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【食|酒】バーの楽しみ方9 カクテルについて

バーを語るにおいてカクテルを避けては通れないのだが、酒類をはじめとした世にある無数の液体の組み合わせと、その由来やエピソードを語りだすと、早くこのシリーズを締めたいというボクの気持ちを萎えさせるほどに終わりが見えない情報量になるので、ここではあくまでバーにおいてのカクテルとの付き合い方に話を絞りたいと思う。

なにせカクテルの王様と称されるマティーニを例に挙げると、名著『The Perfect Martini Book』にはマティーニだけで200以上のレシピが掲載されているほどだからね。

※マティーニ
基本はジンにベルモット(ワインに香草などを漬けたフレーバードワイン)を入れ、オリーブを飾ったもの。


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さて基本的には飲みたいモノを飲めばよいのだが、カクテルの飲み方のちょっとしたルールは覚えよう。

まずカクテルにはショートドリンクとロングドリンクという飲みきる時間の使い分けがある。

ショートドリンクは冷えたドリンクをグラスに注いだ状態で氷を伴わず提供されるもの。

対してロングドリンクは氷と共に供され、冷えた状態が保たれる時間に猶予があるもの。

要するに寿司や天ぷらなんかと一緒で、供されたらダラダラ放置せず、旨いうちに飲みきる、という当たり前の事を氷のある無しで言っているだけである。

ただこれも様々あって、ロングドリンクの代表格とも言うべきジントニックをショートドリンクとして供する店もあるし、逆にキミの好みでショートドリンクを氷入りで作ってもらうことだって可能だ。

通常長くジックリ飲みたければロング。ちょっとした待ち合わせやレストランのウェイティングバーなどではショート。てな具合でシチュエーションで使い分けるのである。


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あともう一つ。
カクテルの多くはベースとなる蒸留酒にフルーツジュースや混成酒などを混ぜてできており、アルコールの辛味が和らぎ大概飲みやすくなっている。

またカクテルはその混ぜ物によって色鮮やかなモノが多く、それがカクテルグラスに注がれて夢のような一杯がキミの前に供されるわけだ。

その映えと飲みやすさが相まって夢見心地でカパカパ杯を空けていると、気付いたら激しい二日酔のなか、見知らぬ人と裸で目覚めるなんて事になるかもしれないし、路地で掃除のオバサンにホウキで起こされるような事態になるかもしれない。

気を付けよう。カクテルは飲みやすくてもベースはアルコール度数が高い場合が多いのだ。

※混成酒(リキュール)
蒸留酒や醸造酒に薬草や花、フルーツなどを漬け込んだモノ。日本だと梅酒やハブ酒なんかがイメージしやすい。
海外では薬として修道院などで製造されたモノが無数にあり歴史を辿るとロマン溢れる。中でもリキュールの女王と称される〈シャルトリューズ〉はエリクサー(不老不死の薬)として製造され、その製法は現在でも秘伝である。残念ながらボクの身体には薬効が合わなかったのか毎年確実に老いてきてしまっている。
また大概のリキュールは素晴らしく良い香りがするので閨房の酒には良いが、多くの場合そのまま飲むと甘過ぎて口が曲がる。

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とはいえ「カクテル」自体に明確な定義があるわけではなく、なにも凶悪に酔わせるアルコール度数の高いものばかりではない。

酒 + 副材料という定義で行くと、ハイボールや水割りだってカクテルとも位置づけられるし、さらに酒を使わずともシンデレラのようなノンアルコールドリンクだって立派なカクテルに分類されている。

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もしもキミが酒の許容量を超えているのに、付き合いでバーに行かなければならないという過酷な状況に陥ったとしたら、バーテンダーにこっそりと「麦茶の水割り」をオーダーすることをオススメする。

そのバーテンダーがよっぽど性格が悪くない限り状況を察して、見事な手捌きで麦茶を水割りに仕上げてくれるハズである。それは見た目だけならウイスキーの水割りであることを誰しも疑いはしないというバー的な風貌であるうえに、麦茶はお腹にやさしいという一品である。

ちなみに酒の弱いボクの友人は、一緒にバーに行くたびこれをオーダーしているのでボクらの中では定番化しているが、毎回目の前で無料の麦茶が700円に化ける瞬間を見せつけられて、なんとなく友人にイラッとしながらも、バーテンダーの技術力に感嘆させられもするのである。

こんなモノだって立派にカクテルと言えるのだ。なんなんだろうカクテルて。

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