見出し画像

金子明日香さんインタビュー(このお話も欠かせない番外編)

金子さんにお話を伺い、
わたしも、
一緒にインタビューをしたインターンの彼女も
ぐぐっと掴まれて
しみわたって
心が震えました。
大切なお話と、とてもあたたかい時間を
ありがとうございました。

今回は本編には組み込めなかった、
しかしどうしても欠かせないお話を
一挙公開させてください!!
(本編はこちら→前編後編


瞑想のように線を描く

Q.地道な作業が好きだったり、そういう作業がしたくて描いているようなところはありますか?

金子さん 
あんまりそこは考えてなくて、
これ(写真下部の絵)ひたすら線をずっと描いてるんですけど、

金子さん
これは線を描くことだけに集中したかったというか、、
違うな、集中したかったっていうよりは、頭を動かしながらつくりたくなくて、だけど何もしてないとお前何もしてないだろっていう罪悪感でいっぱいになっちゃって(笑)
とりあえず手を動かすっていう意味で描き始めました。

他は自由に描いてはいても、バランス取ったり配色を考えたり、少なからず頭を使うんですよね。
線を引くだけだったら思考しなくてもできる。
それをずっとやってる感じです。
「ほんとに頭使いたくない」という時に逃げるようにこっちにいくんです。とりあえずやってれば何か増えてくものなので、今日の私も頑張ったという感覚になれるからそれもいい(笑)。

制作だけでなく、しんどい時って嫌なことで頭いっぱいになるじゃないですか。
ずっと何もしないとずっとその思考がまとわりついてつらいので、こっちに行ってとりあえず線を描く。
感覚的には瞑想と近いかもしれません。

そうなったときにこういう細かい作業が私には合ってるんだろうなと思います。
その一点にフォーカスできるのがいいのかな。

(上の写真の中央にある、その作品の)アウトラインも山っぽくなればいいなくらいしか考えてなくて、バーーって数十秒で描いて、あとはしんどい時にひたすら線をなぞっていくっていうのをやってるんですよね。

だから細かいことは得意だとは思うんですけど、好きではないんじゃないかな。
嫌なことから離れる手段として、その得意なことにすがっているみたいな感じなのかもしれないです。

Q.頭を使う絵とそうでない絵とで向き合い方は違うのでしょうか?

金子さん 
全然違いますね。
後者は向き合ってるわけではないです。
私の線を描くという行為と時間の集積で出来上がっているだけなので、ここに私の思考や感情はないんですよね。

だけどすごい苦しい時に描いているので、(線が)長くなっていけば長くなっていくほど、苦しかったことが客観的に見れるというか、これはあくまでも私が私を助けるためのひとつの手段な気がします。

金子さん
人によっては、瞑想もそうですけど、音楽聴くとか演奏するとか、ダンスとかして嫌なことから逃げるってあると思うんですが、それのひとつで。  
誰かに共有する、発表のために、というよりはその時の自分を救うためにやる。

なので細かい作業に救われていますね。
思考を良くも悪くも巡らせてしまうので、それがネガティブだった時にどんどんしんどくなっていく。
そのスピードを緩めてくれるのがたぶん線を描くとか彫るとか、手を動かす行為なんだろうなと感じます。

あとはやっぱり体を動かすと頭の中で巡っている悪いことも何かのタイミングで「あ、もうどうでもいいや」っていうふうに切り替わったりするじゃないですか。
ずっと何もしないで思考を巡らせているよりは、何かしら体を動かしてる時の方が、いい意味でどうでもいいやの思考になりやすい気がするので。

それでもやっぱりずっと考えがちではありますけど。
そういうのでなんとなく自分を誤魔化して、
大変だね、しんどいね、はいはい(優しく)みたいになだめながら線を引いていっています。


心地よく「表現」と付き合っていく

Q.線を描くとか無心になって何かをすることで自分を癒すのは得意じゃなくて、模索中なのですが、やってみようかなって思ったり、お話をきいて感動しました、、。

金子さん 
”表現というものとどう自分が付き合っていくのが心地いいか”みたいな話って絶対出てくるんですよ。
絵で食べていきたいとか趣味でいいとか、自分の拠りどころとして手を動かしていたいとか。

それは人によって多種多様でいいと思ってるし、そういうものだと思ってます。
絵にとどまらず、表現というものって前提は自由なはずなので。

だけど私もそうだったからすごく分かるんですけど、そういう自分の表現を作品として発表した時、やっぱりそれを観た方、それに触れた方の感想とか評価がついてまわるんですよね。

発表してるからにはしょうがないことなんですけど、その評価はいいものもあれば悪いものもあるじゃないですか。
自分にとって素敵だなって思うものもあるし、自分にとってダメージになるものもあるし、ダメージになったとしても自分を奮い立たせるエンジンになってくれるものもあるかもしれない。

金子さん
私は、人はすごく残酷で、すごく美しいものだと思ってて。

色々な方の声を聞いて時に悲しくなったり、やってちゃダメなんだって気分になったりもしますが、そういうのって表現者に大なり小なりつきまとう感覚だと思うんですよね。

中には強靭なメンタルを持ってる人もいますけど、そんなのはもう一握りだと思うんですよ。
みんなこうなんか苦しくて、なんか逃げたくて。
っていうので表現してる方もいますし、同時に、すごい楽しくて、すごい面白くてそれを表現している。
どっちも行ったり来たりしていると思うし、色んな感情を感じながらアウトプットしていってると思うんですよね。

金子さん
表現の中の業界で言うと、私は今のところアートや絵ですが、やっぱり同じ業界の周りの方の動き方が見えて、比較してしんどくなることがあります。
絵って作風を比較しやすいですし。

だから私は音楽とか、他の表現のジャンルに逃げてます。
自分を癒すことが、描くことやアートに紐づいてなくてもいいと思うんです。
私は生きるうえで音楽にすごく助けられているし、癒されているので。
音楽がないと生きていけません(笑)

私は演奏は全くできないんですけど、推しバンドがいて。
メンバーがそれぞれ色々なジャンルの音楽を聴く人たちで、それをきっかけに私も今まで触れたことのないようなジャンルを聴くようになりました。

そこで思ったのは、音楽ってすごく自由だな、ということ。

線を描くとかそういう作業によって無心になる逃げ道がなかった時は、いつもこの音楽の表現の自由さに癒されていたし、救われていました。
もちろん今もですが(笑)。

あと、そのバンドの方がラジオをやってるんですけど、私はたまにそこにレターを送るんです。
自分は絵を描いていて、なかなかうまく表現と向き合うことができないというのを伝えた時に、                      
「周りのことを気にしなきゃいけない時もあるけれど、でもしんどい時こそそういう周りからの視線を一旦無視して、100%自分がしたい表現をしたらいいんです。それが負のエネルギーであっても陽のエネルギーであっても、一回自分のためだけに作品をつくってみたらいいんです。そしたら、発表する作品にもきっとそれがつながっていきます」
と言ってもらえて。
私はそれが救いになりました。

どの業界でも表現者には生み出すこと、続けることの苦しさはついてまわるし、その苦しみと付き合っていかなければいけない定めがどうしてもあると思うので、
そういう時に、別の世界で表現している方の声や表現に触れると、縛られていた概念や感覚を取っ払ってくれるんですよ。

(机にあった本を手に取り)
最近音楽のアートイベントがあって、音楽家たちの言葉や思考が色々書いてあるんですけど、こういうの読むとめちゃくちゃ救いがあるし、勉強になります。

制作って孤独になりがちなので、自分がいるジャンルや場所に囚われず、色々なところに癒しを求めて、救いを求めて全力で逃げて、また帰ってきたらいいんじゃないかなって思います。


金子明日香さんプロフィール

金子 明日香  Asuka Kaneko
埼玉県生まれ。
2013年、東北芸術工科大学 デザイン工学部
建築・環境デザイン学科 卒業。
卒業後、空間設計・教育・IT業界にて
ディレクターとして勤務し、
2020年よりフリーランスとして活動する。
2022年より作家活動を開始。
「拠りどころ」をテーマに、
風景や文化を分解しながら
自身のフィルターを通して再構築した
作品を制作する。
https://www.instagram.com/kasuka_k/



金子さんは3月31日まで滞在公開制作をされます。
ぜひ芸術村まで足を運んでみてください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?