計画通らない(映画「ノイズ」を観て)
映画「ノイズ」を見ました。
2022年、監督 廣木隆一、脚本 片岡翔、撮影 鍋島淳裕。
出演 藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介、黒木華、永瀬正敏、渡辺大和、余貴美子、柄本明、渡辺大和ほか。有名どころがいっぱいですね…
※大雑把ですが以下の文章中に物語の展開に触れますので(ネタバレあり)、ご注意ください。
あらすじ
世界中を巻き込んだ新世界の神・キラ=夜神月と伝説の名探偵•Lの死闘から〇〇年…宿敵だった二人は世界線を超え時を超え、愛知県・知多半島沖の離島に生まれた幼馴染として転生していました(嘘)。
…愛知県知多半島沖の離島・猪狩島。
他の離島の例に漏れず、過疎化に苦しんでいた猪狩島でしたが、近年、島内で栽培される黒イチジクが話題を呼び、島興しが成功しつつありました。
その立役者が、島の栽培農家・泉圭太(藤原竜也)。圭太は同郷の幼馴染・加奈(黒木華)と家庭を築き、同じく幼馴染で本業は猟師の田辺純(松山ケンイチ)と共に、自分たちが育った島に恩返しをしたいという思いで、黒イチジク栽培に励んでいました。
国からの地方創生交付金5億円の交付も内定し、順風満帆に思えた彼らと島の未来の前に、突如暗雲が立ち込めます…。
凶悪犯罪の前科を持ち、出所したばかりの男・小御坂(渡辺大和)が島に現れ、圭太・純、そして彼らの幼馴染の警官・守屋(神木隆之介)らとあるトラブルを起こし、「不幸な事故」が起こり小御坂は死亡してしまいます。
半ば事故であったとはいえ、島の主産業となりうる黒イチジク畑で人死が出る…場合によっては殺人事件に発展し得る…それは島興しの終わりを意味すると考えた三人は、事件と死体を隠すことを決意します。
しかしそれが、予想外の事態を呼び込むことになっていくのでした…。
コピーが「殺した。埋めた。バレたら終わり」なのですが、凄い、たった一言(三言)でこの物語の本筋を表現しているじゃないですか…。
計画通り!には行かないこんな世の中
「殺した。埋めた。バレたら終わり」なので、そうならないようにするために右往左往粉骨砕身猪突猛進する主人公たちの様が、映画の大きな見どころかと思います。
主人公たちの視点から、「なんでこんなことになってんの?よりによってこのタイミングで?ネタか?待って来ないでうわああああああ」という具合に、犯人たちの立場から描いたサスペンスを堪能することができました。
(永瀬正敏演じる刑事・畠山の、威圧感たっぷりに「もう筋は読めてるんで後は裏付けだけだな」と言わんばかりに主人公たちを追い詰めていく様も印象強いです)
タイミングの悪さ…どうして、なぜこんなことが、という時に限ってそれは起こるのか。
それとも、起こる状態になっていたから起こったのか。
判別することが難しいこともありますが、この映画については、前者の「なぜこんなことがという時に限って」の類かと思います。
出来事だけではなく、ちょっとした言葉が、あるタイミングで発せられたことにより、心や行動を縛ってしまったりする…
この辺りを考えていくと、職場でやらかした時に強要される必要となる何故なぜ分析を思い出させられるので、考えることをやめようと思います。全部チェックシートでいいんじゃないですか。3人体制チェックで。(ダメです。仕組みで潰そう)
…このような、エンターテインメントとしての面白さ、スリルがあるのですが、観ていくうちに、この作品のいくつかの主要なテーマが感じられるようになりました。
嘘と隠蔽
「殺した。埋めた。バレたら終わり」なので、そうならないよう、事実を隠す必要があります。隠すためには、嘘もつかなければならない。
物語の本筋としてまず目に入ってくるのは死体・事件の隠蔽のための嘘ですが、やがて、もう一つの大きな嘘……隠し…が見えてきます。
嘘をつくことに苦しむ警官・守屋とは対照的だったかもしれません。
嘘をつくこと、隠すことへの後ろめたさや苦しさを感じるかどうかの線引きは、人それぞれなのでしょうが…。
望遠、引きの画で撮っているのにその人物の姿は入っていない。どんな表情で観ていたのかわからない。ある意味、わかりやすい描き方だったのかもしれません。
ただ、劇中の登場人物たちの会話を聞いていると、どうも「わかっていたけど向き合っていなかった(先送りにしていた?)」っぽいですね…。
わからないではないです。面倒くさいですしね…。でも先送りにしたり隠したりすると、概ね後でもっと面倒なことになるんですよね…。やらかしたらなるべく早く謝る。先送りにせずさっさと片付ける。結局それが一番ダメージを少なくするように思えます。ああ耳が痛い。ごめんなさい。
螺旋状に繰り返すノイズ
劇中、町長が小御坂を指して「ノイズ」と言っていましたが、それだけではない、テーマとしての「ノイズ」があるのかなと思いました。
人は常に本音や真実を述べているわけではなく、何気ない会話や、適当な会話、嘘…人とのコミュニケーションにはノイズが入っているかもしれません…。
混入したノイズを除去しようとして、他のノイズも取り除くことになってしまった。そして、ノイズを除去した本当の音、本音が明らかになってしまった…。
ノイズは除去できても、除去できないものがある。今回の事件が偶々機会を作ってしまいましたが、そんな機会がなくても、いずれ島の中の、主人公たちの本音はどこかで吹き出していたのかもしれません…。
原作漫画は世界線が異なっているらしいので、原作漫画の方も読んでみたいと思います。
藤原△
本編とは直接関係ないのですが…。
この映画が公開される時に、宣伝で藤原竜也と松山ケンイチがテレビに出演しており、撮影中のエピソードを語っていました。
小御坂が死んでしまうシーンのリハーサルをしていた時、小御坂を演じる渡辺大和が死体として地面に寝転がっていたのですが、それを見た藤原竜也が、「何で死体なのに息してんだよ」と(本人はネタのつもりでしたが)真面目な顔で言ったそうです。
現場はシーンと静まりかえり…次のリハーサルでは、ヤバイと思った渡辺大和が息を止めて改めて死体として臨み、呼吸が苦しくなっても息を止め続けてガクガクと震えだしてしまったという…
そんな話を、笑いながらしていました。怖ええええ(終わり)
島にSKYSEA導入しておけば良かったんでしょうか
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