物忘れ日記 ときどき猫とか本とか映画とか:Vol. 18 みんなの寅さん

はじめにお断りいたします。今回のタイトルの「みんなの寅さん」は、尊敬する映画評論家、映画史研究家の佐藤忠男先生のご著書『みんなの寅さん』から拝借しました。なぜなら、先日、あるイベントに参加して「みんなの寅さん」の存在を改めて実感したからです。


よっ、みんな元気か?

寅さんとは、もちろん、映画『男はつらいよ』の車寅次郎さんのこと。今年は、『男はつらいよ』が製作されて55周年ということで、こんなイベントに行ってきました。


まず、オープニングでおなじみの松竹映画の富士山が映り、続いて『男はつらいよ』の代表作のタイトルがテーマ曲とともに流れます。もう、それだけで涙腺崩壊です。そして、映画第1作の寅さんとさくらさんが再会するシーン。

さくら 「おにいちゃんなの?」
寅さん 「そうよ。おにいちゃんよ」

寅さんの声と笑顔で、一気に映画の世界へ引き込まれます。

とはいえ、正直な話、リアルタイムでは『男はつらいよ』には、あまり興味がありませんでした。当時、『男はつらいよ』は、「ドル箱映画」今でいう「キラーコンテンツ」としてお盆と正月の年2回公開されていました。あるとき知り合いが、「盆と正月に『男はつらいよ』を見るのは、実家に帰って、親兄弟や親戚に会うようなもんだ」と言ったのが、この作品に興味を持つきっかけだったように思います。別の友人も「お盆とお正月には、家族そろって『男はつらいよ』を映画館で観るのが恒例行事」と言っていました。そんな感じで寅さんファンは増えていったのでしょう。

寅さんにまつわる浪曲、落語を聞きながら、昔は興味がなかった『男はつらいよ』や寅さんに心惹かれるんだろうと不思議に思いました。50周年記念として製作された『お帰り寅さん』を観たときも、オープニングだけで苦しくなるくらい涙してしまったのです。

加齢で涙もろくなっているといわれればそれまでですが(それを言っちゃあおしめーよ)、『男はつらいよ』の世界に昭和が詰まっているからかもしれません。


歴代マドンナのみなさま

初めはテレビシリーズとして放映された『男はつらいよ』。映画化にあたり、会社からは猛反対を受けたそうです。イベントの最後に山田監督は「55年たっても、みなさんからこんなに愛される寅さん。『男はつらいよ』をつくって本当によかったです」とおっしゃいました。ひとりの俳優が演じ続けた役で、こんなに長く多くの人に愛された主人公がいるでしょうか。

当日の会場は満席でした。子供から大人まで幅広い年齢層でした。そして、老若男女がそろって『男はつらいよ』の世界に浸ったひとときに「みんなの寅さん」を実感したのでした。


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