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#オリンピック 16日目 田中碧の「彼らはサッカーを知っているけど、僕らは1対1をし続けている」とDXの話 #TOKYO2020

TOKYO2020サッカー男子3位決定戦、日本代表対メキシコ代表は1-3でメキシコ代表が勝利。日本代表はメダルを獲得することが出来ませんでした。

試合後に田中碧が発したコメントの掲載した記事がとても面白く、様々な人の意見や議論を呼び起こしました。

より詳しく言及されている記事はこちら。

この記事については、楽天大学学長の仲山進也さんがチームビルディングの観点で考察を述べています。

日本のサッカーに必要なのは、チームビルディング。。 「彼らはサッカーを知っているけど、僕らは1対1をし続けている。そこが大きな差なのかな」 ---- 「勝って終わりたかったしメダルを取りたかった。悔しいなという一言と、世界は遠いなと。それ...

Posted by 仲山 進也 on Friday, August 6, 2021

仲山さんはコメント欄にこんなことを書いています。

日本は試合に勝っていくと「非言語」的に1.1なすり合わせが進みますけど、「言語」的なすり合わせはあまりできていない感じがします。だから、負けるとストーミングが全然うまく進まなくなっちゃう。
メキシコが言語的にストーミングをしてるかはわからないですけど、非言語でもすり合わせが大幅に進められるのが「文化」ということなのかもしれないと思ったり。

スペインのサッカークラブで長年働き、現在はJリーグの理事を務める佐伯夕利子さんはこんなことを述べています。

私は「サッカーを知る」とは、他者からインプットされて得る情報や知恵だけではなく、「選手が生きる環境や文脈」、まさに「彼らの日常そのもの」から生まれるものだと考えます。そしてそれを提供するのは、私たち指導者をはじめとするフットボールパーソンの役目だと言えるでしょう。

そしてオシムさんも考察を述べています。

それぞれが自分のためにプレーし、ひとりでトライしようとした。誰もがボールを保持して走るばかりだった。
(中略)
日本もプレーができることは示し、ボールをキープして連携を深めようともしたが、あまりにひとりでプレーしすぎた。あんなふうに個人プレーに走れば、コントロールとキープだけなら容易にできる。その結果、最後にあんな形で負けて何も得られなかった。相手の方が優れていたわけではなかった。ただ彼らはずっとシンプルでよりダイレクトだった。
疲労はあったにせよ、フィジカルは問題なかった。よく走ったしコンビネーションも悪くなかった。そのうえ少なくともトライはした。それがときに見るに値するものを生む。ワンタッチのダイレクトプレーは素晴らしく、そこから仕掛けようとしていた。だがゴール前でアグレッシブではなかった。
もちろんあなた方も勝とうとして試合に臨んだが、何人かの選手は自分ひとりで勝とうとした。それではサッカーはうまくいかない。コレクティブな競技であるからだ。
スペインは常にコレクティブに戦っている。どのスポーツでも、どの試合でもだ。テニスのダブルスでも同じだ。ボクシングでも同じメンタリティで、どんな時も勝利を求める。そういうことこそ学ぶべきだ。常に勝利を求めるべきだが、ひとりで求めるべきではない。サッカーはひとりではプレーできない。どの球技もそうだ、ハンドボールもバレーボールもひとりではできない。誰もがプレーに参加し、勝つために全員で戦う。それこそが最も重要なことだ。

3人のコメントや田中碧の記事を読んで考えたことをツラツラと書いています。

これは戦略や戦術の話ではなく、サッカーというスポーツの原則に基づいて、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにプレーするのか、どういうプレーがしたかったのか、選手同士の考えをすり合わせる技術のことだと思いました。サッカー日本代表は選手・スタッフの目を合わせる作業が上手くいかなかったのではないか。そう思ったのです。

これは想像ですが、代表選手ともあらば選手・スタッフそれぞれに「こうすればよい」という正解があるはずですし、所属チームのサッカーが正解だと思っているかもしれません。別にどれが正解というわけではありませんが、選手が変われば、相手が変われば、やることは変わりますし、そもそもサッカーは正解があるスポーツではありません。

【きょうの考材】なぜ現場とリーダーで意見が分かれるのか #きょうの考材

Posted by 仲山 進也 on Thursday, April 2, 2020

これは仕事でプロジェクトマネジメントやってても感じるのですが、日本人はそもそも「他人と自分とでは意見が違う」ことをすり合わせるのが上手くない気がします。自分で問いを立てて、答えを探すということが上手くないので、コーチのような人に「答えを提示してもらいたい」という要求が強い気がします。

TOKYO2020を観ていて個性やアスリートの力が発揮出来ていたチームは、チームのデザインがしっかりしていると感じました。デザインできているチームとそうでないチームとでは結果の差が残酷なくらい現れたと感じます。特になでしこジャパンの試合を観ていて、監督やスタッフがチームのデザインを描けていないことは試合を観ていて伝わってきました。

本日決勝を戦う女子バスケットボール日本代表は、どちらかというとヘッドコーチの指示通り動くチームに感じますが、ヘッドコーチがチームのデザインをきちんと選手に落とし込んでいます。男子と女子との違いは端的に言うとここにありました。

監督やコーチができることは、チームのデザインだと思います。デザインとはきれいなグラフィックを描くことではありません。デザインとは「設計」です。

いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにプレーするのかを明確にすることです。そのデザインに合わせて選手が正確にプレーできるように細かくすり合わせを行い、選手の個性を活かして問題が解決できるように調整し、相手に応じて戦術を決めます。選手から「戦術がない」とコメントすることがありますが、戦術がないのではなくて、戦術に至る前のデザインであったり共通理解がないだけなのです。

例えば僕の仕事を務めるオウンドメディアの制作であれば、ワークフローが決まっています。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにプレーするかは、共通理解が得られており、共通理解を深めるためのツールもあります。制作過程が分かっているから、いつまでにどこを調整すればよいか、どこをすり合わせすればよいか分かっているので、共通理解も得られやすいのです。

別に仲良しだから共通理解が得られるわけでもありません。お互いをリスペクトし、傷つけたりマウントを取ったりする目的で意見交換するのではなく、プロジェクトをより良くするために意見交換を行う。意見交換を行うベースにはワークフローのような原則になるものが共有されていると、トライアンドエラーを繰り返すほど、チームのレベルは上がっていきます。

サッカー日本代表は、サッカーとはどういうスポーツで、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにプレーするか、共通理解はあるものの、理解を深めていく過程ですり合わせることが上手くできなかったのではないかと感じました。そしてこれは世間で必要だと言われている「DX」を進める上で日本の課題でもあります。

実はスペインの課題は、原則は理解しているものの、何のために実行しているのか理解していないでプレーしている選手がいることだと思います。サッカーは得点を奪って勝つスポーツなのに、最後の最後までシュートを打たない。ペナルティーエリアに入って攻略しようとしない。EURO2020でもTOKYO2020でもみられた「誰も決断しない」サッカーはスペインの課題だと思います。人任せなのです。

スポーツの試合を観ていると、各国や自国が抱えている潜在的な問題が見えてくることがあります。これが僕にとってスポーツを観る楽しみでもあります。



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