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【食|酒】バーの楽しみ方3 好きな酒を飲め

そんなこと言っても、バーを楽しむには実際どうすればいいのさ?なんて本末転倒な疑問が浮かぶイケテないキミ。キミはまずお酒の味を知る必要がある。

バーは基本的に飲酒を目的に赴く店であって、初めからサンドイッチやオムレツを目当てに来店するのは村上春樹の小説だけである。

腹が減ったら軽食くらいオーダーする事はあるけど、キミが求めているのはおそらく、そんな事じゃない。

キミの求めるオーセンティックなバーでは常に、酒vs.己であって、BARメシなんていう小洒落ダイニング的なモノは必要ないし。ましてや情報誌で「絶品!隠れ家BARの裏メニュー」なんてモノが掲載されたりもしない。オマエは隠れてすらいない。


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もう一度言うが、バーはお酒を嗜む場所である。そして世の中には数え切れないほどの酒があり、それらを掛け合わせた無数のカクテルがある。それこそがバーをバーたらしめる、バーでしか味わえないモノである。無限とも言える選択肢のなかから、結局バーで何を選ぶのか? ここがまさにバー入門のスタート地点なのである。嬉しい悩みではあるな。

そしてここは突き放すようで申し訳ないが。勝手に好きなものを飲めばよい、が答えとなる。

別にイキナリ何かで聞きかじった酒の銘柄やカクテルを指定する必要はなく、バーテンダーに「こんな感じの味が飲みたいです」と漠とでも伝えられる自己主張とコミュニケーション能力があればよい。

ただいくら飲みたくてもここは間違っちゃいけない所なんだけど、菊正宗の熱燗は絶対頼んではいけないし、富乃宝山の前割り燗なんていうツウな注文もNGだ。もちろんバーのコンセプト次第だが、オーセンティックなバーでは基本的に洋酒ベースのものを頼もう。

ちなみに日本酒や焼酎ベースのカクテルなんてモノもあることはあるけれど大して旨くはない。(大偏見)


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またあまりにも自己主張が強すぎるあまり「ワタシのイメージのカクテルを」とか言うのも止めた方が良い。

とてもチャレンジングで好感は持てるオーダーではあるが。あまりにもキミに誉めどころがないもんだから〈テキーラサンライズ〉などの南国系カクテルがサーブされたうえで、暑苦しい個性的なブスへの逃げ口上である「情熱的なイメージ」とか言われたら素直に喜べないじゃないか。

またこのような若干タチの悪いオーダーをしてしまえる段階になると、大方の場合キミはかなり酔いが回っていて。神秘的とか可憐とか、ロマンティックとか。バーテンダーの持つボキャブラリーの大概の褒め言葉が封殺される状況になりかねなかったりもする。その時点でキミのイメージはただの酔っぱらいでしかなく、困ったバーテンダーは〈シンデレラ〉でもお出しして、キミにはお引き取り願うしかないのである。

※テキーラサンライズ
大きめのグラスにテキーラとオレンジジュースを混ぜ入れた後、グレナデンシロップを静かに底に静めたカクテル。グレナデンシロップの赤とオレンジジュースの橙で朝焼けを表現したカクテル。

※シンデレラ
オレンジジュース、パイナップルジュース、レモンジュースを混ぜたノンアルコールカクテルの定番。カクテルグラスで供されるため華やかだが結局はジュース。


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ただ、自分の心を解放して好きな味に酔うのはとても素敵なことだし、少々好みと外れても知らない味を探求するのも楽しいモノである。

何より陥ってはイケないのが、一杯の酒に悦びもなく、なんとなく惰性で飲み続けることである。気付くと楽しくもないのに数万円は平気で持っていかれるゾ! すみませんボクの事です。


ボクが思うに。人として最も嘆かわしいのは、自らの持つ可能性から目を背け、蓋を閉じてしまう人達だ。

例えば定食屋に来店したカップルが、入店するなり二人してA定食をオーダーしてしまうような。なぜ他のメニューと照らし合わせもせず、迷わずA定食をオーダーしてしまえるのか?そんな未知への扉へ進み出る勇気も、それに対する期待も、そして個々の持つ多様性も、自らの意志すらも放棄してしまったツマラナイ人達のことだ。

更に言えば、A定とB定をシェアする事で得られる新たな可能性の広がりにすら思いが至らない、互いを高めあう事ができない、パートナーに選ぶにはあまりにも残念なタイプの人達のことだ。


バーでは稀にこんな場合がある。待ち合わせをしていると、遅れてきたヤツが、ボクが舐めている琥珀色の液体がナニモノか確認もせず「同じモノ」なんていうオーダーをしてしまうような。

もしそれが濃い目に煮出した〆の麦茶だったら……そんな可能性があることすら考えつかない想像力の欠如。自分の好むものすら見出だせず、己の主張を放棄する怠慢。


そんな人達を。ボクは嘆かわしく思う。

自分の意思で。好きな酒を飲め。

たぶんつづく

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