『実験の民主主義』
第1章のトクヴィルの思想から、K-POPのファンダム・推し活まで縦横無尽に、政治と個人について語り尽くしている。
読んでいると論点がどんどん広がっていき、途中で置いていかれることもしばしば。政治について体系的に学んだことのない自分でも宇野先生の専門性、聞き手の若林さんの違った視点や知識(特にデジタル領域)が混じり合って新しい気づきが得られる点が、堅いイメージのある中公新書では特徴的。その中でも特に印象に残った言葉が「分人民主義」だ。
分人民主主義
政治参加=選挙と思われがち。選挙は数年に1回、しかもわざわざ投票所に行き紙に鉛筆で書いて、人力で開票される。2020年代に入ってもこんなことが普通に行われていること自体がまず異常。
個人=individual(分割不可能)な存在ではなく、様々なイシューに対してdividualな存在なはず。
1人1票持ち、支持する政治家1名、支持する政党に1票投票するのも、果たして機能しているのか。自分が考えていることと、その政治家や政党がどのイシューでもリンクすることがあるわけがない。
経済、社会保障、外交、安全保障、教育など様々なイシューに対してそれぞれ投票できる形がより理想的ではないか。ネット空間で投票を可能にすれば、イシューが増えたところでデリバリーの問題は全くない。国政ですぐに実施することは出来ないから地域自治レベルでこういったことが始まれば良いと思う。