ほら、こんなに元気になった……今ね、“悦陰”ってつぼに鍼を打ったの……痛くなかった? ……ここに鍼を打つと、何度でも元気になるのよ……それにね、全身の感覚が、ちょっと敏感にもなるの……」
 
 一重の指先が、英治の左乳首に軽く触れた。

「あうっ!!」

 激しい感覚に、英治は思わず反り返った。
 少し触れられただけだったが、体の左半身が一瞬麻痺してしまったようだ。

 その感覚が消えても、余韻は信じられないほど長く後を引く。
 余韻が完全に消え去るまで、英治は身もだえしながら呼吸を整えるしかなかった。
 
 乳首に軽く触れられただけで、これほどの衝撃を受けるのだ。

 これから自分は、どうなってしまうのだろう……?

 英治は恐怖した。
 恐怖しながらも、肉体は心を裏切り、これから与えられるであろう快楽を待ちわび、肉茎の高まりはさらに勢いを増している。

「んんっ……!」

 一重の冷たい両手が、英治の上半身を這い回った。
 突き刺さるような激しい感覚が、英治を襲う。

 鳩尾……胸……脇腹……腰……太股……

 一重の手が内股に達した時には、英治の陶酔はもはや臨海点に達していた。

 先端から新鮮な蜜を溢れさせて止まない肉茎は、もはや放出の時を今か今かと待ちわびてこれ見よがしに脈打っている。

「……や、やめ……て……っ」

 懇願する英治を後目に、一重はさらに淫らな愛撫を止めようとはしなかった。

 英治は悶え、喘いだ。
 そうして躰がひとりでに反応するのとは裏腹に、唯一自由になる心では何とかその絶大なる感覚に抵抗しようと空しい抵抗を続けていた。

 射精してはいけない。
 この淫らな愛撫に屈服するもんか……

 しかし容赦なく続く愛撫に、最後の牙城である精神ももはや陥落しようとしている。
 既にもう一度、先ほどの激しい射精で屈服を示していた。

 それがもう一度射精したところで、何が変わるというのか?

 英治の耳元でそう悪魔が囁いた。

「……舐めて……いい?」

 悪魔の囁きに被さるように、一重の声がした。

 英治の返事も聞きもせずに、一重が英治の股間に顔を埋める。

 髪を掻き上げながら、限界まで追いつめられた英治の肉茎を、優しく一重が口で包み込む。

「はっ……い、いやだっ……!!」

 逃がそうとしても、腰を動かすことは出来ない。
 肉茎が暖かい、柔らかい粘膜に包み込まれる。

「……はあ……」

 舌が動き始めた。

「……んあああっっ!」

 一重の舌が、巧みに英治の肉茎の包皮を押し下げた。
 剥きだしにされ、激しい感覚を帯びた亀頭が一重の口の中で無防備に晒されている。

 一重の舌が容赦なく、まだ誰にも触らせたことのない亀頭を攻撃した。
 
 
 むき出しの感覚が、英治を襲った。
 
 
 激しい痛みが全身を駆け抜けたが、体を動かすことの出来ない英治にそれから逃れる術はない。
 
 ゆっくりと一重の舌が亀頭を這い回り、やがて激しい痛みは、英治の全身の感覚を麻痺させるかのような快楽に変わった。
 
 巧みな舌使いだった。
 英治の人間性と尊厳を、凌駕する舌づかいだった。

 英治は悶え、喘いだ。
 少しでも気を緩めれば襲いかかって来る射精感が、英治を責め苛んだ。

 一重は黙々と英治の肉茎を舌で愛撫している。

 父も、こんな風に淫らな愛撫を受けているのだろうか……?

 余計なことを考えた途端、さらに下半身が痺れ、意識が遠のいた。

 と、一重の舌先が英治の鈴口を捉えた。

「……あうっ!」

 舌先が蠢動をはじめる。
 全ての意識と感覚が、亀頭の先の鈴口に向かって突進した。

「んんっ! うっ! う、うあああああっ……!!」

 あと一歩で、英治はこの快楽の責め苦から解放されるところだった。
 

 しかしすべては、手の平に与えられた鋭い電流のような感覚にせき止められた。
 

「……?!」

 下を見ると、絶頂寸前までに追い上げられた肉茎が見える。
 その向こうに、一重の顔があった。

「……ごめんね……また鍼、刺しちゃった……」

 見ると、左手の平の真ん中に、先ほど太股に刺されたのと同じ、細い鍼が刺さっている。

「……そこね、“悦堤”ってつぼなの」

「……な……何をっ……」

「……できるだけ……英治くんに、長いこと気持ちよくなってもらいたくって……そこを押すとね、最後まで、イけなくなるの…………鍼を抜くまでね…………」

「そっ……そんなっ……!」

「……ごめんね……英治くん……あたし、こんないやらしい女なの……」

 射精寸前まで追いつめられていながら、解放することを許されない。
 英治の肉茎は紫色に変色し、ぴくん、ぴくんと跳ね上がっている。

 一重が立ち上がり、ブラウスのボタンを外し始めた。

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